生前贈与を今年から始めよう~これから相続税対策をする方へ~

「相続税対策を始めたいけど、、、何から始めていいかわからない」

「できれば簡単なことから対策を始めていきたい」

この記事はそんな方に向けて「生前贈与」という方法を紹介させていただきます。

何にもしないと、莫大に課される相続税。

平成26年の相続税申告者1人当たりの平均相続税額は2,473万円です。

さらに、平成27年税制改正により税額はさらに増加しています。

将来かかってくる相続税を少しでも減らすためには、適切な相続税対策をすることが重要です。

適切な相続税対策ができれば、何もしない場合に比べ、通常100万円~3,000万円節税できるからです。

では、どのように相続税対策を始めればいいのでしょうか?

この記事では、税金について初心者の方が相続税対策のスタートを切れるように、わかりやすく「生前贈与」を解説しています。

生前贈与は最も基本的な相続税対策です。ぜひお役立てください。

生前贈与とは

まず「生前贈与」とはいったい何でしょうか?

⇒生きているうちに「タダであげる」ことです。

財産を無償で移転することを贈与といい、生きているうちに贈与することを「生前贈与」といいます。

また、受贈者(もらう人)は、もらった財産の額に応じて税金を支払わなければなりません。これが「贈与税」です。

生前贈与は、贈与者(あげる人)が自分の財産を与える意思を示し、受贈者(もらう人)がそれを承諾することによってはじめて効力が生まれます。

注意ポイント
一方的にあげるのではダメです。贈与者と受贈者、お互いの意思表示が必要になります。

相続との比較

では次に、生前贈与は相続とどう違うのでしょうか?

⇒相続とは、人の死亡によりその人の遺産が遺族に引き継がれることをいいます。

生きているうちに渡すのが「生前贈与」で、亡くなった際に残るのが「相続」ということです。

相続を受けた人も、引き継いだ財産の額に応じて税金を支払わなければなりません。これが「相続税」です。

生前贈与

  • 自分の意思で、「いつ・誰に・いくら渡す」かを決められる
  • 計画的に、何度でも(毎年)贈与できる
  • 贈与する額に応じて贈与税がかかる(贈与を受けた人が払う)
  • 贈与税は1年間の贈与についてまとめて課税され、贈与する額を調整すれば税額も調整できる

相続

  • 発生時期がわからない
  • 遺言がなければ民法で決められた法定相続人が財産を取得する
  • 遺産の額に応じて相続税がかかる(相続を受けた人が払う)
  • 1度に多額の納税資金が必要になることがある

相続税対策に生前贈与を活用しよう

では、相続税対策のために「生前贈与」をするとはどういうことでしょうか?

相続税は、死亡する時に持っている財産(相続する財産)が多いほど、遺族が支払う税額は当然大きくなります。

そこで、生きているうちに財産をできるだけ贈与しておき(生前贈与)、死亡する時の財産(相続財産)を減らすのです。

死亡する時の財産(相続財産)が減れば、相続税の負担を減らすことができますね。

生前に贈与しておくことで、死亡時の財産(相続財産)が減り、将来の相続税を節税することができるのです。

ただし、相続が近くなって多くの財産を一気に生前贈与しても全く節税にはなりません。

生前贈与は、できるだけ早い時期から長期にわたって少しずつ財産を移行させることで効果的な節税となります。
また、贈与する相手は問われず誰に贈与してもかまいません。

生前贈与は、毎年の贈与する額を調整すれば、誰もが効果的に節税できる相続税対策なのです。

相続直前の贈与
相続発生(死亡日)より前3年以内に行った贈与は、その贈与が「なかったもの」として相続税の計算がされます。つまり、死亡する3年以上前に生前贈与を行わなければ節税効果はありません。
また、3年以上前だとしても多額の財産を一気に贈与すると、相続税以上に贈与税がかかるため全く節税にはなりません。

相続税対策として効果的な生前贈与とするためのポイント

  • 1度に(1年に)多額の財産を贈与しない
  • 相続直前ではなく、できるだけ早い時期から長期間に渡って贈与する
  • 子や孫、それ以外でも、できれば複数の人に贈与する

