注射、採血の副作用について
献血センターで採血業務をしていると、100人に1人程度の頻度で体調不良を起こされるドナーさんがいらっしゃいます。
副作用の種類としては、『気分不良、吐き気、めまい、失神などが約0.9%(1/100人)、針を刺すことによる皮下出血が約0.2%(1/500人)、神経損傷(脱力感や痛み)が約0.01%(1/10,000人)程度の頻度で発症します。また、失神に伴う転倒がまれに発生する場合があります 。』
(参考:日本赤十字社 東京都血液センターホームページより )と、日本赤十字社のホームページに、記載があります。
実際に、血液センターで看護師をしていると、1日に1回程度の頻度で副作用が起こります。原因は様々です。副作用が現れた場合には、必ずすぐに採血を中止し、血圧測定と下肢の挙上または、ベットをフラットの状態に戻します。
時には、けいれんなどを起こす場合もあるため、採血針をすぐに抜き、ドナーさんの安全を確保することを第一に考えて動きます。
気分不良・吐き気・めまい・失神などの副作用
気分不良・吐き気・めまい・失神などの副作用は、100人に1回程度の頻度で起こります。来所者人数にもよりますが、2-3日に1回はどなたかがこの症状を起こし対応するような回数です。この反応は、血管迷走神経反応という体の反応です。針を刺したことで迷走神経が刺激され血圧が低下します。緊張、睡眠不足や空腹などが誘引因子です。
症状が出現してから抜針するまでの時間が早ければ早いほど、ドナーさんの回復は早いです。気分が悪くても症状を訴えられないドナーさんもいらっしゃいますので、話しかけやすい雰囲気を作ったり、採血途中に声掛けをするなどの配慮が必要です。また、初めて献血をされる方や緊張されている方については、緊張をほぐすようなケアをします。
また、看護師自身が穿刺経験が少なかったりすると緊張がドナーさんに伝わります。献血の看護師業務に就いてからしばらくは副作用の対応をしなければならない場面が多かもしれません。自身の心身の状態を整えておくことも必要です。
皮下出血
献血の採血で使用している針は、17.5Gと抹消血管に穿刺する針の中では、最も直径が大きな針です。血管に上手く入らなかったり、途中で血液の流れがよくなくなり、針を動かしたりすると皮下出血を起こすことがあります。穿刺したその時に皮下出血を起こすと小さく腫れてきます。
その場合は、内出血専用の軟膏が常備されています。それをドナーさんにお渡しし、ひどくなる場合は、病院を受診していただくよう促します。
また、その場では皮下出血が確認できず、後日、皮下出血が出現することもあります。この場合は、症状を確認し場合によっては同行受診を行います。このようになった場合は、課長以上が対応をします。
神経損傷(脱力感や痛み)について
穿刺をする血管の近くには、神経も通っています。採血針を刺した時に、力の入れ具合などや血管の走行の方向を間違え、誤って真剣を触ってしまうことがあります。採血針が神経を触ると、穿刺部位から指先にかけてしびれるような痛みが走ります。
これは、肘をどこかにぶつけた時にビリビリッと手先に向けて痺れが走る痛みと同様の痛みです。この痛みが走る時は、採血針が神経を傷つけてしまっている時です。神経を傷つけてしまった部位によって、手先に麻痺が出てしまうこともあります。
基本的には、真剣損傷の症状が現れた時には、検診医に必ずその場で診察をしてもらいます。そこで、症状の確認をしたのち、受診をお勧めするかどうかを決定します。基本的には、医療機関を受診していただき、健康被害の程度や神経損傷の度合いなどを確認していただくことがスタンダードです。
医療機関受診の際には、必ず課長以上の役職者が付き添います。善意の献血をしたのにもかかわらず、健康に支障をきたす結果になってしまったことですので、慎重な対応が必要です。
失神に伴う転倒
気分不快の症状が出ているのに訴えることができないドナーさんや体調が悪くなってしまい気分不快の訴えすらできない状態に陥ってしまう場合もあります。この場合、採血を中止するべきシチュエーションにもかかわらず、採血が継続されることになります。
そうなると、ドナーさんの状態はどんどんと悪化し、意識を失う方もいらっしゃいます。この意識消失がベッド上で起こることがほとんどですが、時に採血終了まで全く症状がなくご本人様も快調で採血室を去ったにもかかわらず、しばらくすると気分が悪くなってきてた倒れてしまう方もいらっしゃいます。
その時に注意しなければならないことが、転倒による怪我です。打ち所が悪いと大きな事故につながりかねません。看護師は、採血終了時に必ずご本人様の体調確認をすること採血室や血液センターを後にしても気分不快や意識消失が起こり得ることを説明しておく必要があります。
また、血液センターを後にしてから気分不快が起きた時には、安全が確保できる場所であるか確認しその場にすぐにしゃがむこと、水分摂取を十分にすることの案内をする必があります。血液センターでの採血との因果関係は定かではありませんが、献血後に電車のホームで倒れてしまったという事例もあります。
誰かが見守ってくれる環境に行き着くまで、よく注意して帰途につかれるよう注意喚起をしておく必要があります。
献血の採血には、副作用のリスクが伴っていることを忘れずに採血をすることが重要です。
何度も献血をされている方でもその日の体調や精神状態によって、副作用が現れる方もいらっしゃいます。また、看護師の採血技術の質が上がれば防ぐことができる副作用もあります。日々、技術やケアのスキルアップを図りましょう。