生命保険の保険期間は数十年にわたるため、その間には家計の状況も変化するのが普通です。契約当初は、保険料の支払は何の問題もなくても、長い保険期間のあいだには、保険料の支払が困難になることも考えられます。
そのような時に、どのように対処すれば良いのか、具体的に対処法をご紹介したいと思います。
保険料を借りる
保険は継続したいが、一時的に家計が苦しく保険料の支払が困難な場合など、加入している保険の解約返戻金の範囲で、お金を借り入れることができます。
契約者貸付
契約者貸付とは、終身保険など解約返戻金がある保険に加入している場合、解約返戻金の8割~9割(保険会社によって異なります)までの範囲でお金を借り入れられる制度です。借りるお金の使途は自由ですから、そのお金で保険料を支払うことができます。
お金を借り入れている間は、保険会社で定めた金利がつきます。現在およそ3~5%程度ですから、キャッシングなどから比べれば、圧倒的に低い利率です。
返済については、特に決まりはなく、好きなタイミングで返済することができますし、返済せずに、保険金と相殺することもできます。
ただし、注意が必要なのは、借入金額と金利の合計額が、解約返戻金の限度額(保険会社によって異なりますが8~9割の場合が多いです)を超えた場合、保険契約が失効してしまうことです。
限度額いっぱいで借り入れた場合は、必ず最低でも金利分は返済することを忘れないようにしましょう。
自動振替貸付
保険料の支払は、銀行引き落としが一般的ですが、銀行から保険料の引き落としができなかった場合でも、すぐに保険契約が失効するわけではありません。
保険料支払日が毎月30日だとすると、翌月の30日までは「保険料払込猶予期間」といって支払いが猶予されます。
それでも支払いがない場合は保険契約は失効しますが、その際に保険会社が自動的に保険料を立て替えて失効を防ぐのが「自動振替貸付」制度です。事前に申し出がない限り、終身保険や養老保険などの解約返戻金のある保険に自動的に適用されます。
自動振替貸付は契約者貸付の一種ですから、金利がつくこと、返済については特にきまりがないこと、解約返戻金の限度額を超えると保険契約が失効することは、契約者貸付と同じです。
契約者貸付も自動振替貸付も、解約返戻金が貯まっていなければ、お金を借り入れることはできません。支払っている保険料の金額にもよりますが、加入してから3年や5年といった程度では、あまり解約返戻金は貯まっていないので、貸付を受けられないことが多いです。
また、契約者貸付や自動振替貸付は大変便利な制度ですが、一般的な借入金と違い金利が安く返済も迫られないため、ルーズになりやすく、つい多く借り過ぎたり、そのうち金利の支払いも面倒になってきたりして、保険契約の失効につながるケースも多いので、十分な自己管理が必要です。
保険料を減らす
ここまではお金を借り入れて保険料を支払うことについて解説してきましたが、ここからは、現在支払っている保険料の額を減らす方法についてご紹介していきます。
減額
保険金額を減らすことで、保険料を減らす方法です。
たとえば、かんぽ生命の終身保険「新ながいきくん」1000万円(60歳払い済み)に30歳時に加入していた場合、月々の保険料は28,400円ですが、保険金額1000万円をたとえば600万円に減らすと、保険料も17,040円(=28,400円x600万円/1000万円)になります。
ただし、保険会社によって、最低保険金額や最低保険料を設定している場合があるので、それ以下に減らすことはできません。
減額の手続きが完了すると、次回の保険料支払から減額された保険料となります。
また解約返戻金がある場合は、減額した分の解約返戻金も支払われます。
もし、上記の「新ながいきくん」で、減額時に200万円の解約返戻金が貯まっていた場合、80万円(=200万円x(1,000万円-600万円)/1,000万円)の解約返戻金が支払われ、保険で貯まっている解約返戻金は120万円となります。
減額という方法をとる場合は、いくらなら保険料が払えるのかということと、最低限残しておきたい保険金額はいくらなのかということのバランスを考える必要があります。
特約の解約
たとえば、月払保険料27,300円の保険で
