遺産相続で揉めやすい家族10選~当てはまったら相続対策を~

「ウチに限って相続で揉めることなんてない」

「そもそも、奪い合うほど財産なんかない」

こういう家族ほど揉めます。定番なのです。

映画やドラマなどの影響で「遺産相続争いは億万長者のもの」というイメージがあるかもしれませんが、実際は違います。

相続をきっかけにして揉める家族は、ある程度パターンが決まっているのです。

では、どのような家族が相続で揉めやすいのでしょうか?

この記事では「遺産相続で揉めやすいケース10選」と「ケースに当てはまった場合の対処法」を紹介していきます。自分の家族を思い浮かべながら、ぜひご一読ください。

ケース① 「うちの家族は大丈夫」対策ゼロ勉強ゼロのタイプ

冒頭でも紹介しましたが、遺産相続争いは「ウチには関係ない」と思っている家庭にこそ起こります。

なぜなら、そういう家庭は一切対策をしていないからです。

家族の死をきっかけに、突然舞い降りてきた「おカネ」に対してなんら方向性が決まっていないとき、人間の欲がぶつかり合い遺産相続争いに発展するのです。

「うちには相続争いなんてあり得ない」そう考えている人は多いのではないでしょうか?

ケース② 遺産の大半が「不動産」で平等に分けられないタイプ

例えば兄弟2人で以下のような父親の遺産を分ける場合は、揉める典型的なパターンです。

  • 預金 300万円
  • 住宅と土地 4,000万円

住んでいる住宅を売るわけにもいけませんし、どうやっても平等には分けられそうにないですね。

かといって不動産の名義を兄弟の共有にすると、さらなる争いの元になります。不動産の名義を複数で共有すると、売却するにも活用するにも共有者全員の同意が必要となるからです。

ケース③ 遺産の総額がそこまで多くないタイプ

事実、遺産相続争いが起こる家庭の80%以上が「遺産総額5,000万円以下の家庭」です。

意外かもしれませんが、大金持ちはあまり醜い争いをしません。誤解を恐れずに書くと、大金持ちには共通してお金に対する余裕があり、あまりガメつさがない印象です。

遺産がそこまで多くない家庭こそ、いざ相続が発生すると「1円でも多く引き継ぎたい!」「うまくやれば、金持ちになれるかも。。」という気持ちが「家族の誰か」に生まれてしまうものです。

ケース④ 親の「介護をしていた子供」と「何もしてない子供」がいるタイプ

誰がどのくらい遺産を相続するかは民法の「法定相続分」に規定されていますが、介護や面倒を見ていたかによってはまったく影響を受けません。

例えばこんなケースです。

長男は、献身的な介護を5年間も続けた末に父親は亡くなりました。長男の妻も会社を辞めて介護に専念していました。家はバリアフリーに改装し、お金の面でも大きく負担をしてきました。

そこに、長い間実家を飛び出して大阪に住んでいた次男がひょっこり帰ってきてこう言うのです。

「おとんの面倒ありがとう。遺産は半分に分けよね。」

遺産相続争いの典型的なパターンです。

ケース⑤ 子供がいない「夫婦2人暮らし」タイプ

「子供がおらず、夫婦2人暮らしだから揉めようがない」と思っていませんか?

例えばそんな夫婦2人暮らしの「夫」が亡くなった場合、相続人は以下のようになります。

  • 夫の親が生きている場合・・・相続人は「夫の親」と「妻(あなた)」
  • 夫の親が死亡している場合・・・相続人は「夫の兄弟姉妹」と「妻(あなた)」

相続人は全員で集まってテーブルをかこみ「遺産分割協議」を行わなければなりません。想像するだけでも大変ですね。気を使って自分の取り分をしっかり主張することすらできない可能性も考えられます。

ケース⑥ 養子がいるタイプ

例えば孫を養子にすると、本来なら相続人ではない孫が、実子と同じ立場の「相続人」になります。

養子になった孫に遺産がわたる分、もともとの「相続人」の相続する分が減ることになります。

人は「もらえると思っていたものがもらえない」と怒りを覚えるものです。養子縁組制度を利用する場合は遺産相続争いに発展しないように家族全員の同意のもと実施することが重要です。

ケース⑦ 「相続人ではない人」に相続させる意思があるタイプ

「遺言書」を利用することで、本来なら相続する権利のない人に遺産を引き継がせることができます。

愛人に財産を」「献身的に介護してくれた長男の妻に財産を」「可愛いに財産を」こんな遺言書があると、これらの人に財産がわたるだけ、もともと相続人である人の取り分が減ることになります。

損をする人がいると争いが起こるものです。遺言書を残すときは残された家族のことを想い、感謝の気持ちを込めた遺言書を作成することが重要です。

ケース⑧ 「未成年」の相続人がいるタイプ

未成年の相続人は遺産分割協議に参加することができません。通常、未成年者が法律上の判断をする際には親が法定代理人となってサポートしますが、相続の場合はどうでしょう。

例えば、父親が死亡し、その相続人が以下の場合を見てみましょう。

  • 母親60歳
  • 長男30歳
  • 次男25歳
  • 長女19歳

長女の父親は死亡しているのでもちろん法定代理人になれません。また長女の母親自身も長女と同じ「相続人」です。長女の取り分が増えるだけ、母親の取り分が減る「利益相反」の関係にありますので母親も法定代理人にはなれません。