贈与税の計算方法~贈与税は年間110万円以上で課税される~

実際に生前贈与による相続税対策を始めるのなら、生前贈与によって課される「贈与税」について理解しておく必要があります。

贈与税は、1人の人が1月1日~12月31日までの1年間に贈与された財産の合計額が110万円を超えると課税されます。

これを「暦年課税方式」といいます。
またこの110万円を「贈与税の基礎控除額」といいます。

逆にいえば、1年間に贈与された財産の合計額が110万円以下なら贈与税は1円もかかりません。

贈与税の計算方法と計算表

贈与税額は以下の速算表を用いて、次の計算式で求めることができます。

贈与税の計算方法
贈与税額 = 贈与財産額 - 110万円) × 税率 - 控除額

贈与税の速算表
基礎控除額1人1年間に110万円
税額計算110万円控除後の贈与財産額税率控除額
200万円以下10%
300万円以下
(400万円以下)
15%10万円
(10万円)
400万円以下
(600万円以下)
20%25万円
(30万円)
600万円以下
(1,000万円以下)
30%65万円
(90万円)
1,000万円以下
(1,500万円以下)
40%125万円
(190万円)
1,500万円以下
(3,000万円以下)
45%175万円
(265万円)
3,500万円以下
(4,500万円以下)
50%250万円
(415万円)
3,000万円超
(4,500万円超)
55%400万円
(640万円)
下段の括弧書きは「20歳以上の者が直系尊属(両親、祖父母、曾祖父母)から贈与を受けた場合」、上段は「それ以外の場合」

【例】500万円(基礎控除後390万円)の贈与を孫に行う場合の贈与税額

孫が20歳未満の場合
⇒390万円 × 20% - 25万円 = 53万円 と計算され、孫に53万円の贈与税が課されます。

孫が20歳以上の場合
⇒390万円 ×15% - 10万円 = 48万5千円 と計算され、孫に48万5千円の贈与税が課されます。

相続税の金額や計算方法はコチラ
⇒「ゼロからの相続税と贈与税~どちらが高い?得?税率比較~」

毎年110万円を贈与するだけで相続税が節税できます

最も単純かつ効果的な相続税の節税方法は、毎年1人当たり110万円を贈与する方法です。

贈与税の計算上、1年間に1人110万円までなら贈与を受けても贈与税がかからないことは紹介しましたね。

例えば、妻と息子と娘の3人に対して毎年110万円ずつを20年間贈与した場合、110万円 × 3人 × 20年 = 6,600万円。
合計6,600万円の財産を贈与税0円で贈与できます。

相続税の税率は10%~55%なので仮に相続税率を30%とすると、6,600万円 × 30% = 1,980万円
1,980万円もの相続税が節税できるのです。

相続税対策として生前贈与のオススメな点は、方法が単純にもかかわらず効果が大きい点です。

生前贈与は数ある相続税対策のなかで最も基本的な方法ですが、早くから始めれば大きな節税ができます。

いくら生前贈与を実施すればいいかについてはコチラをご覧ください
⇒「生前贈与は毎年いくら実施すべきか~限界まで相続税を節税する贈与額~」

より効果的な節税には税理士によるシミュレーションが最適

上で紹介した、毎年1人当たり110万円を贈与する方法は誰もが確実に節税できる方法です。

しかし、遺産が高額な方やさらに効果的な節税を求める方は、早めに専門家に相談する方が得策です。

なぜなら、最も効果的な生前贈与額は必ずしも毎年110万円ではないからです。

毎年いくら財産を贈与するかは、遺産の額や相続までの見込年数等により異なります。
また財産の中身も現金だけではなく株や土地や建物など、当時者によって異なります。

つまり、相続税対策は本来、当事者に合わせたオーダーメイドで計画することが重要なのです。

長期的なシミュレーションを実施すれば、ある程度贈与税を支払ってでも、相続税と贈与税の総額としてより大きく節税できる場合がほとんどです。

相続専門の税理士に依頼すれば、最適な生前贈与プランが提示されるだけではなく、その他の相続税対策である「生命保険の活用」や「賃貸アパートの建築」から「お墓の購入」に至るまで、相続税対策の中から本人に適したものを選択して提示してもらえます。

特に遺産が高額な方にとっては、どのように対策をするかで相続税額が大きく変わってきますので税理士へ相談することをオススメします。

生前贈与の注意点

生前贈与は相続税対策の中では簡便ですが、守るべき注意点があります。

例えば、生前贈与として親が子ども名義の口座に毎年資金を移動させていても、実質的に親が管理している口座は、贈与とみなされない場合があります。贈与を受けた人が「自由にお金を使える状態」にすることが必要です。

税務調査においてもこのような預金の有無がチェックの中心となるため、贈与の要件をみたす生前贈与により適切な相続税対策とすることが重要です。

実際に生前贈与をする前にお読みください。注意点をまとめた記事はコチラ
⇒「生前贈与の注意点~効果的な相続税対策とするために~」

本格的な節税方法~要件を満たせば「相続時精算課税」を選択~

次は少し「応用編」に進みます。

贈与税は、1人の人が1月1日~12月31日までの1年間に贈与された財産の合計額に対して課税する「暦年課税方式」と紹介しました。

実は一定の要件を満たした場合に、この「暦年課税」ではなく「相続時精算課税」を選択することができます。

相続時精算課税とは

例えば父親が100歳で亡くなった場合、相続を受ける子どもは既に80歳前後になっていることでしょう。
早いうちに財産を子どもや孫へ移行させることを目的に作られたのが「相続時精算課税制度」です。

