英国EU離脱決定で大荒れの金融市場、今後の見通し、投資すべきものとは?

英国のEU(欧州連合)残留か離脱かで注目されていた国民投票が、2016年6月23日に行なわれ、僅差ながら離脱派が勝利し、世界の金融市場は大荒れとなりました。

GDP(国内総生産)欧州第2位の英国が離脱することで、世界経済に与える影響は計り知れないものがあります。この結果を受け為替や株式市場はどう展開していくのか?今後の見通しと対策を探ります。

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(出典:ロイター)

楽観的見通しから一転、予想外の結果にパニックの金融市場

まず、これまでの離脱決定に至る経緯を振り返ってみましょう。EUによるさまざまな規制や破綻危機国家への金融支援に加え、移民問題への不満から英国民の間にEU離脱を望む声が多くなりました。

国民投票で離脱を選択する可能性が高いとの世論調査の結果が随時伝えられるなど流れは離脱に。英国政府も危機感を募らせ、残留派のキャメロン首相も対策に乗り出します。

離脱の危機が高まっていたところに、残留派だった女性議員の射殺事件が発生。

犯人への怒りから残留に同情的な見方が広がり、世論は残留派有利に傾きました。世界の金融市場も最終的には英国民は残留を選択するとの見方が大勢を占める流れに。

そこへ予想外の離脱派勝利という結果です。

市場はパニック状態となり、ドル、ユーロ、ポンド、株に売りが殺到しました。

まず口火を切ったのは為替相場で、ドル/円は一時99円台と100円割れを記録。結局終値では102円台に押し戻されているあたりにドルの底堅さも見えましたが、ユーロとポンドは底が見えない暴落と、危機的状況です。

一方、24日の東京株式市場は、1,286円33銭安と、リーマンショック時を超える大暴落となりました。値上がり銘柄がわずか6銘柄と、あのブラックマンデー時を下回る最低記録となったところに衝撃の大きさが垣間見えます。

そして、注目された24日のニューヨーク株式市場でも世界同時株安に歯止めが掛かるどころか、610.32ドル安と火に油を注ぐ結果に。英国EU離脱の影響の大さをまざまざと見せつける形となったのでした。

キャメロン首相辞任後の英国はどうなる?

さて、離脱派勝利で去就が注目されたキャメロン首相ですが、残留派の急先鋒としてアピールしてきただけに続投は難しく、早々に辞任の意向を固めました。どこぞの前都知事と違い、さすがの潔さは英国紳士を思わせるもの。

後任の首相が誰になるのかが交渉の行方にも影響を与えますが、国民投票実施1か月前の5月23日、英南部の都市チャンドラーズフォードで行なわれた演説で、キャメロン首相とともにEUに残留するメリットと、離脱するデメリットを力強くアピールしたオズボーン財務相が有力候補とされています。オズボーン氏ならキャメロン首相も引き継ぎがしやすいでしょう。

ただ、与党内でも共同で残留を主張してきたオズボーン氏が後任では相応しくないとの声もあり、離脱派のリーダー、ジョンソン前ロンドン市長や、メイ内相の二人が急浮上しています。ジョンソン市長は、首相への野心から国民投票を利用したとの批判を受けかねないことから、無難なメイ内相が選ばれる可能性もあります。

ジョンソン氏なら離脱への手続きが加速し、オズボーン、メイ両氏なら慎重に進めると見るのが流れからみて妥当です。

株やユーロの大暴騰を呼ぶ、逆転のシナリオとは?

では、英国がEUに残留する道はないのでしょうか。すでに離脱が決まっているのに、何を今さらと思われるかもしれませんが、失業者の増加、賃金の低下、金融資産の減少、輸入コスト高等、実際の経済的な影響が目の当たりになれば、英国民の意識が変化する可能性もあります。

ポイントになるのは二年間という移行期間です。

EU側の出方は意外に強硬で、すぐに離脱を表明するか、書面で提出するよう英国に迫りましたが、英政府は早急な離脱手続きは必要ないとの態度をとっています。これは少しでもEUから有利な交渉条件を引き出そうとの思惑もあるようです。

英国にとっては、EUが事前の交渉なしにいきなり離脱表明を迫ってきたのは誤算でしたが、国民投票には法的な拘束力はないため、英国にはいくつかの出方が可能になっています。

ひとつは交渉開始を遅らせることで、他の加盟国に離脱の動きが出るかを見極めながらEUに条件的な譲歩を迫る作戦。キャメロン首相の後任が決まる10月あたりが目途になります。

もうひとつは二年間ぎりぎりまで待って、実際的な経済への影響を分析しながら最終的な出方を決めるというもの。

つまり、国民投票で離脱を決めてはみたものの、経済的な影響があまりにも大きく、世論が再び残留に傾いてきたところで改めて国民投票を実施し、最終的には残留を選択するという逆転のシナリオです。

すでにポンドの暴落が起こり、海外企業の英国からの撤退の動きも一部で出ているので、あながちあり得ない話でもありません。そうなれば株もユーロももといた水準まで大暴騰する可能性を秘めています。可能性としては低くても、一応想定しておいた方が良いでしょう。

金融市場大混乱の今、比較的安全有利な投資先は?

