相続税をもし払わなければどうなるのでしょうか?
相続税は誰もが払わなければならないのでしょうか?
払わなければバレるのでしょうか?バレたら逮捕されるのでしょうか?
また、相続税を払わなければならない人が気付かなかったり無視をしたらどうなるのでしょう?
このページは、本来相続税の申告と納付をしなければならない人が、申告をしなかったり遅れてしまった場合のペナルティ(罰則)について、また相続税をうっかり申告し忘れないために書いています。
★この記事は、すべて改正後の最新版(平成29年改正後)の情報です★
↓改正内容について記載した記事はコチラ↓
>>「改正!相続税の罰則が強化~平成29年1月から払う罰金が増えます~」
相続税の申告が必要な人とは?いくら遺産があれば払う必要があるのか?
相続した財産が一定金額に満たなければ、相続税の申告の必要はありません。まず、あなたが相続税を支払う必要があるのかどうかチェックしてみましょう。
では、いくら以上資産を持っていると相続税が発生するのでしょうか。
相続税は、遺産が次の式で計算した額(遺産に係る基礎控除額)以下である場合には課税されません。
遺産にかかる基礎控除額を超える場合に、その超える部分について課税されるのです。
遺産に係る基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
一般的な例として、配偶者と子どもが相続した場合の遺産に係る基礎控除額を示してみます。遺産が表の金額を超える場合は相続税が課税されるため、申告が必要です。
(平成27年税制改正後の数字です。)
相続人の構成 | 配偶者(子) のみ | 配偶者+ 子1人 | 配偶者+ 子2人 | 配偶者+ 子3人 | 配偶者+ 子4人 | 配偶者+ 子5人 |
法定相続人の数 | 1人 | 2人 | 3人 | 4人 | 5人 | 6人 |
遺産に係る 基礎控除額 | 3,600万円 | 4,200万円 | 4,800万円 | 5,400万円 | 6,000万円 | 6,600万円 |
たとえば相続人が子ども一人だった場合は、3600万円以上の資産を相続する場合に子どもは相続税を支払う必要があるというわけですね。
貯金が3600万円に満たないからと言って安心してはいけません。
相続する財産は貯金だけでなく、土地等の不動産、車、株、保険金等もあり、貯金が少なくても、相続税の支払義務が生じる可能性が高いので注意が必要です。全て把握していないと申告漏れになってしまいますよ。
参考:みなし相続財産とは~かんぽ生命の簡易保険にも相続税がかかります~
「配偶者の税額軽減制度」「小規模宅地の特例」の両方またはどちらかを利用した結果として、遺産額が基礎控除以下になった場合については「相続税はゼロ円である」ということを申告しなければなりません。
相続税を申告しなければバレる?バレない?
「相続税の申告をしなくても、税務署にバレないのでは?」
「むしろ申告をしなければ、税務署にバレるはずないのでは?」
と思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、税務署は確定申告のデータや固定資産税のデータを把握しており、そのデータから亡くなった際に相続税がかかりそうな人物を生前からリストアップしているのです。
そして、人が亡くなると市町村から税務署へ通知されるため、リストアップされている人物が亡くなったときに、その相続人から申告がない場合、税務署は相続人に連絡や督促をすることになります。
結局ところ、相続税は申告しなければ税務署にバレます。
相続税を払わない方法はありません。ただ、後述しますが、払う金額をできるだけ抑える方法はあります。
相続税は10カ月以内に申告・納付を終えなければいけない
相続税の申告と納付は期限が決まっており、相続の発生(亡くなったとき)から10カ月以内に申告も納付も終えなければなりません。
相続税の申告をしなければならない人が申告を無視したり、気が付かずに期限内に手続きをしなければ無申告となってしまいます。
このような場合、相続税の支払いだけではなく、さらにペナルティとして罰則的な税金が追加でかかってしまいます。
罰則① 延滞税~期限に遅れたら年14.6%~
相続税の納付期限(相続の発生から10カ月以内)に相続税の納付を行わなかった場合は、延滞税が課されます。(期限に遅れた理由は問われないのでしょっちゅうありますよ。。。)
具体的には、
- 相続税の申告と納付をするつもりであったが、期限に間に合わなかった場合
