持病があっても入れる保険のデメリットとは?

テレビの保険CMなどで「既往症があっても入れます」「入院歴があっても加入できます」というフレーズを耳にしたことはありませんか。

保険は健康な人しか加入できなかった時代から、病気の人でも加入できる時代になりました。

しかし、本当に病気でも加入できる保険はおトクなのでしょうか。病気でも加入できる保険のしくみや特徴を徹底解説します。

病気の人が加入できる保険の選択肢

現在病気だったり、既往症があったりする場合、健康な人と同じ条件で生命保険に加入することはできません。

それでも生命保険に加入したい場合は、以下の選択肢から選ぶことになります。

1. 特別条件を了承する

特別条件というのは、保険契約に死亡保険金の削減や特別保険料の支払という条件をつけることを意味します。

たとえば、2000万円の終身保険に加入するケースで、健康状態に問題があった場合、契約後3年間は死亡保険金が1000万円に削減されるといった条件がついたりしますが、これが特別条件に該当します。

また、保険金削減ではなく、保険料に条件がつくこともあります。

たとえば、通常であれば月払保険料が20,000円で済むところ、健康状態の問題で特別保険料3,000円が加算されるといった内容の条件です。

通常に比べて条件が悪いため、特別条件が付いた場合、なかなか了承したくない方もいますが、逆に、運が悪ければ保険の加入自体を断られたところ、特別条件がつくだけで加入できるのは運が良かったと考えることもできます。

2. 引受基準緩和型・限定告知型保険への加入を検討する

引受基準緩和型や限定告知型の保険とは、保険会社が保険契約を引き受ける基準を緩くしたタイプの生命保険です。

一般に、医療保険の告知は以下のような項目について行います、
・最近3か月以内の医師の診察・検査・治療・投薬
・過去5年以内の病気やケガによる7日以上の入院・手術
・過去2年以内の健康診断・人間ドックにおける異常の指摘
・視力・聴力・言語、そしゃく機能・手足指の欠損・機能障害、背骨の変形

これに対し、引受基準緩和型の医療保険の告知は、
・最近3か月以内の、医師による入院・手術・検査の勧告
・最近3か月以内の、がんまたは上皮内新生物・慢性肝炎・肝硬変での、医師の診察・検査・治療・投薬
・過去2年以内の、病気やケガによる入院・手術
・過去5年以内の、がんまたは上皮内新生物による入院・手術

となっていて、一般の医療保険の告知項目と比べて、大幅に緩和されているのがおわかりいただけると思います。

引受基準緩和型・限定告知型保険のデメリット

持病があっても加入しやすいのが、引受基準緩和型・限定告知型保険の大きなメリットですが、一方でデメリットもあります。

・保険金・給付金の支払が制限される
加入後1年間は、保険金や給付金の金額が本来の半額に制限されます。

・保険料が高い
同じ保険会社、同じ内容の保険と比較して、保険料が高く設定されています。

たとえば、オリックス生命は、医療保険「新キュア」と引受基準緩和型医療保険「新キュアサポート」を取り扱っています。

たとえば、
30歳男性
入院日額5,000円
先進医療特約2,000万円
払込期間:終身

という条件で比較した場合、月払保険料は、
「新キュア」が1,582円、「新キュアサポート」が2,860円と、「新キュアサポート」が約1.8倍高く設定されています。

3. 無告知型・無選択型保険への加入を検討する

「無審査・無告知」で加入できる保険です。
現在の健康状態について一切告知をする必要がないため、ほぼほとんどの人が加入できるのが最大のメリットです。

いっぽう、無選択型保険のデメリットは3つあります。

・保険料が割高である
払い込む保険料のほうが、受け取れる保険金や給付金を上回る場合すらあります。たとえば、損保ジャパンひまわり生命の無選択型終身保険「新・誰でも終身」を例にとって見てみましょう。

加入条件を、45歳男性、死亡保険金500万円、保険料払込期間:終身とした場合、月払保険料は17,735円になります。この保険を24年間69歳まで継続した場合、払い込む保険料の総額は5,107,680円となり、死亡保険金の500万円を上回ってしまいます。つまり、お金のことだけで言えば、69歳までに死亡しないと損だということになります。

