消費者信用団体生命保険という保険商品があります。名前を聞けば住宅ローン借入時に加入する団体信用生命保険に似ていますが、内容的には似て非なるものです。団体信用生命保険は借り手の生命に万が一のことがあった時にローンが返済できないというリスクをヘッジするため、借り手を契約者・被保険者として加入し、万が一の場合は生命保険会社から貸し手である金融機関にローン残高と同額の生命保険金が支払われるという制度ですが、この消費者信用団体生命保険はどうでしょうか。
目次
消費者団体生命保険とは:消費者金融機関が受け取る仕組み
消費者団体生命保険は消費者金融機関からの借入を行った借り手を被保険者とし、消費者金融機関が自ら契約者となり保険料を支払い、借り手に万が一のことがあった場合は生命保険会社は受取人である消費者金融機関に保険金を支払うという仕組みになっています。
大きな違いと言えば、団体信用生命保険は借り手が契約者として自ら保険料を支払うのに対し、消費者信用団体生命保険は消費者金融機関が自ら契約者・保険金受取人になり、自らの資金回収を円滑にするために保険料を自ら支払うという点にあるでしょう。
半ば強制的に加入させられる:被保険者の同意がない契約は無効
この保険は一昔前では消費者金融から借入する際は、借り手にはしっかりとした説明もなく半ば強制的にもしくは知らず知らずのうちに加入させられているものでした。消費者金融機関としては、消費者金融は基本的には無担保融資であり借り手の死亡による貸し損というリスクをヘッジし、借金を確実に回収するための手段としての保険であるためある意味非常に理にかなった制度であるとは言えるでしょう。
また保険会社としても毎月の保険料収入が見込めるためある意味おいしい契約とも言えるかもしれません。また借り手の遺族にとっても借金というマイナスの遺産はこの保険によってなくなるため、プラスの遺産のみを相続出来るというメリットもあるためある意味ありがたいものなのかもしれません。ただこの保険の最も問題なところは借り手が強制的にこの保険に加入させられていることと、それを借り手が知らないということでしょう。
生命保険は基本的には契約者=保険料負担者であるので消費者金融機関が契約者となり保険料を支払うことに問題はありませんが、生命保険契約においては原則被保険者の同意を得なければならず被保険者の同意のない保険契約は無効なのです。(参考:保険に関する法律について【保険契約を交わす際の義務と権利】)被保険者の同意がなければ、生命保険契約は途端に生死の賭博の対象になったり、保険金詐取目的の殺人を誘発したり、もしくは人格権の侵害といった問題が起こってしまいます。
厳しい取り立てが問題に:自殺に追い込まれる割合が多い
この消費者金融においてはやはりその取立てというのが昔から問題になっています。この保険があることにより消費者金融機関にとってはある意味最後の砦的な役割を果たしており「もし借り手が死んでも保険があるので確実に回収できる」という認識のもと強引な取立てが多数行われるようになりました。金融庁は05年に行った調査によると消費者金融が受け取った消費者信用団体生命保険金支払件数の1割が自殺によるものでした。
原因はやはり借金苦と強引な取立てによるものであり、このような強引な取立ては社会問題となり、人の命を担保にしているという世論からの負担が消費者金融機関に集中しました。
現在は、ほとんどの 金融機関で販売していない:命が担保になっては保険の意味をなさない
今では消費者信用団体生命保険はほとんどの消費者金融機関で販売を行っていません。もちろんお金を借りたらしっかりと返済計画に基づいて返済すべきですし、それが出来なければ借りるべきではないと思いますが、このような保険のあり方は本来の保険の主旨を逸脱しているものです。
本来残された遺族のための最後の希望となるものが生命保険なのであり、今後はこのような借金取立てのための具として利用されることのないように願いたいものです。