- 税務署に間違いを指摘され、追加の納付額があるとき
- 修正申告書を提出したが期限が過ぎており、追加の納付額があるとき
いずれの場合においても、期限の翌日から納付する日までの日数に応じた延滞税を納付しなければなりません。
延滞税の税率
(1)納付期限の翌日から2か月以内に納付した場合
⇒原則年7.3%
(2)納付期限の翌日から2か月を超えた場合
⇒年14.6%
相続税の罰則の中では軽い方ですが、「期限に遅れただけ」ということを考えるとかなり重いですね。。なお、延滞税は本税だけを対象としており、以下で紹介する罰則として加算される税に対しては課されません。
罰則② 無申告加算税~申告しなかったら納付額の20%~
正当な理由なく、相続税の申告期限(相続発生から10カ月以内)までに申告しなかった場合、無申告加算税が課税されます。
具体的には、
- 申告しなければならないと知らず、期限後に納付した場合
- 税務調査で指摘されてから指摘通りに納付した場合
申告せずに無視しており、指摘や調査を受けてから納付した場合が当てはまり、通常は延滞税も同時に課されものすごく高額になることもあります。
無申告加算税の税率
(1)申告期限までに申告せず、期限後に自主的に申告するとき
⇒納付税額の5%
(2)税務調査の通知が来た後、すぐに対応して申告するとき
⇒納付税額のうち50万円までの部分・・・その金額の10%(平成29年改正後)
納付税額のうち50万円を超える部分・・・その金額の15%(平成29年改正後)
(3)実際に税務調査を受け、指摘されてから申告するとき
⇒納付税額のうち50万円までの部分・・・その金額の15%
納付税額のうち50万円を超える部分・・・その金額の20%
延滞税は、遅れた期間にかかる税金を追加で支払いますが、無申告加算税は期間を問わず、本来の納付額に税率をかけて計算します。
罰則③ 過少申告加算税~少なく申告したら納付額の15%~
相続税の申告を無視したり、忘れていなくても罰則を受ける場合があります。
相続税の申告はしたもののその申告書の金額が不足していた場合、罰則として過少申告加算税が課されるのです。
過少申告加算税の税率
(1)自身で気がつき自主的に修正申告した場合
⇒0%
(2)税務調査の通知が来た後、すぐに対応して申告するとき
⇒納付税額のうち50万円までの部分・・・その金額の5%(平成29年改正後)
納付税額のうち50万円を超える部分・・・その金額の10%(平成29年改正後)
(3)実際に税務調査を受け、指摘されてから申告するとき
⇒納付税額のうち50万円までの部分・・・その金額の10%
納付税額のうち50万円を超える部分・・・その金額の15%
過少申告加算税は、相続税の申告・納付をしっかりと行ったつもりでいても、誤りを指摘されて課される場合があるので注意が必要です。修正申告した場合でも、期限に遅れていたら延滞税も同時に課されます。
罰則④ 重加算税~故意に隠したら納付額の40%~
相続税の納付額を減らすために、わざと納付額を隠したり嘘の申告をした場合には、罰則として重加算税が課されます。
重加算税の税率
(1)期限内に申告していた場合
⇒納付税額の35%
(2)それ以外の場合
⇒納付税額の40%
重加算税は、罰則②の無申告加算税や罰則③の過少申告加算税の代わりに、より重く課される税金であるためこれらと同時に課されることはありません。
罰則⑤ 逮捕~脱税として5年以下の懲役500万円以下の罰金~
期限を過ぎてからしぶしぶ納付すると上記のような罰則が課せられますが、それでも納付を拒否したり無視し続けると、「脱税」として逮捕され、5年以下の懲役または500万円以下の罰金、若しくはその両方が課されます。
相続税を支払わないという人の中には、「納得がいかない」「課税される意味がわからない」と言う方がいらっしゃいます。しかし、実際に脱税で懲役刑となった案件もあり、どんなに納得がいかなくても支払わないという選択肢はあり得ないと考えられます。
時効~相続税の納税義務は5年から7年で消滅します~
税務署からの請求を受けなかった場合、相続税を納税する義務は5年から7年で消滅します。
- 相続税の申告、納付の必要性を知らなかった場合・・・5年で納税義務は消滅
- 相続税の申告、納付の必要性を知っていた場合・・・7年で納税義務は消滅
つまり、相続開始(亡くなった日)から5年以上たって、実は相続税を支払わなければならなかったと知ったとしても既に相続税の納税義務は消滅しているため、支払う必要はありません。
