相続放棄とは、その名の通り「遺産を引き継ぐのを放棄する」ことです。
え、遺産は引き継いだほうがいいに決まってる!
できるだけたくさん引き継ぎたい!
なんでわざわざ放棄するの!?
と思うかもしれませんが、遺産の中には借金などの「マイナスの遺産」も含まれるのです。
何も考えずに相続すると、思わぬ損をしてしまう可能性がありますので、知らないと怖いですよ。
また、相続放棄をすることで、いわゆる遺産相続争いから逃れることもできます。
今回の記事では、遺産を引き継ぐのを放棄する「相続放棄」について詳しく紹介していきます。
相続するべきか放棄するべきかを考える
まず相続した方ほうがいいか?相続放棄したほうがいいか?の判断基準について考えていきます。
遺族が死亡したら、ただちにしなければならないことは、相続財産の確認です。
現金、預貯金、不動産などのプラスの財産がどれだけあるかももちろん重要ですが、それ以上に借金や売掛金、滞納金などのマイナスの財産がどれぐらいあるのかを知ることが重要です。おおむね2カ月ほどの間に調査してリストアップしましょう。
そしてマイナスの財産がプラスの財産を大幅に上回っている場合には相続放棄が有効です。借金が自分のものになってしまうのは嫌ですからね。
もちろん、プラスの財産が多くても、遺産分割協議協議で争いになるのを回避したいときなどは相続放棄をすることができます。
相続はプラスの財産のみならずマイナスの財産も引き続ぐということを、忘れないでください。
具体的にどのような手続きによって相続放棄をするのか
相続放棄をするには各相続人が遺族の死亡を知ったときから3カ月以内に、被相続人(死亡した人)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に「相続放棄申述書」を被相続人の戸籍・除籍、住民票除票および相続人の戸籍謄本を添付して提出しなければなりません。
家庭裁判所に認められると「相続放棄申述受理通知書」が交付されます。
死亡を知ったときから3ヶ月以内ということに注意してください。(この期間を熟慮期間といいます)
たとえば被相続人が死亡してから数年後にはじめて死亡の事実を知った場合は、その知った時から3カ月以内であれば、相続放棄をすることができます。
また相続財産がたくさんある、複数の債務があるなどの理由によって熟慮期間内に相続財産の調査が完了しない場合には、熟慮期間が経過してしまわないうちに、利害関係人または検察官の請求により、家庭裁判所は熟慮期間の伸長することができます(必ず伸長されるわけではありません)。
誰に頼めばいいか?
相続放棄の申述をすることを依頼することができる専門家としては弁護士と司法書士がありますが、両者は代理権の範囲が異なり、弁護士であればオールラウンドな裁判代理権がありますが、司法書士には原則として書類作成の代理権しかありません。
司法書士に依頼した場合には相続放棄申述書は作成してくれますが、相続放棄の手続き自体は本人がすることになります。
弁護士に相続放棄申述手続きを依頼すると、相続放棄申述書の作成はもちろん、相続放棄照会書や回答書などの書類作成も弁護士ができるため、すべてを弁護士に一任して申述人が対応する必要はありません。
費用については弁護士報酬の相場は10万円程度、司法書士報酬の相場は3~5万円程度となっています。
なお、相続専門の税理士に相続税の申告書作成業務を依頼する場合は、その税理士に相談することがオススメです。なぜなら、相続を専門とする税理士であれば、相続に関する他の士業の専門家とのネットワークがあり、相続税の申告書作成とともに一括して依頼できる場合が多いからです。
相続放棄をするということは?
相続放棄をすると、その相続に関しては初めから相続人にならなかったものとみなされます。
したがって次順位の相続人が相続人となりますが、第三順位まですべての相続人が相続放棄をした場合には相続人不存在となり、利害関係人または検察官の請求により相続財産管理人が選任されて所定の手続きを経て最終的に遺産は国家に帰属します。(子どもも、親も、兄弟姉妹も相続放棄した場合)
相続放棄をした相続人の直系卑属は代襲相続することはできません。(子どもが相続放棄をした場合、孫に相続権が移転することはあありません。)
なお3ヶ月の熟慮期間内であっても相続財産の一部または全部を使用したり処分したりすると単純承認をしたものとみなされ、もはや相続放棄をすることができなくなりますので注意が必要です。
まとめ
以上、相続税放棄の内容と手続き、専門家について解説させていただきました。
改めて内容をまとめると、、
- 遺族が死亡したら、マイナスの財産も含め遺産を調査し、リストアップすべし。
- リストアップの結果、マイナスの財産の方が多いのであれば、相続放棄を考えるべし。
- 手続きは「相続放棄申述書」に必要書類を添付して、被相続人の住所地管轄の家庭裁判所に提出。
- 相続放棄の専門家は弁護士(10万円程度)と司法書士(3〜5万円程度)。
- 相続税申告を税理士にお願いするなら、税理士から弁護士や司法書士に繋いでくれる可能性が高い。
- 遺産を使用や処分したらもう相続放棄はできない。
いかがでしたでしょうか。
相続放棄をしないと、莫大な借金を引き継ぐ恐れもあります。逆に、適切に手続きすれば大損失から免れることができます。
いざ、相続が発生するとお通夜、お葬式に始まりバタバタとやることが多いですし、精神的な理由からするべきことができないパターンが多々あります。相続が発生する前から、早め早めに相続について考えておくことが重要です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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