帝王切開手術時の助産師、看護師の役割について

前回「助産師の帝王切開の業務、実務について」に引き続き、今回も帝王切開についてです。

 

産婦人科独特のオペといえば帝王切開ですね。出産の方法は経膣分娩と腹部帝王切開術のどちらかとなります。帝王切開で出産するお母さんさんは近年増加傾向で4〜5人に1人はと言われており特別なものでは無くなってきました。

 

帝王切開は予定で組まれているものと、緊急で決まる手術があります。帝王切開術をするのは医師なのに助産師は何をするの?という疑問を問いかけられた事もあるので、どのような役割をしているのかお話していきましょう。

 

手術までのか関わりは大切

先程お話したように手術をするということに大きな不安がある方が多くいらっしゃいます。外来では医師が忙しく聞きたいことも聞けずに入院まで来てしまった方も。そのような不安を出来るだけ軽減できるようにお話をしながら関わりましょう。

 

まず手術の準備があるため前日の午後に入院となります。手術に本人と配偶者がきちんと納得できているか同意書の書類を預り、そこで不安や質問が多い場合には主治医に訪室してもらう手配をするのも助産師の仕事です。

 

手術前後の日程や自分の身体はどう動けるようになるのかなどが大きな不安の要因となりますので、それを解決するために帝王切開術オリエンテーションを一人一人に行います。内容はパス化されていて食事、飲水、点滴の開始時間や手術前の排便コントロール、育児のスケジュールなど日常生活動作の事がほとんどです。

 

いつから起き上がり普通に動けるようになるのかなどお伝えすることで自分でイメージが付くようになりますね。

 

帝王切開術の看護

私たち助産師は産婦さんと一緒に手術室に入室します。オペ室ナースに産婦さんの申し送りを済ませて赤ちゃんを取り上げる準備を始めます。

 

産婦さんは手術台へ上がり麻酔をかけるので、その時は麻酔体位を取る手伝いをしたり、苦しくないかなど声をかけて側にいれるよう配慮が必要です。手術室は知っているスタッフもいなく、手術への極度に緊張が高まる場ですので出来るだけ側から離れず声かけをしていきましょう。

 

麻酔が入ったら最後に赤ちゃんが元気か心拍の確認をしたら助産師も赤ちゃんを取り上げる準備に入ります。帝王切開術は医師が行いますが、赤ちゃんの臍帯を切除してから病棟に連れ帰るまでは助産師の仕事です。

 

産まれた赤ちゃんを冷やさないようにインファントウォーマーという台を使用して吸引や酸素の準備、点検をし赤ちゃんを迎える準備を整え待機します。

 

赤ちゃんが生まれたら助産師は執刀医師から赤ちゃんを受け取り、保温に気を付けながら全身の観察を行います。全身状態が良ければお母さんの元へ連れていき母子の対面を行い、バースプランに写真を撮りたい等の希望があれば撮影し病棟へ戻ります。

 

病棟で赤ちゃんの観察を行っている間に産婦さんは閉服しその後帰室、術後の観察をする事も助産師として大事な仕事です。

 

精神的ケア

帝王切開するということは身体だけでなく精神的な負担も大きくかかります。世間から見ると帝王切開はすぐに生まれるから簡単で負担も少ないという様なイメージがあったり、「女性=下から産む事」とう思いがあり女性として当たり前に出来るであろうと思っている事が普通に出来なかったという思いもあるそうです。

 

産婦さんが帝王切開をしたことを後悔してしまうのは周りの何気ない一言が原因の一つなのかもしれません。

 

また身体に傷を付けてしまったと悩むお母さんもいます。一度帝王切開するとほとんどの場合次も帝王切開になる可能性が高いです。何度も手術をする事、傷の治り方などから傷を見るたびに落ち込んでしまったり自分を責めてしまうという方もいらっしゃいます。

 

私がそういう方に必ずお伝えするのは帝王切開も立派な出産だということです。

 

自分が望んでいなくても赤ちゃんは早く外に出たいと願いそのサインを私たち医師や助産師にモニターなどから伝えてくれることもあります。それはお母さんにとっても赤ちゃんにとっても一番良い状態でお産できるタイミングなのだと考えています。時には逆子が直らず帝王切開になってしまい赤ちゃんが直ってくれなかったと赤ちゃんすら責めてしまう方もいますが、それはそのお母さんの中で赤ちゃんが一番過ごしやすい体位なのです。お母さんだって赤ちゃんが辛い思いをしてまでお腹の中で生活するのは嫌ですよね。

 

難しい問題であるかもしれませんが帝王切開になったとしても、それはお母さんが赤ちゃんを守るために必要で大切な出産方法なのです。

 

次回はこちら
産婦人科病棟勤務の看護師の仕事(産科の業務について)