子や孫への住宅購入資金の贈与は非課税!相続税の節税になります

この記事は、すべて最新版(平成28年11月28日税制改正版)の情報です

これからマイホームを購入する予定の方はいませんか?

または、子どもや孫がこれからマイホームを購入される方はいませんか?

この記事は、そのような方に向けて「住宅購入資金の贈与」について書いています。

住宅を購入するための資金を「子どもや孫に」一括で贈与しても、条件によって3,000万円まで贈与税がかからない特例が存在するのです。この特例は平成28年11月28日の改正により適用期限が大幅に延びました。

制度をうまく利用すれば子や孫を喜ばせるだけでなく、実は相続税を節税することができます。

この記事を読めば、初めての方でも制度の内容と実務上のポイントがはっきりわかるように紹介していきます。

ぜひ参考にしてください。

「生前贈与」と「相続税の節税」の関係~前提知識として~

まずは、「贈与」が「相続税の節税」になるという関係について簡単に紹介します。

相続税は、人が死亡した際に、死亡した人の財産(遺産)を引き継いだ人が支払う税金です。もちろん、遺産が大きいほど相続税の金額も大きくなります。

そこで、生きている内に財産をできるだけ贈与しておき、死亡時点での財産(遺産)を少なくすることで、相続税を節税する方法が考えられます。これを「生前贈与」といいます。(単純ですね!)

ところが「贈与」をするとこんどは贈与された人に「贈与税」がかかってしまいます。贈与税は1年間に贈与された合計額に対して課税されるので、毎年の贈与額を調整しなければなりません。

一括で大金を子どもや孫に贈与をすると、相続税の節税額以上に贈与税がかかってしまうため、通算すると損をしてしまうことになるのです。

参考 贈与税の計算方法

贈与税は、1年間に受けた贈与の額が110万円以上の場合に贈与を受けた人が払わなければならない税金です。

贈与税の計算方法は、以下の速算表を利用し次の計算式で求めます。

贈与税額の求め方
(1年間に贈与された合計額 - 基礎控除額110万円) × 税率 - 控除額
贈与税の速算表
基礎控除額1人1年間に110万円
税額計算110万円控除後の贈与財産額税率控除額
200万円以下10%
300万円以下
(400万円以下)
15%10万円
(10万円)
400万円以下
(600万円以下)
20%25万円
(30万円)
600万円以下
(1,000万円以下)
30%65万円
(90万円)
1,000万円以下
(1,500万円以下)
40%125万円
(190万円)
1,500万円以下
(3,000万円以下)
45%175万円
(265万円)
3,500万円以下
(4,500万円以下)
50%250万円
(415万円)
3,000万円超
(4,500万円超)
55%400万円
(640万円)
贈与税の下段のカッコ書きは「20歳以上の者が直系尊属(両親、祖父母、曾祖父母)から贈与を受けた場合」、上段は「それ以外の場合」

【例】3,000万円(基礎控除後2,890万円)の贈与を孫に行う場合の贈与税額

孫が20歳未満の場合(上段)
⇒(3,000万円 - 110 万円) × 50% - 250万円 = 1,195万円 と計算され、孫に1,195万円の贈与税が課されます。

孫が20歳以上の場合(下段カッコ書き)
⇒(3,000万円 - 110 万円)  ×45% - 265万円 =1,035.5万円 と計算され、孫に1,035.5万円の贈与税が課されます。

3,000万円を一括で贈与すると1,000万強の贈与税がかかってしまうのです。高いですね。。。

特例!住宅購入資金であれば贈与税は一定金額まで非課税

上述したように、110万円を超える贈与には贈与税がかかり、さらに金額を増やすと税率が上がるため、相続税を節税するためには「何年もかけて、毎年少しずつコツコツ」生前贈与することが定番となっています。

ところが、「一定の要件」を満たした場合、子どもや孫が住宅を取得する資金の贈与であれば「一括で贈与」しても贈与税がかからない特例が存在するのです。

住宅購入資金一括贈与の非課税制度の概要

子どもまたは孫が、父母または祖父母から将来の住宅の取得・新築・増築等の資金を前倒しで一括贈与を受けた場合、以下の金額までは贈与税がかかりません。

住宅等取得にかかる消費税が8%の場合

住宅の新築等の契約締結日
省エネ等住宅の場合
省エネ等住宅でない場合
平成27年12月31まで
1,500万円
1,000万円
平成28年1月1日~平成32年3月31日
1,200万円
700万円
平成32年4月1日~平成33年3月31日
1,000万円
500万円
平成33年4月1日~平成33年12月31日
800万円
300万円

