相続税における配偶者控除の落とし穴

配偶者の相続分に対して相続税が課税されることはほとんどありません。

配偶者には配偶者控除という配偶者の相続税額が軽減される制度があるからです。

今回はこの配偶者が受けることができる相続税の配偶者控除についてご紹介するとともに、必ず知っておくべき配偶者控除の落とし穴を解説します。

配偶者控除とは

配偶者控除(正式には「配偶者の相続税額の軽減」)とは、被相続人の遺産を相続によって取得した配偶者に対する相続税額軽減措置のことです。

具体的には、配偶者が相続によって得た財産の価額が1億6000万円か配偶者の法定相続分までは相続税の課税対象にならないという制度です。

相続後の配偶者控除の失敗事例

配偶者には相続税がかからないのなら、安心というわけではありません。

以下では、失敗事例を紹介します。

⑴遺言書がなかってので、兄弟と遺産分割協議をしてどのような形で遺産を分割相続するかを話し合いました。ところが、遺産に不動産が含まれていたりしてその分割方法などについてああでもないこうでもないと揉めているうちにどんどん時間が経過してしまってしまい、結局相続税の配偶者控除を受けることができずに多額の相続税を納める羽目になってしまいました。

→相続税の配偶者の税額軽減(配偶者控除)は、遺産分割協議での話し合いがまとまっていない財産には適用を受けることができません。相続が開始してから10カ月後までに相続税の申告をしなければなりませんので、その時点で遺産分割協議が成立していなければ相続税の配偶者控除の適用を受けることができず、多額の相続税を納めなければならないのです。

遺産分割協議は遅くとも相続税の申告期限までに済ませておくことが肝要です。

⑵夫が死亡し、私にたくさんの遺産を相続させてくれたことで配偶者控除の適用を受け相続税が大幅に軽減されたので喜んでいました。ところが調べて見ると、たくさんの相続したせいで私自身が資産家となってしまい、将来私が死亡したときに子供たちがに多額の相続税がかかってしまいそうです。

遺産分割協議をするときには、2回目の相続(2次相続)のことも視野に入れながら進めていくことが必要です。

配偶者の相続税額の軽減(配偶者控除)について相談したい場合

配偶者の相続税額の軽減(配偶者控除)について相談したい場合は、最寄りの税務署の資産課税部門で相談することができます。また国税庁のホームページ(http://www.nta.go.ip/taxanser/souzoku/4158.htm)で詳細に調べることができます。

ただし、相続税の申告を税理士にお願いするのであれば、早めに相談することでアドバイスをもらえますので税理士に相談することが最もオススメです。

なお配偶者の相続税額の軽減(配偶者控除)はたとえ1日でも「婚姻届」を提出していれば適用されますが、「婚姻届」提出していない場合にはどんなに長く連れ添っていても適用を受けることはできません。

ちなみに本来相続税の申告期限までに遺産分割されていない財産は配偶者の相続税額の軽減(配偶者控除)の対象にはなりませんが、相続税の申告書または更正の請求書に「申告期限後3年以内に分割見込書」を添付した上で、相続税の申告期限までに遺産分割されなかった財産について申告期限から3年以内に遺産分割したときは、配偶者控除の対象になります。

なお相続税の申告期限から3年が経過する日までに遺産分割できないやむを得ない事情があり、税務署長の承認を受けた場合で、その事情がなくなった日の翌日から4カ月以内に遺産分割されたときも配偶者控除の対象になります。

まとめ

配偶者の相続税額の軽減(配偶者控除)は、配偶者が相続によって得た財産の価額が1億6000万円か配偶者の法定相続分までは相続税の課税対象にならないという制度です。

しかし、とりわけ遺産に不動産が含まれている場合などに遺産分割協議が揉めたりして相続開始後10カ月の相続税の申告期限が経過してしまって高額の相続税が課税されることになってしまうケースや、二次相続で思いもよらないほど多額の相続税がかかってしまうケースがあります。

相続開始後10カ月の相続税の申告期限や2次相続のことも視野に入れて遺産分割協議を進めることが肝要です。

配偶者の税額控除については、相続専門の税理士に一度確認しておくことが懸命といえます。