・既往症の再発または悪化による入院や手術は保障の対象外になる
たとえば医療保険に加入する前から高血圧で薬を服用していて、契約後にその高血圧が原因で心疾患となり入院した場合、入院給付金は支払われません。

ただし、入院開始日が契約日から起算して2年を経過していれば、支払い対象となります。

・保険金や給付金の上限が低く設定されている
保険会社にとっては、死亡保険金や給付金を支払う可能性が、普通の保険に比べて高いため、死亡保険金は数百万円程度、入院給付金は5000円程度と上限が低く設定されています。

加入を検討する順番は大事

既往症があったり、健康に不安があったりする方が、保険の加入を検討する場合、いきなり引受基準緩和型や無選択型を選ぶことは避けましょう。

一般の保険、特別条件が付いた一般の保険、引受基準緩和型保険、無選択型の順で、条件が悪くなるのがその理由です。

保険料ひとつとっても、一般の保険が一番安く、その次に特別条件付き、それよりも引受基準緩和型保険が高く、もっとも高いのが無選択型となっています。

無選択は相続で威力を発揮

前述のとおり、無選択型保険は、払込保険料総額が死亡保険金額を上回ることもあり、加入する価値を疑う人もいます。

確かにそのとおりなのですが、無選択型保険に加入するのが一番良い方法だという、無選択型保険がもっとも威力を発揮するシーンがあります。それが相続対策です。

一般に、相続対策を考え始める時期は、親の年齢も60歳、70歳を越えていて、健康状態の問題で、普通には生命保険に加入することができない人もたくさんいます。

せっかく生命保険で相続対策が可能であっても、現実的にはそれを実行できないケースも少なくないわけです。

具体的には、一時払い終身保険の無選択型が、相続税の節税対策でその威力を発揮します。

相続税を計算する場合、まず相続財産の課税評価額を算出するのですが、現預金はそのままの金額が課税評価額となります。たとえば、1000万円の現預金なら、相続税の課税評価額も1000万円です。

しかしここで、その1000万円を一時払保険料として終身保険に加入したとしたらどうでしょうか?

契約者と被保険者が被相続人である父親、死亡保険金受取人を子供として契約して、父親が死亡し相続が発生した場合、保険会社から子供に対し死亡保険金が支払われます。

そして、その死亡保険金には、(500万円x法定相続人の数)という相続税の非課税枠が設定されています。

もし、死亡保険金が1000万円で、法定相続人の数が2人の場合は、実質的にはその死亡保険金に税金はかからないことになります。

つまり、相続税を考えた場合、現預金で置いておくくらいなら、保険のかたちにしておいたほうが節税できるということになります。

父親が健康上に問題があっても、無選択型であれば、この方法が使えるということです。

まとめ

健康上問題のある人が保険に加入する場合、選択肢としては

  1. 特別条件の承諾
  2. 引受基準緩和型保険への加入
  3. 無選択型保険への加入

の3つが選択肢となります。

特別条件には、死亡保険金の支払金額について条件が付く場合と、特別保険料がかかる場合の2種類があります。特別条件を承諾すれば、保険に加入することができます。

引受基準緩和型保険は、一般の保険よりも告知項目が大幅に緩和されているタイプの保険です。

無選択型保険は、告知が不要で、基本的に無条件で加入できるタイプの保険です。

特別条件⇒引受基準緩和型保険⇒無選択型保険の順で、加入条件が悪くなるため、まずは一般の保険に申し込み特別条件がついたらそれを承諾、加入できなかった場合は引受基準緩和型保険に申し込み、それも不可だった場合、最後に無選択型保険に申込むという順番を踏むことをお勧めします。

無選択型保険は、一般に被保険者の年齢が高くなる相続対策で威力を発揮します。相続税がまともにかかる現預金を一時払いの保険料として終身保険(無選択型)に加入すれば、相続税の非課税枠を活用できるという方法です。

健康上に不安があって保険の加入を検討する場合は、ぜひ各タイプの見積りをとって、十分に比較検討をすることをお勧めします。

           

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