住宅等取得にかかる消費税が10%の場合

住宅の新築等の契約締結日
省エネ等住宅の場合
省エネ等住宅でない場合
平成31年4月1日~平成32年3月31日
3,000万円
2,500万円
平成32年4月1日~平成33年3月31日
1,500万円
1,000万円
平成33年4月1日~平成33年12月31日
1,200万円
700万円
(なお、消費税が10%に改正される時期は「平成31年10月」と予定されております。)

住宅取得資金を子どもや孫に贈与するメリット

本来、3,000万円を一括贈与すると1,000万強の贈与税がかかることは計算例で示しましたね。
上の表を見てください。特例を利用しタイミングよく住宅を取得すると、その資金は最大3,000万円までは贈与税が1円もかからず贈与できるのです。

つまり、1,000万強の贈与税が浮くということです。

もちろん3,000万円贈与することで相続財産(遺産)がその分減り、相続税の節税になります。相続税の税率は10%~55%ですので仮に30%と仮定すると3,000万円 × 30% = 900万円

900万円相続税の節税ができるのです。

贈与を受けた子どもや孫は、住宅を購入する頭金を得ることで銀行からの借入金額が減り、返済額や利息の負担が減ります。

制度を利用すればまさに、子どもや孫を喜ばせながら相続税を大きく節税することができるのです。

より節税効果を上げるための4つのポイント

①「孫」に贈与するほうが節税効果あり

通常財産は「親から子どもへ」、「子どもから孫へ」移転し、その都度相続税がかかるものです。孫へ直接財産を贈与することで、一世代とばして財産を移転さすことができ、結果として相続税を1回免れることになります。その意味で、子どもに贈与する以上に孫へ贈与する方が節税効果は高いです。

②住宅取得の契約するタイミングは平成32年3月31日までがベスト

住宅の新築等の契約日が遅くなればなるほど非課税となる限度額が減ってしまい、平成34年以降は特例の期間が終わってしまうので、契約するなら早めがオススメです。
また、消費税が上がってから住宅を取得するのであれば「平成31年10月~平成32年3月」に契約するのが節税効果は最も高いです。(上の表参照)

③110万円の基礎控除は別途使える

通常の贈与は1年に110万円までの贈与には贈与税がかかりません。(贈与税の基礎控除)
住宅購入資金の非課税制度を利用しても通常の「贈与税の基礎控除」は存在しているため、正確には1年で最大3,110万円までの贈与が非課税で贈与できます。

④住宅を夫婦共有名義にすれば実質的に非課税枠が2倍に

住宅購入資金の贈与税の非課税制度は、購入する住宅の名義を夫婦共有にすれば、夫婦それぞれが非課税制度を利用することができます。
夫婦それぞれが親(または祖父母)から贈与を受けた場合、それぞれ非課税制度が適用できるため実質非課税枠は2倍になります。

贈与を受ける子どもや孫の要件

「住宅購入資金一括贈与の非課税制度」の適用を受けるためには一定の要件を満たす必要があります。「贈与を受ける人」は以下の要件を満たさなければなりません。

贈与を受ける人の要件

  • 贈与をする人の「子どもまたは孫」であること
  • 贈与を受けた年の1月1日において、20 歳以上であること
  • 贈与を受けたときに日本に住所があること
  • 贈与を受けた年の合計所得金額が 2,000 万円以下であること
  • 贈与を受けた年の翌年3月 15 日までに、贈与された資金全額を充てて住宅を購入すること
  • 住宅を親族等の特別の関係者から買っていないこと

未成年の子どもや孫には適用できない点や、2,000万円以上稼いでいる子どもや孫には適用できない点に注意が必要です。

対象となる住宅等の要件

「住宅購入資金一括贈与の非課税制度」の適用を受ける「住宅購入資金」には、新しく取得する住宅の「土地」も含まれます。制度適用の要件やポイントは以下のとおりです。

住宅の購入、新築、増改築をした場合の要件

  • 家屋の床面積が50㎡以上240㎡以下であること
  • その家屋の床面積の2分の1以上が贈与を受けた人の居住に使われること
  • 住宅用の家屋が耐震基準を満たしていること
  • 中古住宅の場合、20年以内に建築されていること(鉄骨、鉄筋コンクリート、鉄筋鉄骨コンクリート造なら25年)
  • 増改築の場合、工事費用が100万円以上であること

