生命保険医学について【将来の健康状態も含めて判断】

生命保険に加入する際にたいへん重要な概念となるのが健康に関する告知でありその基礎となるのが生命保険医学という学問です。

 生命保険運営のリスク:不当に利益を得ようとする心理

生命保険とは元来健康体の被保険者の死亡率を元に保険料等が計算されているため、公平性の原則及び相互扶助の精神に基づき健全な保険業運営のためにはモラルハザード等のリスクを排除し、あくまで正しい告知にもとづいた保険加入による被保険者集団を維持しなくてはなりません。

そもそも生命保険業の健全な運営にとって妨げとなるリスクが大きく分けて2つあります。実体的リスクと道徳的リスクの2つです。実体的リスクとは被保険者の健康状態におけるリスクを身体的リスクといい、被保険者の職業などにおけるリスクを環境的リスクといいます。

それに対し道徳的リスクとは保険を不当に利用して利益を得ようとする心理などのことです。この道徳的リスクにはこれといった排除方法はなく、申込時に加入経路や被保険者の職業や言動、住環境などから総合的に判断するしかありません。しかし前者の実体的リスクは正しい告知によってリスクを排除することができます。

 生命保険医学とは:現在の健康状態より、先の将来の健康状態まで見通す

特に身体的リスクの排除には告知は不可欠であり、その告知において重要になる概念がこの生命保険医学なのです。ではそもそも生命保険医学とはどんなものなのでしょうか。

一般的に我々が認識している医学というものはどちらかというと臨床医学の方であると思います。臨床医学とは実地に患者の治療を目的とする医学のことで、目の前にある患者の症状というリスクについて取るべき適切な治療・措置を行うための医学のことを指します。
それに対して生命保険医学とは今現在におけるリスクというよりも、もっと先の将来における長期的な患者の生命予後に関する生死や症状のリスクを問題とする医学のことを指します。

 高血圧の場合:動脈硬化、脳卒中などのリスクが予測される

つまり臨床医学は今どれほど生死のリスクがあるかを問題としているため短いスパンで今すぐ治療が必要かどうかを判断しますが、生命保険医学においては今この時は一見健康そうに見えても、長いスパンで見たときに後に危険測定上リスクとなるかどうかが問題であり、根本的に異なる分野なのです。

医師がある疾病と症状について問題ないと臨床医学的に判断しても、生命保険医学的には別問題です。その典型的な疾病の例が高血圧です。高血圧とはどういった疾病かというと、血管内部の血圧が高く血管に負担がかかっている状態のことをいいます。

圧がかかっているので、今すぐには症状は顕在化しなくても長期間その状態が続くと血管が疲労し損傷しやすくなったり硬くなったりしてしまい、動脈硬化や脳卒中、心筋梗塞の原因となってしまう恐ろしい病気なのです。つまり数十年後にリスクが顕在化する可能性があるという意味では最も生命保険医学が問題とする疾病の一つです。

生活習慣による自覚症状のない疾病:生命保険医学ではリスクになる

もちろん高血圧だからといってすぐに生命保険の加入が出来ないわけではありません。血圧の数値や治療の有無、治療期間や投薬の有無等で総合的に判断し、無条件で加入できるケースもありますし、場合によっては条件付き、最悪のケースでは保険に加入出来ないといった判断がなされます。

高血圧には2種類あり、別の疾病が原因で引き起こされる二次的高血圧と原因不明の本態性高血圧とがあります。二次的高血圧はもとの疾病が感知すれば同時に高血圧も解消されるので保険医学的には問題にされませんが、問題となるのは原因がわからない本態性高血圧の方です。

一般的には遺伝によるものが強いと言われていますが、原因が皆無なわけではなく、ストレスや肥満、塩分の摂り過ぎなど現代人が陥りやすい偏った生活習慣から引き起こされるものと考えられています。そういった意味では生活習慣に起因する自覚症状のない疾病も生命保険医学上リスクとなることが多いです。(参考:BMIと生命保険【持病と同じ、BMIによる肥満度も審査基準】)

以上のようにこの生命保険医学の目的としているところは結局、健康体による被保険者集団の形成にあり、保険は若く健康なうちに加入をし、正しい告知を心がけるということを期待している学問でもあると思います。

           

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