- 終身保険500万円(月払保険料14,200円)
- 定期保険特約500万円(月払保険料3,700円)
- 災害特約1,000万円(月払保険料800円)
- 入院特約日額1万5,000円(月払保険料8,600円)
という保険契約の場合、終身保険500万円だけ残して、特約を解約すれば、保険料を14,200円まで下げることができます。
入院特約がゼロになるのは困るということであれば、あらたにネット通販の安い医療保険に加入するのもひとつの方法です。
たとえば、ライフネット生命の終身医療保険日額5,000円であれば、35歳加入で、月払保険料は1,710円で加入することができます。
保険料が安い通販の保険に変更
特約の解約のように一部を解約するのではなく、全てを解約して、あらたに保険料が安い通販の保険に変更する方法です。
たとえば、前述のかんぽ生命の終身保険「新ながいきくん」の例では、死亡保障1,000万円で月払保険料は28,400円ですが、これを保険料が安い定期保険に加入し直すと、加入年齢が35歳男性、保険金額1,000万円、保険期間10年の場合
- ライフネット生命定期死亡保険「かぞくへの保険」 月払保険料1,631円
- オリックス生命定期保険「ブリッジ」月払保険料1,697円
- メットライフ生命「スーパー割引定期保険」月払保険料1,330円(非喫煙優良体)
で加入することができます。
当座は、このように保険料の安い定期保険で凌いでおいて、経済的に余裕ができてきた時点で、保険を見直すという方法をとることが可能です。
注意が必要なのは、必ず新規保険に加入してから、現在加入の保険を解約することです。
先に現在加入の保険を解約して、もし健康上の理由等で新規保険に加入できない場合、補償がゼロになってしまうからです。
保険料をゼロにする
保険料を1円も払いたくない・払えないという場合の対処法です。
解約
解約をしてしまえば、それ以降保険料を支払う必要はありません。また、終身保険など貯蓄性のある保険で、加入後数年以上経過している場合は、解約返戻金も戻ってきます。
ただし、それまで支払った保険料の総額が戻ってくる、すなわち返戻率が100%になるのは、10年払い済みなどの短期払いでも10数年かかりますから、基本的には払ったお金以上に解約返戻金が戻ってこないと考えておいた方が無難です。
払い済み保険
保険料の支払はストップして、保険金額は下がるものの、保険期間が満了するまで(終身保険の場合は一生涯)保険が継続するという方法です。
たとえば、30歳で終身保険1000万円に加入して、40歳のときに払い済み保険に変更した場合、40歳以降は保険料の支払いは一切なくなり、死亡保障は350万円(あくまで例です*)に下がるものの一生涯保障が継続します。
(*)払い済み保険に変更した場合の保険金額については、自分では計算できませんから、保険会社に確認する必要があります。
注意点を挙げるとすれば、解約返戻金がない・解約返戻金の金額が小さい場合は、払い済み保険に変更することができないということです。
まとめ
保険料の支払いが困難になった場合には、保険料を借りる・保険料を減らす・保険料をゼロにするという3つの対処法があります。
保険料を借りる方法としては、契約者貸付・自動振替貸付という方法があります。
どちらも、解約返戻金の範囲内で、保険会社から低利でお金を借りてそれを保険料に充当するという方法になります。
保険料を減らす方法としては、減額・特約の解約・保険料の安い通販の保険に変更という方法があります。
減額は保険金額を減らすことで保険料を減らす方法、特約の解約は、特約部分の保険料を削減する方法、保険料の安い通販の保険に変更というのは、今加入している保険を解約して、保険料が安い保険種類である定期保険を保険料が安い通販の保険会社から加入するという方法です。
保険料をゼロにする方法としては、解約と払い済み保険への変更という2つの方法があります。
解約すれば、それ以降保険料を支払う必要はなくなりますが、同時に保障もゼロになります。いっぽう、払い済み保険に変更した場合は、保障を継続しつつ、保険料の支払をストップすることができます。
現状に照らし合わせて、自分に合った方法を選んでください。