しかし実際には、前述したように税務署が支払いの必要性を把握しているため、無申告のまま時効を迎えることはまずあり得ません。
相続税無申告 摘発事例
実際に毎年多くの人が相続税の無申告で摘発、追徴課税を支払っています。
参考①:近畿の相続税申告漏れ522億円…それでも過去10年で最低 大阪国税局調査
摘発されている人たちは自分が相続税の対象になっていると思っていない人も多く、相続の数年後に調査の対象となり、延滞税等で必要以上の税金を支払うことになっているのが実態です。
面倒くさがらずに相続税の申告は期限内にしっかりすることが後々のためになります。
相続税の申告はできるだけ早く税理士に相談すべき
この記事のタイトルは「相続税を払わなかったらバレル?どうなる?」ですから、読者の中には「相続税を払いたくない」「申告しようか迷っている」という方も多いでしょう。
しかし、上述した通り、相続税の無申告は税務署にバレていますので、申告をせずに税金を払わないという選択肢はあり得ません。
平成29年からは罰則も強化されており、罰則の対象とならないためにも適切な相続税申告をしましょう。
そして、適切な相続税申告をするためには、できるだけ早く専門の税理士に相談すべきです。
相続税の計算も申告書の作成も、素人が不備なく行うのは難しいため、自分で申告すると間違った相続税申告をするリスクが高まります。(もし少なく申告してしまったら上記の罰則③に該当)
さらに、自力で作成した場合は申告書の「税理士の署名捺印欄」が空白になります。「税理士の署名捺印欄」が空白の申告書は、税務署の目に留まりやすくチェックが厳しくなり、税務調査の対象にもなりやすいです。
また仮に税務調査の対象になった場合に、税務調査に立ち会ってくれる税理士がいないのはハイリスク過ぎます。税理士が立ち会わない税務調査では、家の中も隅々まで見られ、税務調査官の思いののままに根こそぎもっていかれるのがオチでしょう。
ただし、相続税の税理士選びには注意が必要
ただ、税理士の中でも相続を専門としている税理士に依頼しないと、過大な相続税を支払うことになりかねません。税理士なら誰でもいいわけではないのです。
「相続税が高過ぎると思ったら~相続専門税理士によるセカンドオピニオン~」の記事でも書いていますが、依頼する税理士によって相続税の金額が100万~1000万も違いが出ることは日常茶飯事です。
では、相続専門の税理士を探すにはどうすればいいか?プロの税理紹介エージェントの税理士ドットコムに依頼すれば安心です。入力フォームの相続税をチェックすれば、探したい地域から相続専門の税理士をスムーズに紹介してもらえます。
また、簡単な質問等でも気軽にできるよう、相談は無料となっております。プロに聞くことで疑問点や不安を効率よく解決できますよ。
相続税を払わなかったらバレる?どうなる? まとめ
以上、相続税の申告や納付をルール通りできなかった場合の罰則について紹介しました。
ポイントを再度まとめると以下のようになります。
- 相続税の申告や納付を無視しても税務署にバレる
- 申告が遅れると延滞税 年7.3%~14.6%(遅れれば遅れるほど多額に)
- 申告を知らなかったり無視をすると無申告加算税 納付額の5%~20%
- 過少に申告してしまうと過少申告加算税 納付額の0%~15%
- 隠したり嘘をつくと重加算税 納付額の35%~40%
- 脱税で逮捕されると懲役もあり
- 時効は存在するが、実質的にはまずあり得ない
- できるだけ早く相続専門税理士に相談することで相続税対策、相続のトラブルが回避でき有益
いかがでしたでしょうか?
情報として「時効」についても記載しましたが、実際に時効になる可能性は極めて低いですし、気付いた時やバレた時の罰則は上述のとおり、延滞税と無申告加算税が課されます。
結論としては、「相続税から逃げることはできないため、もし申告をしていない方がいれば少しでも早く適切な申告と納付が必要」ということになります。
できるだけ早めに税理士に相談して相続税の申告・納付をし、罰則の対象とならないことを願います。
早めに税理士に相談すれば申告書の作成だけではなく、有効な相続税対策も提案してくれるでしょう。税金を安く抑えることもできますし、相続のトラブルや罰則を回避できますので、早めの税理士への相談が賢明です。
以上、少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。