医療技術の進歩に伴い、以前は治らなかった病気も治るようになるケースも増えています。
一方、公的保険制度がその技術の進歩に追いついていかず、未だに保険適用外となっているため、治療費が高額になり治療を断念せざるを得ないケースも散見されます。
そういった状況に対応しようと生まれたのが「先進医療保険(特約)」です。どれほど役に立つ保険なのか、わかりやすく解説します。
先進医療とは 公的医療保険の対象とならないもの
先進医療とは、特定の大学病院・研究所などで新しく研究・開発された治療法や手術のことを言います。
従って、先進医療の治療は大学病院など特定の病院に限られていて、日本全国に広く普及している医療技術ではありません。このため、公的医療保険の対象とはなっておらず、先進医療の技術料は全額自己負担となります。
先進医療の種類
平成30年1月1日現在で101種類が、先進医療と認定されています
例を挙げると
- 多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術
- 陽子線治療
- 重粒子線治療
といった治療が、先進医療に該当します。これらは、実際に治療実績が多かった1位~3位の治療でもあります。
先進医療の費用 50万~300万円にも
先進医療の費用はピンキリですが、例えば上で挙げた水晶体再建術は約50万円、陽子線治療は約270万円、重粒子線治療は約300万円となっています。
医療費には高額療養費制度という制度があり、公的医療保険のひと月当たりの自己負担額(病院や薬局に自分が支払ったお金)が57,600円(所得によって異なります)を超えた場合、超過分のお金が戻ってきます。しかし、これはあくまで公的医療保険の対象となる治療や手術に限られており、先進医療でかかった費用は対象外で戻ってきません。
先進医療保険のニーズ
先進医療は、がんなど命にかかわる病気の治療にかなり効果的であることから、実際にそのような病気に罹患した場合に、多くの人が治療を希望しますが、先進医療に要する費用を聞いて断念する人も少なくありません。保険会社の医療保険に加入していても、その給付金では対応できないほど高額なためです。「お金で救える命」という言葉が良く聞かれるのも、先進医療の世界です。
先進医療特約とは
そこで誕生したのが、先進医療特約です。保障内容は、先進医療を受けた場合、先進医療にかかる技術料で自己負担した金額(通算2000万円まで)が支払われます。保険料は月額約100円です。
先進医療特約の必要性
保険料を考えた場合、かりに50年間加入したとしても約6万円で済みます。6万円払えば、50年間先進医療に関しては心配がいらなくなることを考えれば、それほど高いものではないと思います。
いっぽう、先進医療を受ける可能性を考えた場合、果たして本当にこの特約が必要なのか疑問だという声もあります。というのも、たとえばがんの治療で重粒子治療や陽子線治療を受けた人の割合は、わずか0.5%程度にすぎません。
先進医療を受けた時の経済的リスクを重視するか、先進医療を受ける確率を重視するかによって、先進医療特約の加入判断は分かれると思います。
まとめ
先進医療は、その対象となる病気に罹患した場合、基本的に誰もが希望する医療技術です。しかし、公的医療保険の対象になっていないこともあり、先進医療を受ける場合の患者の大きな自己負担額が大きなネックになっています。
先進医療特約は「受ければ治る確率が高い治療を、お金が原因で受けられない」ことをなくすために生まれました。しかもこの特約の保険料は月額で100円程度です。万が一の場合の安心のために先進医療特約に加入しておくのは、悪くない選択だと思います。
いっぽう、先進医療を受ける確率自体は、著しく低いため、先進医療特約の保険料が「死に金」になる可能性が高いことも確かです。加入する・しないのどちらが正解というわけではなく、リスクをどこまで考えるかに尽きると思います。