相続税申告の体験談2~名義預金に相続税がかかってしまうなんて~

実際に相続税申告を経験した方の体験談を紹介させていただきます。

体験者はお父様が亡くなられた後に、父が生前に自分と妹それぞれの名義で口座を作り、コツコツとお金を残していてくれた事実を知りました。

父の思いに感動している矢先、「この預金口座の存在により相続税がかかる」と税理士に指摘されてしまったのです。

父が生前子どもたちの口座に振込んだお金になぜ相続税がかかったのでしょうか?

それは既に父の財産ではなく、子どもたちに贈与した財産ではないのでしょうか?

このようなパターンは相続税申告の中で本当によくある事例です。

ぜひ参考にご一読ください。

父親の死~相続税の心配など全くしていませんでした~

私の父は83歳で他界しました。

父は亡くなる直前こそ入院しておりましたが、生前はじっとしていることが嫌いな性格でした。定年後はシルバー人材の派遣として様々な仕事をし、仲間を作っていたようです。

これは父が亡くなってから知ったのですが、私と妹それぞれの名義で口座を作り、500万円ずつ預けてくれていました。私たち娘2人に残してあげたいと毎月こつこつ貯めてくれていたようです。

私たちは全く知らなかったので、これを聞いたときは父へ感謝するとともに、親孝行が全然できなかったと深く後悔しました。

もちろんこのときは、相続税の心配など頭の中にまったくありませんでした。

税務署からのお尋ね~相続財産の一覧を提出?~

さて、父が亡くなってちょうど7か月くらいがたった頃です。税務署から相続税申告のお尋ねが届きました。父の相続財産の一覧を作成して提出するよう促す内容でした。

相続税については全くの無知であるためインターネットで調べたところ、父の相続財産が「5,000万円+1,000万円×法定相続人」以下であれば相続税はかからないと書いてありました。
(なお、現在は「3,000万円+600万円×法定相続人」に変わっております。)

相続人は母と私と妹の3人のため、8,000万円以下であれば相続税はかかりません。

何もしなくて大丈夫だと思う反面、税務署から書類が届いたことで不安になり、夫から「不安だったら、お金が多少かかってでも専門家に相談してみたらどうか」と言われ、私は専門家に相談してみることにしました。

税理士に相談へ~インターネットで検索~

専門家に相談といえども、誰に相談すればいいのか見当もつきません。

ここで便利なのがやはりインターネットです。さっそく「相続税 相談」で検索したところ、いろんな税理士さんのホームページが出てきました。

その中で自宅から近そうで、尚且つ信頼のおけそうな(ホームページでの判断ですので完全な主観ですが…)税理士法人を見つけ、フリーダイヤルに連絡しました。対応が早く、いきなり翌週に訪問していただけることとなりました。

税理士からの質問~娘の名義で父が管理していた預金口座~

翌週、税理士さんが自宅まで来られました。税理士さんからは、親族関係と簡単に父の相続財産の内容を尋ねられました。

一通り説明すると、この財産だけであれば相続税の心配はないとのことでした。自宅の土地がかなり高く5,000万円程ですが、父名義の預貯金が2,500万円程でしたので、合計しても基礎控除の8,000万円は下回ります。税務署からのお尋ねに関しても、気にしなくて大丈夫とのことでした。

相続税の心配がないと聞いてほっと一安心していたところ、税理士さんからもう1つ尋ねられました。

「娘さんやお孫さんの名義でお父様が管理されていた預金口座はないですよね?」

名義預金って何??

親族に名義を借りて預金しているに過ぎない預金のことを「名義預金」と呼ぶそうです。

父が生前に私たちに贈与してくれていた財産は、実際は父が管理しているため「父の財産」として相続財産の一部になるということでした。

つまり、父が私たちにしてくれた「生前贈与」はその方法が間違っていたため、そもそも「贈与」として認められず結果的には全て無効となってしまったのです。
税理士さんによると、生前贈与の典型的な注意点を理解していないよくある失敗のようです。

まさか父が私たちの名義で残してくれていた財産が相続に関係するとは思っていなかったので話にも出さなかったのですが、こうなってくると大きく話が変わってきます。

父の相続財産の合計が8,000万円を超えることになるのです。相続税を払わないといけないという不安が一気に高まりました。

>>「生前贈与の注意点~効果的な相続税対策とするために」

相続税の申告へ

相続税の申告手続き等は訪問してもらった税理士さんに依頼しました。ただ、依頼したのは父が亡くなって7カ月以上たった頃でしたので、税理士さんも大急ぎで取り掛かるとのことでした。

それまで気にもしていなかったのですが、相続税の申告と納付は亡くなってから10か月以内に行わなければならない上に、土地の評価等に時間がかかるそうです。

結局税務署への申告が完了したのは、提出期限の1週間前でした。遺産分割については、私たち兄弟の名義預金のみそれぞれ取得し、それ以外の財産はすべて母が取得することにしたのでスムーズにいき、なんとか間に合ったという感じです。

もし税理士さんに依頼しておらず、税務調査などの対象になってしまっていたらと考えるとぞっとします。

本当に専門の税理士さんに相談して良かったと心から感じました。

>>「相続税専門税理士の探し方5選」

考察~体験談から考える相続税対策~

いかがでしたでしょうか。

この体験者のお父様は、生前に子どもに500万円ずつ、計1,000万円の預金を贈与したつもりでした。しかし、残し方が悪かったため「名義預金」とみなされ、自分の財産として相続税が課税されてしまいました。

体験者は最終的に70万円程度の相続税を支払いましたが、もしお父様に相続税対策の知識があり、1,000万円を正しい方法で贈与できていれば、子どもたちは1円も相続税を払わずに済んだのです。

また体験者はお父様が亡くなられた後、税務署からのお尋ねが届いてからインターネットで税理士を探しました。体験者自信もおっしゃるように、税理士に相談した点は素晴らしい判断だったと思います。

しかしもし、父の生前から相続に関して税理士に相談していればどうだったでしょうか。

⇒間違いなく事前に名義預金についての指摘があり、1円も相続税を支払わずに済んだはずです。

「注意点やポイントを理解しないまま相続税対策をするリスク」、「生前から相続について税理士に相談すること」の重要性を感じさせてくれます。

このサイトは「相続や税金について詳しくない方が、相続税対策のスタートを切れるように」という目標を持って作成しています。

皆さまにとって少しでもお役に立てれば幸いです。