要件を満たし「相続時精算課税」を選択すると、2,500万円までの生前贈与には贈与税がかかりません。

その代わり、相続が発生した際に、生前贈与された財産と相続された財産の合計に相続税が課されるという制度です。

適用対象者

・贈与者は60歳以上の父母および祖父母
・受贈者は20歳以上の子および孫
・課税の適用は贈与者ごとに選択可能
(父からの贈与は暦年課税で、母からの贈与は相続時精算課税というのも可)

特別控除額

・選択した贈与者(父母および祖父母)ごとに2,500万円まで
(前年までに既に特別控除額を使用している場合には、その金額を差し引いた金額)

適用税率

・特別控除額を超える部分に対して一律20%

相続時精算課税のメリットとデメリット~必ず税理士に相談を~

相続時精算課税を選択して受取った贈与財産は、2,500万円まで贈与税がかかりませんが、相続が発生したときに贈与した財産が相続財産に合算されて相続税が計算されます。

また、相続時精算課税を一度選択すると、そのあと選択した贈与者(父母および祖父母)からの贈与は暦年課税に戻すことはできません。

相続時精算課税のメリット

  • 早期に多額の財産を以降させることができる
  • 2,500万円の贈与までは贈与税が0円
  • 値上がりする可能性の高い財産の早期に贈与し、相続税の増加を防止できる
  • 収益物件(賃貸マンション当等)の早期贈与で、相続税の増加を防止できる

相続時精算課税のデメリット

  • 一度選択すると暦年贈与に戻れない
  • 相続時に発生する相続税が多くなり、通算で損をすることも
  • 他の特例等との併用ができない

相続時精算課税の選択には、メリットとデメリット両方が存在し、選択により得をする場合もあれば、結果として不利になってしまう場合もあります。

生前贈与は取り組みやすい相続税対策ですが「相続時精算課税」の利用はまた別です。

「相続時精算課税」を検討する場合は安易に判断せず、必ず税理士に相談するべきです。

税理士に相談するなら相続税専門税理士を選ぶべし

最後に、相続税対策を相談する際の税理士選びについて紹介します。

生前贈与は、税理士の力を借りなくても相続税を節税できる数少ない方法ですが、より効果的な節税をするために専門家のシミュレーションを求める方もいらっしゃると思います。

また、上で紹介したように「相続時精算課税」を検討する場合には税理士に相談することが重要です。

相続税対策を税理士に相談することは一般的ですし、リスク回避や節税効果の点からも有効です。

ただし、相続税対策の税理士選びは注意が必要です。

ほとんどの税理士が法人税や所得税を専門としており、実は相続税を専門とする税理士は極めて少ないのです。

「相続」はものすごく専門性が高い分野のため、税理士の経験や技量によって計算される相続税額に驚くほどの差が出ます。

もし税理士に「相続税対策」から関わってもらうならば、その金額の差はさらに増すでしょう。

「相続」に関する専門性の高い税理士を選ぶことも、大きな相続税対策なのです。

選ぶなら必ず「相続税専門」の税理士を選びましょう。

「税理士紹介サイト」を利用すれば、条件に合う税理士をあらかじめ指定することができ、安心して無料相談ができるためオススメしております。

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まとめ~相続税対策としての生前贈与~

以上、これから相続税対策を始める方にむけて「生前贈与」について紹介させていただきました。

改めてポイントをまとめると、

  • 生前贈与は「生きているうちにタダであげる」こと
  • 生前贈与をすることで誰でも相続税を節税できる
  • 生前贈与はできるだけ早くから長期にわたって実施した方が効果大
  • 1年間に1人110万円までの贈与は贈与税0円
  • 税務調査でも贈与とみなされるように注意が必要
  • 相続時精算課税を検討する場合やその他の対策を希望するなら税理士に相談すべし
  • 税理士に相談するなら「相続税専門」の税理士に相談するべし

いかがでしたでしょうか。
読んでいただければ、「相続税対策としての生前贈与の基本的な内容」がわかっていただけたと思います。

なにも対策しないと、相続税は遠慮なく課税されます。

もちろん相続税対策は奥が深く、「生前贈与」だけで語ることはできません。

ですが、「何から始めていいかわからない」、「いつから始めていいのかわからない」と現時点でなにも相続税対策ができていない方は、まず最初の“とっかかり”として「生前贈与」を始めてみることがオススメです。

自分や自分の家族が、生前贈与でどのくらい節税ができるかを知り、それでもこれだけの相続税がかかるとわかれば、次の対策へと進むこともできるでしょう。

相続税対策は、少しでも早く始めることが成功のカギです。

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