省エネ等住宅と認められるには

新築した住宅が「省エネ等住宅」と認められれば、贈与の非課税枠が大きくなります(上の表参照)

省エネ等住宅と認められるためには、次の6つのうちどれかを準備し贈与税の申告書に添付する必要があります。

  1. 住宅性能証明書
  2. 建設住宅性能評価書の写し
  3. 長期優良住宅建築等計画の認定通知書 の写しプラス住宅用家屋証明書
  4. 認定長期優良住宅建築証明書
  5. 低炭素建築物新築等計画認定通知書等の写しプラス住宅用家屋証明書
  6. 認定低炭素住宅建築証明書

住宅購入資金の贈与税の非課税にするための「手続」と「必要書類」

この非課税制度を利用した場合、贈与税が例え0円であっても、贈与税の申告書と添付 書類などを提出しなければなりません。(贈与税が0円であることを申告しなければならないのです。)

なお、贈与税の申告期間は贈与を受けた年の翌年2月1日から3月 15 日までです。

必要書類

  • 贈与税の申告書第一票
  • 贈与税の申告書第一票の二(住宅取得等資金の非課税の計算明細書)
  • 住民票の写し
  • 戸籍謄本
  • 住宅購入、新築、増改築等の契約書の写し
  • 住宅の登記事項証明書
  • 省エネ住宅等の場合、上で紹介した6つの証明書のうち1つ

実際に贈与を実施する前には税理士に相談することがオススメ

上記の書類を集めて、贈与税の申告書を作成することは自力でもできると思いますが、「住宅購入資金の贈与税の非課税」を利用する場合は専門の税理士に相談するほうが賢明です。

なぜなら「実際は要件を満たしていない」というのが最大のリスクだからです。

特例により非課税で3,000万円贈与したつもりでいても、実際には要件を満たしていなければ1,000万強の贈与税がかかってしまい大変です。

また、自力で作成した場合の申告書は「税理士の署名捺印欄」が空白になるため、税務署のチェックが厳しくなり、税務調査の対象にもなりやすいのです。

住宅購入資金の贈与税の非課税を利用する場合は、贈与をする計画段階で必ず税理士に相談し、適切な助言のもと贈与を行うことがおすすめです。

ただ、税理士の中でも贈与税に強い税理士に相談しなければ、十分な節税効果を得られない可能性があります。

贈与に強い税理士等、分野別に特化した税理士は税理士ドットコムで相談を受けるのがおすすめです。

贈与、相続、会社設立など、目的別に特化した専門家を紹介してくれますよ。

まとめ~住宅購入資金の贈与で相続税の節税~

以上、住宅購入資金の贈与の概要と、非課税制度を利用した相続税対策について紹介しました。

あらためてポイントをまとめると、

  • 子どもや孫が住宅を購入する資金は一定金額まで非課税で贈与できる特例あり
  • 子どもや孫へ住宅購入資金を贈与すると相続税が大きく節税できる
  • 子どもや孫は20歳以上で年収が2,000万円以下等、一定の条件を満たす必要あり
  • 購入や新築する住宅が「省エネ等住宅」に該当するとよりお得
  • 贈与税が0円でも贈与税の申告書を提出しなければならない
  • 実際に制度を利用する際には税理士に相談することが賢明

いかがでしたでしょうか。
読んでいただければ、「住宅購入資金の贈与の非課税」制度の概要とポイントがわかっていただけたかと思います。

「一括で」贈与できるという点は最大のメリットです。高齢や病気がちなど、長期にわたって生前贈与できるか心配な方にでも利用しやすい相続税対策です。

将来、相続税を負担するのは残された家族です。
住宅を取得する資金を贈与することで将来の相続税をも節税でき、家族の負担を減らすことができるのです。

子どもや孫がこれから住宅を購入する予定であれば、早めに税理士に相談して「家族が喜ぶ相続税対策」を実施していただければと思います。

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