VW(フォルクスワーゲン)不正による為替、株価への影響について
2015/09/28
★VW問題はドイツにはかなりのネガティブインパクトになりそうな様相
VWの排ガス規制違反が発覚
突然降って沸いたようなフォルクスワーゲンのいんちきソフト利用による排ガス規制逃れですが、当初は何がどうなっているのかよくわからないままに株価が下げユーロが下落しただけでしたが、全容がわかり始めてからかなり深刻な問題になりつつあることが判明してきており、為替相場ではユーロの行方がかなり怪しくなり始めています。
VWは自動車メーカー規模でいえばメルセデスやBMWをはるかに凌ぐ巨大メーカーであり、トヨタとその生産台数を凌ぎあうほどの立場にある会社となっているわけですが、そのVW社が排ガス試験で本当に不正を働いていたのかというのがまず衝撃のはじまりとなっています。
しかも、欧州車というのはドイツ車を中心にして距離を走るエコカーの中心にクリーンディーゼル車を位置づけてきており、世界的なエコの戦略車がディーゼル車であっただけに、その影響はかなり大きく、当然疑いを持って見られるのは、VW以上にディーゼル車の投入に積極的なBMWとメルセデスベンツということになってくるわけです。
今のところこの不正ソフトを利用していたのはVWだけということだ他社には波及していませんが、ディーゼル車自体が環境基準をクリアできていないという話がエスカレートすればどういった部分で他社に話しが波及することになるかわからない状況で、深刻度は想像以上に大きなものになりつつあります。
こうした不正報道というのは掘り下げるとかなり大きな問題が芋づる式にでてくることもあるため、現状がすべてなのかの判断をするのはかなり拙速な感じで、もう少ししっかり様子を見ることが必要になりそうです。
そうでなくても中国経済大減速でドイツ車には逆風の真っ最中
中国経済の大幅な後退が露見するようになって以降もドイツは自国に及ぼす影響は限定的といった見解を示してきましたが、どうやらそんなに安易な状況ではないようで、これから明確に影響が出始めることが懸念されはじめています。
今問題となっているフォルクスワーゲンは高級車部門の主力車種であるアウディの中国工場での生産を縮小したと発表していますし、ライバルのBMWでも、中国で生産する3シリーズや5シリーズについて、生産縮小に踏み切っています。
こうしたクルマは中国におけるドイツ自動車メーカーのいわばドル箱車種であり、現地生産が減るということはかなりの影響を受けることを示唆しているもので、確かに輸出額には影響を与えないもののドイツへの利益還元は大幅に減少することは間違いない状況となっています。
シリアからの難民受け入れで大きく対応を誤ったメルケルがこの状況に輪をかけることに 難民問題の影響
一方、シリア難民を無条件に受け入れるとしたメルケル首相がその10日後に難民の流入規制を口にしたこともドイツではかなり支持率を落とすこととなってしまい、あきらかにオペレーションの判断をメルケル首相が誤った印象が高まっています。
難民はイタリアにもギリシャにも押し寄せており、こちらも想像以上にユーロ圏を混乱に陥れるとともにコストのかかる対応を迫られるようになってきています。
どうもFRBの利上げのことだけに気をとられているうちに様々な事態に変化が現れるようになってきているのは間違いないようで、これまでに想定したなかったリスクであるだけにドイツ一国の問題がEU全体に色濃く波及する可能性を見ておく必要がありそうです。
通常こうした民間企業が引き起こした問題というのは最初からすべてが開示されることはなく、徐々に問題が連鎖的に登場するものですから、他のドイツメーカーに波及したりディーゼル車全体の販売に大きな影響がではじめるとかなり深刻な状況に陥る可能性がまだまだ考えられるということになります。
ここのところ米国の株価が下がるとリスク回避では円とユーロが買われてきましたが、ユーロキャリーの巻き戻しでのユーロ買いもこの問題がでてきてからは起きていないことから、次なる動きがどうなるのかについては慎重に検討したほうがいい時期にさしかかってきているといえます。どうもえらく難しい相場になりそうな嫌な雰囲気いなってきていることを感じる次第です。