スワップ狙いのトルコリラの見通し【一旦様子見が懸命、戦争状態一歩手前】
2015/11/03
エルドアン政権が連立内閣を樹立できないことから、またしても総選挙という混沌とした政治情勢のトルコですが、日本では詳細が報道されないものの、ISISからイスタンブールを狙う声明が登場したりして、実態は我々が考えている以上のリスクを高めていることがわかってきています。
正直スワップ狙いがどうのなどといっていられる状態が今のトルコリラの現状で、トルコリラ円ならもう一段以上の下落、ドルトルコリラは既に3.0をぶち抜く勢いで、トルコリラ安の動きは止まらない状態です。
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シリアとの国境から自国内でのISISとの戦闘も?
イギリス政府などは英国人がトルコに行くのは危ないとしてかなり大きな警告を発するようになっていますし、実際相当国内でも混乱が始まっているようです。
兵士が目だし帽をかぶってその奥で海水浴をしているというのも実に不思議な光景ですが、国内はいよいよ混乱してきているようで、いずれにしてもトルコリラにいいところはまったくないのが実情です。
改めて地図を見直してみると第一級の地政学リスク国
トルコというと欧州と地続きで、最もEU加盟に近い国といったゆるい印象しかない日本人が多いことと思いますが、地図をみるとシリアと隣国であり、となりはイラク、イランとも接しており、その上でグルジアを越えればそこはロシアというかなり微妙な位置にあることがわかります。
またISISがターゲットにしているとされるイスタンブールはもっとも欧州圏に近いところに位置しますので、ここが陥落したりすればギリシャにISISが攻め込んでくるという悪夢もありうるのです。エルドアンの妙な政権がどうのと言っているような事態ではなくなっていることがよくわかります。
ドルトルコリラは1も2もなく劇下げ祭り開催中 暴落
トルコリラ円に比べてまだ実需のともなうドルトルコリラはリーマンショック後で最大のドル高トルコリラ安を演じており、この流れはさらに続きそうな気配となっています。確かに通常の先進国の通貨よりも劇的に高い金利は魅力的ではありますが、今買うタイミングではまったくないことがわかります。
9月に米国が利上げをするかどうかは依然不透明ではありますが、もし利上げが起きればさらにトルコリラ売りが強まりますので、今の状況でレベル感からトルコリラを買うのはかなり危険といえそうな状況に陥っています。
トルコリラ円では個人投資家の投げが価格下落を加速
トルコリラ円は、こちらもここ7年間でもっとも底値に近づいていますが、40円を切るかどうかのあたりでRSIが30を下回るようなことになったからといって本当に戻るかどうかはまったくわからない状態です。
なにより足元の下落加速は個人投資家の投げ、つまり国内のスワップ狙いの投資家が一斉に投げ始めていることに起因するもので、売りが強いといってもストップロス売りばかりなのでショートカバーもまともに出ない流動性の低さが続いています。
これまでは底値で買ってスワップで一儲けというのがスキームとして成立していましたが、ちょっとこのタイミングでそのような安易なことは考えないほうがいい状況となっているのは間違いないようです。
米国の利上げが9月にあれば、そのあたりが底になる可能性がありますが、イスタンブールで本当に戦闘になれば事態はさらに悪化することが見込まれ、まだまだ安心して買える状況ではありません。トルコリラにポジションをもたれている方はぜひ欧州系のメディアやロイターの英語サイトをチェックして最新情報をとられることをお勧めします。国内のメディアではまったくトルコ情勢はよくわからないのが現状ですから十分な現状認識をされることが肝要です。