保険にまつわる事件について【巧妙な手段で繰り返される保険金詐欺】

保険、特に生命保険は少ない掛け金で何千万円という多額の金銭が受け取れるということもあり、殺人事件やマネーロンダリングなど犯罪に利用されてしまうケースが多々あることから、昔より洋の東西を問わず多くの保険金殺人事件が起こってきました。

保険約款で不正を防止:それでも後を絶たない悲劇的な事件

もちろん現在の日本にて生命保険の保険商品を販売するすべての保険会社の保険約款には以下のように記載されているため保険金は下りないことがほとんどですが、時として世間を騒がすような事件も起こっています。

すべての生命保険の保険商品の保険約款には

①契約日より所定期間内に被保険者が自殺をした場合(所定期間は2年であることがほとんどです。)

②死亡保険金受取人もしくは契約者が故意に被保険者を殺害した場合(殺人教唆も含みます。)

と記載されており、これらが立証された場合は当然保険金は支払われることはありません。しかしそれでも巧妙に保険金を得ようとする保険金詐欺者たちによって多くの悲劇的な事件が繰り返し起こされてきたことも事実です。

もちろん保険約款上では原則よほどのことがない限り不正を防ぐ意味合いで、配偶者もしくは血族以外の第三者が保険金受取人になることは出来ないこととしています。また死亡保険金請求時に必要な死亡診断書は遺族しか入手が出来ないことから、婚姻関係や養子縁組を行うことが保険金詐欺の常套手段であると言えます。

 保険会社の責務:悪質な保険金詐欺をシャットアウト!

しかしながら得てして保険金詐欺による殺人は保険に加入してから短い月数での保険金請求や加入者の度重なる再婚、または殺人等においても死因等に不自然な点が多いことや、被保険者にかけられている死亡保険金額が本人の収入に比べ過大であることや(現在では加入時におおよそ収入の約20倍の死亡保険金額が上限の目安となっています。

これは一つの生命保険会社だけでなく、本人が加入している通算の死亡保険金額です。)保険会社の方も加入時の審査や保険事故後の警察と連携しての調査の質が上がったなどのことから、以前のようにニュースで取り上げられるような保険金詐欺による殺人事件など生命保険が犯罪に使われるケースは珍しくはなってはいます。

もちろん保険金詐欺を行う者が全面的に悪であるのは言うまでもありませんが、加入時にそういった保険を悪用する者(以下モラルリスクと呼称します。)をシャットアウトする責任が保険会社にはあると思います。

加入時に不自然な点がないか見極める:モラルリスク排除の教育体制強化

そのシャットアウトするための方策として、まずはセールスマンのモラルリスク排除のための教育であると思います。もちろん厳しい営業ノルマに追われ契約に目がくらんでのそういったモラルリスクの疑いのある者を加入させることは論外ですが、加入時にはわからなかったというケースにおいてはそういった者の加入は防ぐことがと思います。

たとえば基本的には保険は募集を行ったうえでの加入となるので顧客からの電話などによる加入の申し出があったかどうかや、または生命保険募集は原則保険会社か顧客の自宅での面談が前提となっていますがそれ以外の喫茶店などの場所を指定してきたかどうかということ、もしくは本人の職業の割には過大な保険金額ではないかなどセールスマンの方でもしっかりとある程度は見定めることはできます。

ノルマ重視の経営体質を見直し:コンプライアンス体制の充実

もちろん保険会社の方でもコンプライアンス体制の充実を図りモラルリスクを排除するだけでなく、危険な契約を生みやすいノルマ重視の環境を排除することが求められると思います。ただ保険会社やセールスマンが保険にまつわる事件についていかに注意を凝らしてもそういった者を完全に排除することは出来ません。(参考:保険募集人になるには)

本来生命保険とは万一の際に残された家族のその後の希望となるものであり、保険金詐欺のような保険金目当てに生命保険の本来の目的から逸脱したきわめて悪質な生命保険の利用についてはこれから起こることのないよう切に祈るばかりです。

           

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