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EU イギリス 各国の情勢

英国EU離脱正式通知による今後の為替・経済への影響について

イギリス(正確にはいくつかの国の連合ですが、今のところ事実上の統一国家として機能していますので、イギリスと表記します)がEUからの離脱を国民投票で決定してから約9ヶ月。

3月29日に、ついに離脱を正式にEUに通知しました。

参考:イギリス EUに離脱を正式に通知へ(NHKニュース)

この影響について、超・雑にまとめますと、イギリスはEU離脱によりヒト・モノ・カネの流れが滞り、イギリス国内、ひいてはEU域内のヨーロッパ諸国の経済に悪影響が出る。ってトコでしょうか。

そのシステムやメカニクスは政治・経済の専門家に任せるとして、ことFXやCFD取引(カネの部分ですね)に関する影響を今日は考えてみたいと思います。

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イギリスは金融大国 要するにゼニ

まず第一に、イギリスってのは金融大国で、CFDやFXも元をたどればイギリスで誕生してまして、今でも40%程度の取引をイギリスのロンドン市場で扱っています。

CFDは取り扱い銘柄が多岐にわたっていますので、正確な数字は把握できませんが、FXこと外国為替市場は統計がありましたので下に引用します。

順位 取引額 世界シェア
1 イギリス 2兆4260億ドル 37.1%
2  アメリカ 1兆2720億ドル 19.4%
3  シンガポール 5170億ドル 7.9%
4  香港 4370億ドル 6.7%
5  日本 3990億ドル 6.1%
6  フランス 1810億ドル 2.8%
7  スイス 1560億ドル 2.4%
8  オーストラリア 1350億ドル 2.1%
9  ドイツ 1160億ドル 1.8%
10  デンマーク 1010億ドル 1.5%

いかがでしょう。

アメリカの約2倍、日本の約6倍の市場規模があります。

こんな金融大国のイギリスは、もちろんヨーロッパの金融の中心地でもあり、ヨーロッパのみならず世界中の金融機関がヨーロッパの拠点をイギリスの金融街である”シティ”に置いています。

EUには「単一パスポート制度」というのがありまして、これは「EUの域内ならどっかの国で免許をとっとけば、ほかの国でも自由に営業していいよ。」ニュアンスの制度なんですが、現在イギリス(にだけ)拠点を置いてる金融機関は、イギリスがEUを脱退しちゃうと、この制度が使えなくなっちゃうんですね。

なので、金融機関は

①イギリスから撤退して他のEU域内の国(ドイツかフランスでしょう)に拠点を移す(EUはこれを推奨しています)

②イギリス+EU域内に拠点を増やす

③交渉で同条件の制度が引き継がれることを信じて現状維持(イギリスはこれを狙っています)。のどれかを選択しなければならなくなっています。

しかし、ですよ。

FXに関しては世界一の規模を誇るロンドン市場。

またCFDなど原資本を直接取引しない、デリバティブでも本家本元だけあって、圧倒的なシェア(40%とも)を誇っており、その手の取引はロンドン市場なしには成立しないといっても過言ではありません。

好むと好まざるとに関わらず、ロンドン市場へのアクセスは続けないと、ほとんどの金融機関は商売アガったり状態になるのは目に見えています。

世界の大手金融機関が英国からEU域内の他国へ人員異動を始めているとの報道もありますが、あくまで”移動””再配置”であって”撤退”ではないんですね。

今後もイギリスが金融市場で重要な位置を占め続けることに変わりは無いでしょうが「”もし”、”なにか”があった場合の保険として、一部人員や業務を他に退避させておく。」のは当たり前じゃないでしょうか。

加えて、EUでは大国である、フランス、ドイツにデンマークを足しても、FX市場でのシェアは6.1%とよってたかってやっと5位(日本とタイ)という現状。

ちなみにスイスはEU非加盟ですね。一応。

ですから、カネに関しては、イギリスが少々我を通しても、他国は従わざるを得ない状況なのです。

そして妥協へ・・・

ここからは全くの個人的推測なのですが、金融を含む経済・貿易に関しては③に近い形で、早期に協定が締結されるんじゃないでしょうか。

輸出入に関しても、EU域内各国と直接取引をしなくとも、たとえば、対岸のベルギーやオランダあたりと協定を結び、そこを中継点にして貿易をやるって手も考えられます。

これには2国間FTA(フリートレードアグリーメント「自由貿易協定」)がもっとも有効な手段でしょう。

すでに、アメリカやインド、トルコ、オーストラリアとのFTA協議に着手しているとの情報もあります。

EU全部とじゃなくても、域内の近所に友好国を作ってしまえば、そこにだけイギリスとの利益を独占されたくない他国が追従してきて、あとはなし崩し的になるのは火を見るより明らかです。

これじゃ、イギリスのゴネ得じゃないか!と思うでしょうが、イギリスやEUが一番恐れているのは、この点での無意味な消耗戦をしているうちに、アメリカやアジアの市場が存在感を増すことだと思います。

特にイギリスは第一次、第二次大戦で疲弊し、世界の盟主の座をアメリカに奪われてしまったニガい経験がありますから、金融市場とはいえその二の舞はどうしても避けたいでしょう。

他国にしても、欧州戦線でモメごとを繰り広げた末、植民地は独立するわ、国内紛争は起こるわと散々な目にあってますから、イギリスに納得できない点はあれど、最低自国の国力衰退は避けたいはずです。

なので、表向きは意地の張り合いをするでしょうが、タテマエだけは繕って、適当な妥協点にソフトランディングさせたいのがホンネだと思います。

まとめ もっと怖いのはフランス大統領選挙

イギリスの離脱通知書の要旨を見てみると「ボクたちはEUっていうグループはヤメちゃうけど、ヨーロッパのトモダチってことには変わりないよね?だからこれからも仲良くやっていこうよ」的なことが書かれてますし、離脱したあとも、一定期間、現行の制度を暫定的に続けるという「移行期間」を設けるように求めていることから、とにかく穏便にコトを済ませたいというスタンスがありありと見えます。

ヒトやモノはリアルなもので、その移動には必ず現実世界の移動手段を使うことが求められますが、カネはバーチャルに姿を変えて、通信回線さえあれば、世界中どこへでも一瞬で移動できます。

前出の離脱通知書にも、第一に重視するものとして経済と安全保障があがっていますし、とにかく経済の滞りだけは避けて、あとはゆっくり考えようよ・・・ってのがこれからの流れになるかと思います。

それでも、次になにかあるとすれば、4/23のフランス大統領選挙でしょうか。

こちらもEU脱退を掲げる極右政党・国民戦線(なんかクローズの武装戦線みたいな名前)のルペン氏が逆転勝利(現状は絶対不利らしい)するようなことになれば、それこそEUの根幹が揺らぐことになり、ユーロの暴落(ドル・円・スイスフラン高)なんてシナリオも考えられなくはありません。

フランス大統領選挙は5/7に2回目の投票がありますので、不安な方は、この期間は様子見に徹するのが無難でしょう。

ユーロ安円高狙いで投資をするなら以下の記事を参考に
⇒円高に備えた投資としてFXユーロ円売りは正解でした。