では、このような金融情勢の中で、投資できる商品はあるのでしょうか。静観してキャッシュポジションを高めておくのも一法ですが、どうしても資金を運用したい方には、次の3つが比較的安全有利な投資先としておすすめです。

【FX】トルコリラ/円でスワップ金利を稼ぐ

ドルやユーロの乱高下を利用して稼ぐことも可能ですが、火中の栗を拾うのは火傷を負うリスクが高く、敬遠したい方もおられるでしょう。そこでおすすめなのが、高金利通貨と円を組み合わせてスワップ金利を稼ぐ投資法です。

中では比較的値動きが安定しているトルコリラ/円がおすすめ。トルコはEUに加盟していないため、今回の騒動でも直接的な影響はあまり受けていません。トルコリラの政策金利は世界的な低金利が続く中でも7.5%と、FX取引を扱っている通貨の中では断トツの高金利です。

ただし、スワップポイントで金利差を稼げるのは、トルコリラを買って円を売る、買いポジションの場合のみですので注意が必要です(円買い、トルコリラ売りだとスワップポイントの支払いが生じます)。

【株】高配当利回り株で配当と値上がり益の両面を狙う

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▲3197 すかいらーくチャート(出典:SBI証券、以下同)

株式では、今回の暴落によって増えている3%以上の高配当利回り株への投資がおすすめです。

自動車・電気・銀行株など英国離脱の影響が大きい業種には手を出せませんが、本来影響が少ないはずの内需株までが連動安になっているので、狙い目といえます。

例えば、すかいらーく(東証1部・証券コード3197)の2015年12月期の年間配当金は1株38円。これを2016年6月27日現在の株価1,294円で割った配当利回りは2.9%と3%近い高利回りになっています。

これに100株保有の場合、年間2,000円の株主優待券が付きますので、総合利回りは4.4%に跳ね上がります。もちろん業績が悪化して減配となれば利回りは変わってきますが、同社の配当性向は約41%と、配当余力が大きいことから当面減配の不安は少ないといえます。

業績は過去最高益更新と絶好調。内需株のため英国EU離脱の直接的な影響も受けず、もともと低価格のため不況時にも強いと、いいことずくめの割安優良株です。配当と株主優待を楽しみながら、相場急騰時には売却益も狙える両面作戦が可能な銘柄としておすすめです。

【金】純金積み立てで有事に備える

FXや株で個別の通貨や銘柄に投資するのは不安という方には、金への投資はいかがでしょうか。金は債権や通貨と違って発行体が存在しないため、世界共通の価値を有します。

ポンドのような局地的な通貨であればEU離脱の影響をモロに受けますが、金はギリシャが破綻危機に陥ろうが、英国が離脱しようが直接的な影響はありません。「有事に強い金」と呼ばれているのはそのためです。

といって、金にも相場がある以上一気に大量の買い付けを行なうのは危険です。そこで、相場に左右されず、一定の金額を投資する「純金積み立て」が有利になります。相場が高い時には少なく買い、安い時には多く買う「ドルコスト平均法」という手法を応用した投資法です。将来、EU危機がさらに進んだ場合でも、安定して資産を増やせる有事に強い投資法といえ、今のような局面では一考の価値ありです。

暴落明けの市場は日米で明暗、神経質な展開続く

大暴落から明けた、6月27日の東京株式市場は、英国が直ちに離脱を申請するわけではないとの見方から、357円19銭高の15,309円21銭と大幅に反発しました。ただ、単なる自律反発や買戻しの域を出ないとの冷めた見方もあり、買い勢力に力不足の感は否めません。

一方で、ニューヨーク株式市場は260.51ドル安の17,140.24ドルと大幅続落。日米で対照的な動きとなりました。これは前日の暴落幅が東京の方が大きかったことによる、テクニカルな要因と思われます。

このほか、英国、ドイツ、フランスの株式市場も大幅に続落しており、株安の連鎖が止まらない状況です。底値の目途は、今後フランス、デンマークで離脱の連鎖が起こるかどうかにかかっています。

両国で国民投票が実施され、離脱派が勝利した場合は、東京市場で14,000円、ニューヨーク市場で15,000ドル割れの場面も覚悟しなければならないでしょう。離脱ドミノが起こらず、英国の離脱のみで収まれば緩やかに相場は回復に向かうはずです。

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▲ドル/円チャート

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▲ユーロ/円チャート

為替も依然として円買いの勢いは続き、各国通貨は円に対して全面安の展開となっています。ただ、さすがにドル/円は両国のファンダメンタルズの比較から売られすぎの感があり、99円で当面の底を打ったとみることもできます。

ユーロに関しては、今後の英国とEUの交渉の行方にもよりますが、100円大台割れという歴史的な安値を付ける場面も十分にありえます。

今後世界の金融市場は、二年後の正式離脱に向けた英国とEUの交渉の行方を見守りながら、神経質な展開が続きそうです。

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