ユーロドル下落!何が原因?1.0を割るのか?今後の見通しについて
2016/03/11
2015年の世界金融市場で最大のトピックスといえば、アメリカの利上げでした。想定内の利上げとはいえ、実施をずっと先送りしてきただけに、やっと踏み切ったかというのが金融関係者の本音ではないでしょうか。
アメリカの景気回復が確認された一方で、欧州の景気は足踏みが続いています。同時に、二極化は深刻なユーロ/ドルの下落を招きました。ユーロ/ドルがなぜ下落しているのか、原因と今後の見通しを探ります。
ドラギ発言が招いたユーロ一段安
景気認識の差を長期的要因とすれば、短期的なユーロ急落の引き金になったのが、2015年10月22日のECB(欧州中央銀行)理事会におけるドラギ総裁の発言でした。ECBのマイナス金利を含んだ、金融緩和策を同年12月にも表明する見通しを発表。これによってユーロはドルや円など主要通貨に対して全面安の展開となりました。
当日のニューヨーク外国為替市場では、ユーロ/ドルは1.1108ドルまで下落。1日の下落幅としては2%という大きさでした。ユーロは、円やポンドに対しても大幅安となりましたので、いかにドラギ発言の影響が大きかったかを物語っているといえるでしょう。
ユーロ/ドルはそろそろ底値と見ていたFX投資家にとっては、ドラギ発言によって戦略の練り直しを迫られることとなりました。
参考:10月末ECBはドラギの口先介入まんまと成功【ユーロドル為替の見通しについて】
ユーロ圏のCPI予想値に届かず、2016年もユーロ安続く
明けて2016年、今年のユーロ/ドルはどう動くのか。アメリカの景気回復と、利上げの実施が確認されたことで、カギは欧州の景気回復にかかってくるでしょう
その参考値になると注目された12月のCPI(消費者物価指数)が「+0.2%」と市場予想に届かない低い数値にとどまったことで、改めて欧州の景気回復の遅れが指摘されました。
この数値を受けて、ユーロ/ドルは1.0711ドルまで下落、2016年もユーロ安のトレンドは変わりそうにありません。ユーロは円に対しても弱く、127円51銭の安値を付けています。ここまで下げると、130円台への回復も容易ではないでしょう。
2016年のユーロから見たポジションとしては、「売り」のスタンスで考えた方が無難といえます。
2016年、ユーロ/ドル1.0の大台割れはあるのか?
2016年も、景気認識の差が顕著だけに、ユーロが大幅に持ち直す可能性は低いでしょう。そこで焦点になるのが、果たしてユーロ/ドル1.0ドル大台割れがあるかどうかです。
すでに1.0711ドルまで来ていますので、あながちあり得ない話でもありません。さすがに、大台割れは無いだろうとみて買いに向かう流れができれば、リバウンド高となる可能性もありますが、それでも1.1ドルに戻るのが精いっぱいと考えます。
つまり2016年の少なくとも前半は1.0~1.1ドルのボックス相場になる可能性が大と考えて良いでしょう。
年の後半ですが、欧州の景気動向に引き続き注目する一方で、アメリカの大統領選という大きな材料があります。共和党が政権を奪還するかどうかでもユーロ/ドルの行方に影響を与える可能性があります。
色分けとしては共和党=自由主義、民主党=リベラルということになりますが、完全に政策が違うというわけでもなく、欧州への対応が180度転換するということはないでしょう。
外交を重視してきたオバマ民主党政権から、保守色の強い共和党に政権が移った場合、自国の経済を優先する可能性はあり、ユーロにとっては若干のマイナス要因と考えることはできます。議会勢力図から見れば共和党有利ではありますが、最終的には各党の大統領候補者の個人的な人気や、公約などによって有権者の態度は変わってくるので、予備選の結果を待ってから判断ということになります。
いずれにしてもユーロに有利な材料が見当たらない2016年は、引き続き「ユーロ安の年」となりそうです。