そこで、弁護士や税理士等の第三者が長女の法定代理人になり遺産分割協議が行われます。

ケース⑨ 「相続させたくない相続人」がいるタイプ

生前から仲が悪い場合は、死亡してもなお問題が起きます。

縁を切りたいほどの子どもに対しても、遺言書がなければ遺産がわたります。また遺言書で例えば「次男には財産を相続させない」と記載するとその遺言書自体は有効ですが、遺留分を請求されれば取り返されてしまいます。

遺留分の請求は場合によって訴訟に発展することも多いです。

遺留分とは・・・被相続人(亡くなった人)の一定の近親者のための、相続財産の最低保障額をいいます。なお、一定の近親者とは兄弟姉妹以外の相続人をいいます。

ケース⑩ 相続人が多いタイプ

子どもが多い場合や、養子がいる場合、先に子どもが死亡しており孫が代わりに相続人になる(代襲相続といいます)場合など、相続人が多いと遺産相続で揉めやすいです。

そもそも遺産分割協議は相続人全員が集まり、全員の同意が必要です。相続人の住む場所が遠く離れていると集まるだけで一苦労ですし、人数が多いとなかなか全員が同意しないことは、言うまでもありませんね。

遺産相続争いを防止するための3つの対策

「遺産相続で揉めやすい家族10選」はいかがでしたでしょうか?

もし1つでも自分の家族に当てはまるものがあったのなら、事前に対策をしておくことが重要です。

繰り返しになりますが、「自分の家族はなにも心配いらない」と無関心でいたり「まだ元気だし、相続の話なんて縁起でもない」と後回しにしている家族にこそトラブルが発生するのです。

対策といっても難しいことをするわけではありません。遺産相続争いを防止するために簡単にできる対策は以下のとおりです。

  1. 家族のことを想った遺言書を準備する
  2. 財産を残したい人を受取人にした生命保険契約をする
  3. 元気なうちから、一度家族で「相続」の話をする

相続をきっかけに家族がバラバラになるのはものすごく悲しいことです。天国にいる家族も地獄の気持ちでしょう。

対策は本当にちょっとしたことです。以下で紹介していきます。

対策① 家族のことを想った遺言書を準備する

自分の遺産は「家族が自由に分けてくれればそれでいい」と、家族を思いやって遺言書を準備しない方は多いです。

しかしこれは間違いです。「家族に対する想い」がある方こそ、遺言書を準備してください。

もちろん、遺言書の内容に明らかな偏りや贔屓があれば逆に争いの原因になります。大切なことは「心から家族を想う、愛のある遺言書」を作成することです。
気持ち悪いことを言っているようですが、「想いのこもった遺言書」であれば、遺族に伝わるものなのです。

なお、遺言書の作成を支援する専門家は「弁護士」や「司法書士」「行政書士」等がいますが、もし相続税の申告が必要な場合は相続専門の税理士に依頼するのがオススメです。
「相続専門の税理士」であれば二次相続まで見据え、相続税をできるだけ安くする遺産分割案も提案してくれるでしょう。

なお、遺言書は定められた形式・方式が守られていないと遺言書自体が無効になるため注意が必要です。

対策② 生命保険(終身保険)を利用する

生命保険の死亡保険金は遺産分割協議の対象外となるため、自分が死亡した際の保険金の受取人を、財産を残したい相手に設定することで、指定した相手に確実に財産を残すことができます。

「この人に確実に資金を残したい」という想いがあるなら、生命保険を利用することで遺言書を準備しなくても確実に財産を残すことができるのです。

なお、この記事のテーマではありませんが、生命保険の利用は相続税を「節税」する定番の相続税対策でもあります。

ただし、生命保険は商品によって相続対策に向き不向きがありますので、相続税対策も兼ねて実際に保険を選ぶ際には相続専門の税理士に話を聞くことがオススメです。

対策③ 家族で一度「相続」の話をする

「家族で相続の話をすること」は、このサイトで最も大切にしている相続税対策です。

何ら準備をしていない家族には、必ずと言っていいほど相続でトラブルが起こります。

現時点で、何ら相続対策が出来ていない方は、まずは最初の一歩として、家族で一度相続の話をしてみてください。財産がどのくらいあって、誰が相続人になるのかを家族で確認してみてください。

その際、専門の税理士も一緒に話ができればベストです。専門家を交えて話をすることで、自分の家族にどのくらいの相続税がかかるのか、どんなリスクがあるのか、これから何をするべきかが見えてくるはずです。

まとめ~遺産相続で揉めやすい家族とその対策~

以上、遺産相続で揉めやすい家族の紹介とその対策方法を解説させていただきました。

改めてポイントをまとめると

  • 「うちの家族に限って」という考えを捨てるべし
  • 遺産の大半が不動産の場合は事前に相談すべし
  • 遺産が少ないほうがむしろ揉めやすい
  • 家族構成によっても相続で揉めやすいかが左右される
  • 想いを込めた遺言書を準備することで相続争いは防止できる
  • 生命保険を利用すれば財産を残したい人に確実に資金が残せる
  • 家族で「相続」について話をすることが最も大切な相続税対策

いかがでしたでしょうか。
読んでいただければ「遺産相続争いがどのような家族に起きやすいのか」「争いを事前に防止する対策方法」がわかっていただけたと思います。

相続について考えることは、「家族の死」と向きあうことでもあります。

相続がきっかけで家族がバラバラになることもあれば、みんなで「相続」について考えることで家族への想いが深まることもあります。

現時点でなんら相続対策ができていない方や一歩目がうまく踏み出せない方は、一度専門の税理士に話を聞き、アドバイスをもらってからスタートすることがオススメです。

このサイトは「相続や税金について詳しくない方が、相続対策のスタートを切れるように」という目標を持って作成しています。

皆さまにとって少しでもお役に立てれば幸いです。