現代の我々の生活に浸透し今やなくてはならない生命保険・損害保険ですが、ではそのルーツはいったいどこにあるのでしょうか。保険の起源は古く「目には目を」のハンムラビ法典で知られる古バビロニア王国のあった古代オリエント時代にあるといいます。
保険のはじまり:海上保険
世界の初めての保険はこの頃に出来た簡易的な「海上保険」(参考:海上保険について)でした。当時の航海技術は今と比べようもなく低かったためリスクは高かったということは言うまでもありませんが、当時は暴風雨や嵐などの災害だけでなく、盗賊・海賊などのリスクもあり海上輸送等航海が無事に終わるという可能性は今よりも低かったことから海上保険が必要とされたのは歴史の必然だったのでしょう。
当時の海上保険の原型を元に、海から陸へ上り中世ヨーロッパにおいて現代の保険となんら変わりないさまざまな保険制度に発展していきます。たとえば現在の生命保険の起源は諸説あり、古代ローマの埋葬組合ともルネッサンス期の友愛組合とも17世紀頃のイギリスの牧師の互助会であるとも言われていますが、
互助会に近い制度:不公平さに若者が反発し衰退
いずれにしても今でいう保険と言うよりは互助会的な制度に近く、たとえば17世紀頃のイギリスの互助会では牧師たちが葬式代を賄うためにみんなで少しずつ持ち寄って積み立てていったのが始まりだと言います。
ただこの頃の保険料はみな一律であり、公平性の原則はなく多くの若年者が不公平さに異を唱えたため多くの互助会組織がその業を永く全うすることは出来ませんでしたが、その少し後に今の保険料算定の基礎となる死亡率に基づいた生命表が作成され、当時の互助会制度ではなしえなかった公平性の原則の基礎が17世紀末には完成しており、この頃世界で最初の生命保険会社エクイタブル保険会社が誕生しています。当時は死亡率を元に保険料を算出した富裕層向けの終身保険がポピュラーな商品だったといいます。
ロンドン大火がきっかけ:火災保険の礎
また現在の火災保険の原型は17世紀のイギリスで誕生しています。ロンドン大火をきっかけに火災保険の基礎となる部分が出来ましたが、この当時の保険料の算出方法が過去の火災発生率の統計と建物数から設定するなど割と近代的な保険数理的算出方法を採用していました。
また保険会社による消火活動や防火努力の推進などもこの頃より行っており、健全な保険業運営のためモラルハザードを排除しようとする働きはこの頃からありました。産業革命がおこると個人と企業という考え方が生まれ、それとともに保険が個人と企業とのあらゆる分野に保険がつけられるようになり、また当時の互助会ではカバーしきれないほど大規模となっていったためそれに伴い大規模な保険会社も誕生し、保険が大変身近なものになっていったのもこのあたりでした。
20世紀は自動車が普及:自動車保険が登場
今では損害保険の最もポピュラーな商品である自動車保険は20世紀に入り自動車が一般人にも普及し始めたあたりに誕生しました。建物の火災による損害をカバーするという火災保険とは異なり、自動車保険は自動車が普及する前では当然ですが自動車事故というものもなかったため自動車事故という今までにはない全く新しいリスクというものに対応して誕生したものでした。
このように保険は人類の歴史とともに成長してきたものであり、歴史の大きな事件や出来事の際にはリスクの考え方やいわゆるリスクヘッジの方法という概念が誕生してきました。
また既存のリスクや新しいリスクをカバーせんがためそれに伴って保険も誕生しさまざまな形に進化してきたため、今後も科学技術の進歩や時代の変化とともに新たなリスクが誕生すればそれに伴って新しい保険が誕生することかと思います。少しおおげさではあると思いますが、保険の歴史は人類の歴史であり、保険の歩みは人類の歩みではないかと考えます。