スイスフランショックで発生した個人投資家の損失理由が徐々に明らかに
スイス中銀のいきなりの介入終了宣言(参考:スイス中銀によるフラッシュクラッシュで危機的状況に陥ったFX業界)からかれこれ1ヶ月を経ることになりますが、このスイスフランの暴騰で国内の個人投資家も結構な追証を求められるケースがあったり損失を抱えるケースが発生していることが徐々にわかるようになってきています。
その決定的な要因は値飛びという現象によるものなのです。
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値飛びとはまさに値が飛ぶこと
通常FXで取引をしていると上昇するにしても下降するにしても常に通貨ペアの価格が連続して上がり下がりするように思われますが、実は値飛びという現象が起きることがあるのです。インターバンクから提示される金額の間が抜けることは急激な上昇や下降では起こりうることなのですが、それが猛烈な幅で起きてしまったのが1月15日の夜の状況であったといえます。
実際に起きた状況を検証
上の図をみていていただければお分かりの通り、通常は図の左側のような形でシームレスに相場の価格は下落していくことになります。したがって1月15日のユーロドルで言えば1.2を割り込んだ直後に並んでいた逆指値がついて価格はどんどん下落することになります。その過程でストップロスはついて損切りが実行され、国内業者では強制ロスカットも施行されて、少なくとも投入した証拠金内で損失は収まるはずでした。
ところが相場で実際に起きたのは一定の間がすっぽり抜け落ちる形で値飛びという状況でした。値飛びが起きますとすべての数字をなめて下落していきませんので、1.2に極めて近いところにおいておいた逆指値は殆どついたようですが1.19以下のストップロスや業者が設定する強制ロスカットのポイントはすべて素通りしてしまい、1.0に極めて近いところに始めて価格が現れ、その後はまた消えるという状況を示現してしまったのです。これにより値飛びをしてはじめてついた価格がロスカットやストップロスのポイントとなってしまったためその損失部分が追証として業者から求められるようになったというわけです。
NDD方式でなければインターバンクからのレートは関係ないはず
インターバンクからの値が出なかったためといわれると妙に納得した気分になりますが、これがNDD方式の口座であれば確かにインターバンクからの提示レートをすべて利用して価格を提示してくるわけですからある程度納得もいきますが、国内業者で原則固定を打ち出しているのは社内のディーリングデスクの調整によるものですから本来業者とインターバンクの間で値飛びが起きても設定した逆指値やストップロスのポイントで損切りが履行されるべきものとも言えるのです。ただこれまでもスリップというのは投資家のコストになってきていますから、こうした局面ではすべてのコストは投資家負担とされてしまうのです。
値飛びのような問題が起きた時のコストは業者もちという判例も
当然こうした状況にはいそうですかと簡単に言うことを聞く訳にはいかないと思う投資家がいるのは当然のことで過去にこれと同じような事例で値とびが起きて追証を求められたケースを争った裁判では訴えられた業者が負けたケースもあるようです。今回のスイスフランショックがそれにぴったり該当するのかどうかは分りませんが、確かにNDD方式以外であれば投資家がすべてかぶる必要があるのかどうかかなり問題になるケースということはできます。
国内の強制ロスカット付きの業者取引も安全ではないということ
殆どの国内投資家は、FXでは預け入れた証拠金を超えて損失が膨らむことはないと安心していますが、実はそうではないことがこの事例をみれば分ります。これと同様のことがたとえば月曜日の早朝の窓空けが起こるような時間帯に発生するだけでも同様に追証が発生することは日常的にありうるのです。ためしに取引約款を見てみますと、こうしたことを想定して万が一の場合には顧客負担となる旨がしっかり記載されています。
したがってこの事態は想定範囲内の顧客負担となることだけは覚えておく必要があります。
このような事態はそう多くあるわけではないものです。たとえば東日本大震災後の3月15日早朝6時前ぐらいの急激なドル円における円高でも値飛びは起きず、通常のようにストップロスやロスカットは履行されています。つまり通貨の流動性やそのスピードにもよるということなのです。いずれにしてもこういうリスクが起こることだけは常に頭の隅で人認識しておく必要があるということです。
追証の負担がないゼロカット方式が注目されている
スイスフラン急騰によるロスカットで多額の追証を請求される事件が起き、今、注目を浴びているのが、海外のFX会社が採用しているゼロカット方式というシステムです。
ゼロカット方式とは預けた証拠金以上の損失はFX業者が肩代わりしてくれて、顧客には請求しないという方式で、海外のFX会社では一般化しています。そのため、もしゼロカット方式の業者を使っていれば、スイスフランのような値とびがあったとしても、預けたお金以上の負担はなく、負債を背負うことはなかったのでしょう。
日本の金融商品取引のルールではゼロカット方式は使えないため、ゼロカット方式を使いたい場合は海外のFX口座を使うしかありません。海外のFX会社と聞くと、何かリスクがあるのではと不安に思うかと思いますが、有名な会社を使っていればそこまで心配はないと思います。ですが、中にはバイナリーオプション等の業者で悪徳業者も存在しているようです。
日本のFX会社でFXをしたいのであれば、レバレッジをかけすぎないことが大事ですね。せっかく、稼いできた利益も値とびで一気に吹き飛び借金まで背負わされる可能性もあります。こういった為替の大変動時でもロスカットされないくらいのレバレッジで運用することをおすすめします。