今回は、実際に相続税対策が成功した方の体験談を紹介します。
体験者のお父様は、ご自身が健康なうちから、家族と税理士を交えて相続の話合いをなされました。
相続税対策というと「節税」という言葉が真っ先に思い浮かぶかもしませんが、この体験談は高度な節税テクニック等は一切出てきません。
「節税」以上に大切なことは、まず「生前に家族で相続について話し合う」ことだということを教えてくれる内容になっております。
ぜひご一読ください。
相続が心配になり税理士に相談
我が家は毎年、1月2日に家族が集まります。
父母と私の家族(妻と子ども2人)と弟家族の3世帯ですが、それぞれが家族を持ってから毎年の恒例となっています。
数年前の正月、酔った父が「そろそろ相続について考えないとなあ」という話を始めました。
我が家はとても裕福な家庭ではありませんでしたが、父の退職金等で建てた小さなアパートが1軒と自宅があります。
父はこの2つの不動産について、誰がもらうのか決めておきたいと言うのです。
家族としては亡くなった時に考えたらいいんじゃないかと思ったのが正直なところでしたが、父の意思は固く、早めに専門家に相談しておきたいとのことでした。
相続に関しては家族全員知識不足で、専門家といっても誰に相談すればいいかわからなかったのですが、ネットで検索したところ税理士に依頼すればいいことが分かりました。ちょうど私の友人で公認会計士をしている者がいたので、その友人から相続に強い税理士さんを紹介してもらうことになりました。
預金がポロポロと
さっそく紹介してもらった税理士さんに相談し、父の財産(自宅とビル、そして預貯金)について簡単に話したところ、まず「相続税の試算をしてみましょう」とのことでした。
知識不足で恥ずかしいのですが、相続税は資産家が払うもので我が家には関係のないものだと思っていました。驚きを感じながらも、相続税の試算について依頼することにしました。
試算に当たっては、まず保有資産の洗い出しが必要とのことでしたので、両親に財産となりそうなものを確認しました
自宅とビルはわかっていたので、あとは預貯金です。両親の貯金等は全く把握していなかったのですが、金庫をあけると昔に預けてそのままの定期預金などが次々と出てきました。倹約家だった両親に脱帽するとともに漠然と相続税の不安が出てきました。
相続税の額を見てビックリ
税理士さんには必要な資料や内容を伝え、約1か月後、家族を集めて試算内容を報告して頂きました。正直、相続税を払うことになっても数十万円程度だろうと考えていた私たち家族はとても驚くこととなりました。
なんと、相続税額が約600万円だったのです。
こんなに相続税額が増えてしまったのは、不動産に原因がありました。自宅もアパートも、先祖代々受け継いできた土地の上に建っているもので、建物もかなりボロボロになっています。そんな状況なので、アパートの入居率も低く財産としての価値はないと考えていたのですが、駅から近いということで土地の価値が高くなってしまうとのことでした。
税理士からの提案
家族としてはこんなに相続税を払うことになるとは考えていなかったので、なんとかできないかと税理士さんに尋ねました。
税理士さんの提案は次の2つでした。
- 自宅部分を改築して2世帯住宅にする
- アパートを売却し現金化する
①については、同居している者の相続については有利な特例があるようで、(小規模宅地の特例といいます)それを利用して節税を行うということでした。ただ、私も弟家族も子どもがおり、学校の関係もあるので難しいということになりました。
②は、価値の高いアパートの土地を売却して、相続税が発生しても大丈夫なように現金化しておきましょうとの提案でした。現状、アパートは赤字経営で修理費などを考えると手放すことは合理的ではありましたが、先祖代々の土地ということで両親も頭を悩ませていたようでした。
売却して両親の老後生活資金へ
税理士さんからの提案からさらに2か月、両親はアパートを売却することを決断しました。アパートを売却し、その資金を使って夫婦2人で残った老後生活を楽しもうという結論に至ったようです。
アパートについては、駅から近いということもあり、すぐ買い手が見つかりました。両親はアパートの赤字経営と相続対策の不安が解消されたからか、アパートの売却後、羽を伸ばしたようにいろんな場所に旅行に行って楽しんでいます。
相続は亡くなってから考えるものというイメージがありましたが、決してそんなことはありませんでした。生前に相続について考え、対策をすることで不安なく老後の生活を充実させることができます。
両親は毎回旅行のお土産を届けてくれるのですが、その時の2人の笑顔を見ると本当によかったなと感じます。
考察~体験談から考える相続税対策~
いかがでしたでしょうか。
この体験者の素晴らしいところは以下の2つに尽きると思います。
- 生前から税理士を交えて相続の相談をしたこと
- 節税にこだわりすぎず、自分たち家族に適した対策をしたこと
もし、体験者のお父様が亡くなった後に、初めて相続税が600万円かかると知ったらどうだったでしょうか。。。
その時点でアパートが売れなかったらどうしていたのでしょうか。。。
早めから税理士を交えて家族で相続について話合ったことで、自分たちの家族に驚くほど相続税がかかることを知れました。そして相続税の納税資金を準備するとともに、両親の老後の生活資金も得ることができました。
二世帯住宅にしてまで「節税」にこだわるのではなく、自分たちの家族に適した判断をした、まさに相続税対策の成功例と言えますね。
相続税対策といえば「節税」という言葉が真っ先に思い浮かぶかもしれませんが、それ以上に大切なことは「できるだけ早くから、税理士も交えて家族で相続について話をすること」と考えております。
ぜひ参考にしていただければと思います。