世界の中央銀行を牛耳るMIT閥
最近金融業界で話題になっているのが米欧の中央銀行の幹部がMIT閥であるということです。MITとはご存知のマサチューセッツ工科大学のことですが、今年FRBの副議長に就任したスタンレーフィッシャー氏は自身もMITを卒業し1973年から99年までこの学校で教授として教鞭を振るっていた存在です。
スタンレーフィッシャー氏と言えば、2001年にはIMFの筆頭副専務理事にアジア、中南米の新興国通貨危機に対応しており学者出身ではありますが、かなりの力をもった中央銀行総裁系のドン的存在で、ご自身もどういう経緯かわかりませんが、イスラエル中銀総裁の経験もある人物です。
もともとこのフィッシャーさんのMITでのPHDの論文審査をしたのがあの近代経済学の父であるポールサミュエルソン氏で、そのサミュエルソン氏の甥にあたるのがFRB議長を辞退したといわれる、頭はいいけど変わり者のサマーズ氏なのです。
サマーズ氏もフィッシャー教授の授業をMITで受けて、感銘を受けたことから経済学者になったといわれており、ここだけとってもえらい関係があるのです。フィッシャー氏が最近良く口にする長期停滞説も、元々はローレンスサマーズ氏の理論であり、ここでもフィッシャー、サマーズ両氏でしっかり共有されている考え方のようです。
さて、さらに話は広がるのですが、このスタンレーフィッシャー氏は今年の初めにFRB議長を辞任したバーナンキのMITでの指導教官であり、この二人もMIT閥として親密な関係をもっています。
さらにあのECB総裁のマリオドラギ氏も実はMITのPHDで卒業生なのです。MITというのは経済学にも長けた学校なのかということが認識されるわけですが、さらに現FRB議長のジャネットイエレン氏の夫でノーベル賞受賞学者のアカロフ氏もMIT出身ですし、マーヴィンキング前BOE議長もMIT、ギリシャ危機時代の首相だったルーカスパパデモスもMITといった具合で、中央銀行人脈はMIT人脈からできていると言っても過言ではない状況となっています。
今年の夏のジャクソンホールでECBのドラギ総裁が講演した内容がイエレン氏よりも話題になったのは記憶に新しいですが、当然フィッシャー氏と密談をしてあのような方向で米国Fedの援護射撃を行ったのではないかとも言われています。
まあこれだけの師弟関係ですから、さもありなんという感じですが、強いドルを珍しく志向し始めた米国のFed、デフレ対策でどうしてもユーロ安を演出したいECB,そしてインフレ率の達成と消費税率引き上げをなんとかしたい日銀といった三つの中央銀行の思惑が珍しく揃っていることが根底にあることは間違いない状況で、日銀黒田総裁だけはMITとは無関係ですが、どうもこの流れに沿っているように見えます。