退職準備保険【生命保険を活用した退職金の準備】

退職金とは退職した労働者に対して支払われるお金のことで、長年の勤務の功労の意味合いがあったり賃金の後払いの意味合いがあったりしますが、日本においては年功序列制度・終身雇用制度の産物として長年慣行的に執り行われてきた制度です。

退職金の支払いについては法的には企業が退職金を準備しなければならない旨の規定は明文化されておらず、退職金に関する規定を設けないことは違法ではありませんが、日本においては慣行的に行われてきた制度の一環として企業が退職金を準備するのは当然のことであるような風習があります。

もちろん退職金制度や就業規則が明文化されていた場合は企業は退職金を支払う義務があり、労働者においては請求する固有の権利があるものと解されます。

退職準備保険とは:生命保険を活用して退職金を準備する

退職金に関する規定を導入している企業にとっては役職員の退職金をどのようにして準備するかということは意外にも企業の経営を左右するほどの懸案事項であると考えます。退職金を準備する方法はいくつもあり規模によって異なりますが、大企業であれば確定拠出年金や確定給付企業年金といった制度を活用し自前での社内準備を行っていたり、中小になると中小企業退職金制度や特定業種退職金制度という制度を活用していたりしていますが、しばしば退職金準備において生命保険を活用することがあります。

さて標題になっている「退職準備保険」ですが、こういった名称の保険商品は存在しません。しかしながら生命保険を活用した退職金の準備というのはポピュラーなものになってきています。そこで今回はその生命保険を活用した退職金準備について述べていきたいと思います。

生命保険を活用した退職金準備:解約返戻金を退職金、万が一の場合は弔慰金

企業の退職金の準備の方法の一つとして生命保険が活用されるケースが多いことは全十した通りですが、一体どんな保険商品をどのようにして活用し、生命保険を活用することのメリットはどういったものがあるのでしょうか。

退職金準備を行う場合利用される生命保険としては養老保険などの生死混合型保険や積立型の医療保険等(主にがん保険)があります。運用方法としては上記の生命保険等に加入するのですが、企業を契約者とし従業員を被保険者とした保険契約を締結します。月々の保険料はあくまで企業が支払うわけです。

そして従業員が退職する際にその保険を解約し、解約返戻金を退職金として支払います。従業員に万が一のことがあった場合は死亡保険金を弔慰金という形で支払うことができ、退職金だけでなく弔慰金という福利厚生にもなるので退職金の準備に生命保険はうってつけであると思います。

さらにこの生命保険契約による退職金準備のメリットとして一定の条件のもと保険料の一部を損金算入することが出来る点があげられます。企業が自前で積み立てた場合の内部留保は損金として計上出来ないのに対し、生命保険を従業員などの福利厚生として掛けた場合は損金算入が可能です。(国税庁通達による)

つまり退職金の準備をしながらも節税が可能であるという点は経営者にとってはありがたい商品であると思います。
ただ、先ほども述べたとおり保険料を損金算入するためには一定の条件が必要であり
① 契約者が法人であること
② 従業員を差別なく万遍なく加入させること

の2つの条件が必須となってきます。また企業経営においてはリスクはつきものなのですが、生命保険契約は比較的流動性の高い契約なので、仮に万が一資金調達をせざるを得ないような事態がおこった場合に、契約者貸付制度を利用することで運転資金を迅速に確保することが出来ます。

もちろん生命保険なので早期の解約は元本割れを起こす可能性があったり、現金にて長期に保険料を支払うため資金の蓄積が必要であったりとデメリットももちろんあります。しかしながら生命保険は身近な金融商品ではありますが、たとえば企業にとってはこういった退職金を準備する有効な方法として活用されているのです。

参考:生命保険を用いた節税【合法的な節税対策】

           

お役に立てましたらシェアお願いいたしますm(__)m