火災保険料取りすぎ問題【セールス側の認識不足】

保険会社に関する不祥事と言えば平成18年あたりの保険金不払い問題が有名ですが、それと同等の不祥事としてやはり平成18年の「火災等損害保険料過徴収問題」があります。

火災等損害保険料過徴収問題」とは

一体どんな事件かと言うと読んで字のごとくですが、火災保険料や自動車保険など多くの損害保険会社において本来の額面よりも過剰な保険料徴収していた事実が発覚した問題です。

保険金不払い問題(参考:保険金不払い問題について【加入できたのに、何故支払われないの?】)と並んで世論の保険会社に対する不信を招き、社会問題に発展した事件でもあります。この損害保険料の過徴収問題の中でも特にずば抜けて件数と金額が多かったのが火災保険料であり、今回はその事例について取り上げてみたいと思います。

耐火性に優れた構造の保険料は安くなる: 2×4の保険料が高く徴収されていた

そもそも火災保険料とはどういった計算から成り立っているのでしょうか。火災保険料はおおざっぱに言って保険金額に一定の保険料率を掛けて算出されますが、その保険料率の基礎となるのが、建物の所在地であったり、構造であったり、用途であったりします。所在地についてはたとえば東京都とその他の道府県では建物の密集度が違うことから当然料率が変わってきますし、用途に際しても住宅と店舗用では家財の内容なども異なり保険料が変わってくるでしょう。

しかし最も大事なのが構造上の違いであり、構造によって火災の燃焼の危険度や損傷の危険度が異なるため構造においては細かく料率が分類されています。生命保険において若い人の方が保険料が割安であるように、リスクが低い方が保険料が割安になるというのは火災保険でも同じことで、耐火性・耐震性に優れた構造をしている建物の方が火災・地震による損壊という保険事故のリスクが軽減されるため、保険料は安くなってきます。中でも2×4住宅は「省令準耐火建物」という国の建築基準を満たしているような建物はその火災保険料は安くなることでしょう。

今回の保険料過徴収問題はその2×4住宅の火災保険料において本来は安くするべきであるところ、一般的な木造建築物の保険料と変わらない評価をしており、保険料を高めに徴収していたというものでした。

商品が複雑化されて知識不足のまま契約:理解不足の結果

ことの発端は外資の参入や規制緩和などによる競争の激化によるものですが、損保会社が大幅な特約の追加などにより外資との差別化を図ろうと商品内容を複雑化したことが原因と言われています。この商品の複雑化に代理店や営業職員がついていけず、しっかりとした商品知識を持たないまま大量の件数を契約させたことにより、たとえば件の2×4住宅であれば一般的な木造建築物よりも割安になるという知識を知ってか知らずしてか説明を怠り、

結果多くの契約者も割引になることを知らずに保険料を過払いしていたというものです。同時期に起こった保険金不払い問題も結局は支払えるはずの保険金を支払っていなかったというものであり、これも契約者が保険金を請求できることにつき理解不足であったことから結果不払いという問題に発展してしまいました。

 「請求主義」という業界の体質が招いた問題:セールス側の教育、質の向上をはかる

問題は販売側の理解不足と説明不足、それに加え「請求主義」というものが原因です。「請求主義」とは請求できる者から請求があってはじめて支払いを行ったり、保険料割引の適用を受けたりというもので、数多くの件数を取り扱う保険会社においては致し方ないものかもしれませんが、いささか不親切な取扱いであると思います。

現在の保険会社は件の問題を経て顧客から積極的な請求が取り付けられるようアフターフォロー等定期的な訪問活動を行うなど対策を講じています。

ただ最も重要なことは、加入時に納得して加入することが大前提なので、顧客に商品の知識をしっかりと理解してもらえるようセールス側の教育の質や、販売スキルの質を高めていくことの方が大切であると思います。

           

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