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アメリカ 各国の情勢

米国の「パリ協定」離脱表明による今後の経済、為替への影響について

6月1日、トランプ米大統領が地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」からの離脱を表明しました。同協定は「米国を他国より常に不利な立場に置く」ものだ、と不満を露わにし、米国は「離脱して再交渉」を目指すべきだ、と主張しました。

地球温暖化説に懐疑的とも言われるトランプ米大統領ですが、地球温暖化対策に早急に取り組まなければならないということは、すでに世界の潮流になっていると言って差し支えないでしょう。

今回、世界第2の温暖化ガス排出国の米国が「パリ協定」から離脱すると表明したことで、今後、経済的にはどのような影響があるのでしょうか。また、為替にはどのような影響があるのでしょうか。以下、そのことについてみることにします。

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米国内でも離脱支持は少数派

「本日をもって米国は強制力のないパリ協定の実施を停止する。分担金の支払いもやめる」と宣言したトランプ米大統領。それに対して、プルイット米環境保護局(EPA)長官は「大統領は米国のために非常に勇気ある決断を下した」と支持を表明しました。

しかし、元エクソンモービルCEOのティラーソン国務長官は「我々は温暖化ガス排出を大幅に削減してきた」、「今後も排出削減の取り組みを変更するわけではない」と、地球温暖化対策を継続する意思を明らかにしました。

また、トランプ大統領に反発して、米国の多くの自治体がパリ協定に基づく温暖化対策を独自に実行しようと動き始めました。離脱表明後直ちに、ニューヨーク、カルフォルニア、ワシントン州の3知事は協定の内容を順守する「米国気候同盟」を結成し、全米85都市の市長も同様の動きを見せました。

経済界でも、アップル、グーグル、テスラ、ウォルマートなどの多くの有名企業が協定離脱に反対し、これまで通り、企業として環境対策に力を入れ続けることを表明しました。そして、米国の世論調査では、協定からの離脱を支持する人は1割強にすぎず、残留を支持する人が7割弱にも達するという結果が明らかになっています。

こうした中、5日には、米国の9州、125都市、企業、投資家などが共同で「We Are Still In (我々はまだパリ協定にいる)」と題した声明を国連に提出し、連邦政府に代わって自分たちが協定の責任を果たすという意思を表明しました。

つまり、米国内の流れとしては、トランプ大統領の協定離脱の表明にもかかわらず、地球温暖化防止への取り組みが大きく後退することはないだろうと言うことです。

離脱表明による経済的影響は限定的

パリ協定実施の停止による経済的影響ですが、トランプ大統領は「緑の気候基金」への30億ドルの拠出を拒否すると表明しました。この基金は、途上国の温暖化対策支援に使われる総額100億ドルの基金で、そのうちの30億ドルの拠出をオバマ前政権が約束したものです。

支援資金の減少は、途上国での温暖化対策の遅れに繋がる可能性があり、その事業に製品を納入する企業にとっては売り上げが減少する可能性があります。日本企業にも無関係というわけではないでしょう。長期的には、地球温暖化防止の遅れが、新たな環境コストを生む可能性があることも否定できません。

また、EV(電気自動車)開発支援のための予算を削減するなど、トランプ政権は地球温暖化を含めた環境政策に後ろ向きになっているので、米国企業の環境関連の技術開発力の弱体化や資源産業への傾斜が心配されます。

ですが、テスラやアップルなどにみられるように、個々の米国企業が環境対策の手を緩めるということはまずないでしょう。目先の利益にとらわれて技術開発を怠ることが、自社の将来にとってはプラスにはならないということは、経験的にもよくわかっているはずです。

また、石油や石炭などの資源産業にとっては規制緩和が有利となるかもしれませんが、そうした有利さも決して長続きするものではありません。

企業や消費者の環境重視の潮流は決して変わることはありませんし、地球温暖化防止に逆らうような動きが企業や社会に利益をもたらすことはほとんどないと言っていいでしょう。

協定の実施は停止しても、実際の離脱は3年後

パリ協定には、発効から4年後に締約国が離脱できるという規定があります。ですから、米国が実際に離脱できるのは早くても20年11月4日ということになります。その日は、米国の次期大統領選の翌日に当たり、トランプ氏以外の協定賛成派の大統領が選ばれれば、離脱が回避される可能性も出てくるのです。

離脱表明の為替への影響はほとんどなし

トランプ大統領が離脱を表明した後、米国の原油生産が増大し需給が緩和すると考えられ、市場では原油が売られて、価格が低下しました。一方、外国為替市場では目立った動きは見られず、影響はほとんどなかったと言えるでしょう。原油価格の為替市場への影響も現在ではそんなに気にする必要はないでしょう。

為替への影響としては、やはり追加利上げが問題となる米連邦公開市場委員会(FOMC)や「ロシアゲート」疑惑での今後の展開、雇用・生産など各種経済統計の発表結果の方が気になるのではないでしょうか。

トランプ大統領のパリ協定からの離脱表明は、世界中に大きなインパクトを持って迎えられましたが、経済への影響は限定的であり、為替についての影響はあまり気にする必要はないと言っていいのではないでしょうか。