原油価格とFXとの関係、2017年以降の見通しについて
日本の新聞で「原油価格」という場合、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)先物価格(米国)、BC(ブレント原油)先物価格(イギリス)、東京原油価格の3つが主に取り上げられています。
他にも幾つか指標はあるのですが、あまり気にする必要はないでしょう。
このなかで、CFDでも多く取引され、またFXにも影響があるのはWTIの価格です。
例えば、WTI(単位はドル/バーレル「1バーレル約160リットル」)は現在50ドル/バーレルあたりでしょうか。
だとすると、1ドル=112円とすると、5600円/バーレル=5600円/160リットルです。ですから1リットルは5600/160=35で35円/リットルになる計算です。
東京原油の単位は”円/キロリットル”ですから、×1000で計算出来ます。
=35000円/キロリットル
先週末の東京原油は35750円/キロリットルでしたから、ほぼ同じ価格になりますね。
蛇足ですが、原油を精製してガソリンとして売る場合、種々のコストが30円前後かかり、54円ほどの税金が加算されて販売されるそうです。
ですから、WTI=50ドルの場合の1リットルの原油価格である35円/リットルに前記のコストと税金を足すと
35+30+54=119円
ガソリン1リットル119円
近所のガソリンスタンドでの価格と差違はいかがでしょうか?
原油価格と株価、為替との関係について
と、いうわけで、身近なガソリンの値段には影響があることがわかった「原油価格」ですが、FXをやる上での影響はどのくらいのものなのでしょうか?
まずはここ10年ほどのWTI先物価格の変化を表で見てみましょう。
表①
やはり2008年のリーマンショック後に激落ちしてますね。
ショック直後に147ドルの高値をつけているのは、株や為替から資金を逃避させたファンドなどが、原油や金などの現物に資金を集中させたからです。
しかし、そっちもアブないと踏むと潮が引くかのように一気に資金を引き上げ、30ドル台に・・・
前出の計算式で計算すると、147ドル時は1リットル103円程だった原油が、35ドル時には25円程になり、日本でガソリンにした場合、187円/リットル→109円/リットルになると。
アラフォー前後の方はガソリン100円台、軽油80円台の時代があった記憶があるかと思いますが、アレがこのあたりですね。
で、同じスパンのUSD/JPYチャートです。
表②
どちらかといえば「逆相関」(一方が下がれば一方が上がり、またはその逆)の様相でしょうか。
表①を見直すと、リーマンショックで激落ちしたあと、原油相場は100ドル/バーレルを回復し、その後も順調に推移していたのです。
USD/JPY相場も、原油が100ドルあたりなら、80円~90円ぐらいを保っていました。
それが2013~2014あたりから、原油価格は並行ながら円安が進行し始めます。
日本の出来事といえば政権が自民党にカムバックし「アベノミクス」スタートですが、原油市場でも「シェールオイル」の実用化という大事件があったのです。
これにより、石油輸入国であった米国は2015年には石油輸出国に転換。
受身だった原油価格の決定にも、攻めの立場で望むことができるようになりました。
具体的には、これまでは原油価格に影響を持てるように、産出国が集中する中東に息のかかった国を確保していなければならなかったので、様々な理由を付けて軍を駐屯させていたのですが、シェールオイルの在庫が積み上がるにつれ、その必要がなくなったと。
武力に頼らずとも、政治力だけで産出国と交渉ができるようになったんですね。
もっとも反作用として、アメリカ軍のニラみが効かなくなった中東でIS(イスラム国)の横行を許すことになったのですが。
現在の原油と為替との関係 今後の原油価格の見通しについて
これ以降、原油価格と為替相場の関連性は薄くなり、現在はほぼ関係ないレベルになってしまっています。
もちろん、それはチャート上のはなしで、現実には為替相場の変動で原油の値段も変動するわけですから、全く関連しないとは言いませんが、現実に原油を仕入れて、経済活動を行わなければならない業界(石油小売、電気・ガス、運輸、農漁業など)は別として、通貨ペアのみに注力するFXトレーダーにとって、原油価格の変動は考慮にいれる材料ではないかと思います。
ただ、FXと同時にCFDで原油を取引する場合はまた違った話になりますので、あくまで、FXオンリーの場合ですが。
最初に述べた通り、WTI価格は日本の原油価格に直結します。イコール、電気・ガス料金や日用品に食料品、果てはクリーニング代金まで、生活のあらゆる面に影響が出るでしょう。
大雑把にWTIが上がると色々と値上がりし、下がると値下がりするぐらいの掴み具合でOKです。
今後も原油に関しては、絶対必要な資源ではありますが、その消費量については抑制する方向で動いて行くかとおもいますので、方向性としては現状維持か、もう少し下(30ドル/バーレルぐらい)で低位安定するんじゃないかなと考えています。
原油への投資については以下サイト参照
⇒原油価格暴落は投資のチャンスか?【原油先物に少額から投資する方法】