保険の税務特殊事例【ケース別にわかりやすく解説】

保険契約は金融商品である以上、その取扱いにおいて切っても切れない関係にあるのが税金の取り扱いです。扱いとして保険料控除の対象になるかどうか、課税されるのか非課税なのかといった一般論の部分の保険の税務とはすこし趣の違う、ややイレギュラーですが現実的に珍しくはないケースについて述べたいと思います。

契約者貸付金がある場合の税務:貸付額を控除した金額を相続

保険には「契約者貸付」という概念があります。たとえば急に資金が入用になった場合に加入している保険の解約返戻金の範囲内でお金を借りることが出来る制度です。保険会社に借金をしていることに変わりないので当然一定の利率で利息がつき返済義務を負います。ただ毎月決まった額を返済しないといけないということはなく、満期まで返済出来なければ満期保険金・解約返戻金より「貸付した金額+利息」が控除されるにすぎません。

さて、この契約者貸付がある状態で税務上問題となるのが相続税の問題です。

たとえば契約者がたとえば子供を保険金受取人とした500万円の学資保険をかけていたとします。500万円の保険金に対し200万円の貸付をし、その後契約者が死亡した場合は死亡保険金500万円から貸付の200万円を控除した300万円を相続により取得したものと見なされます。契約者貸付の分を控除した保険金を子供が受け取っているため、契約者貸付による債務はなかったものとされます。以上のようなケースにおいては貸付をしていようとも保険金と相殺されるので、相続人は亡くなった方の借金については考慮しなくてよいということです。

離婚後の生命保険料控除:保険料を支払った時の状況

生命保険料控除の対象となる契約の条件の一つに「保険金受取人が配偶者またはその他親族」とあります。ではもともと配偶者を保険金受取人として指定し保険料を支払い続けていた折、離婚した場合はどのような扱いとなるのでしょうか。ポイントとしては保険料を支払った時の状況によるということです。

たとえば7月の保険料を支払う前に離婚すれば1~6月までの保険料は控除の対象となり、7月以降は保険金受取人が指定されていない場合は生命保険料控除の対象から外れます。遅滞なく保険金受取人をその他親族に指定すれば問題なく控除の対象となります。

契約者以外の者が負担した保険料の生命保険料控除の適用について

契約者以外の方が保険料を支払うということはよくあるでしょう。よくあるのが妻が契約者ですが、夫の口座から保険料を引き落とししているというケースです。この場合には生命保険料控除は適用されるのかどうかということが問題になります。

生命保険料控除は基本的には契約者が保険料を支払うものという前提にたっており、このようなケースでも契約者が保険料を支払ったものとみなします。また贈与税が発生しそうですが、贈与税の課税関係が発生するポイントは保険金の支払時であり、保険料の支払時ではないので贈与税の問題にはなりません

参考:生命保険と贈与【生前贈与は子を思う親心】

法人が保険料を負担した場合の生命保険料控除の適用について

法人が従業員の福利厚生のために保険料を負担する保険に加入していた場合について生命保険料控除の適用はあるのでしょうか。法人が保険料を負担しているため法人について生命保険料控除の適用がありそうですがそうではなく、法人から従業員に保険料相当の利益がもたらされたものと考え給与課税が起こるため、従業員が保険料を支払ったものとみなされ従業員について生命保険料控除の適用があるのです。つまり1円も支払っていなくとも生命保険料控除の対象となります。

以上のように特殊なようでよくあるケースの税務事例をいくつか紹介いたしました。あまりなじみがないかもしれませんが、もしもの時に役立てればと思います。

           

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