日本DMAT隊員養成研修に参加して ~研修や実技訓練、試験について~
2020/01/30
もう数年前ですがDMAT隊員養成講習に参加した時のことをお伝えしたいと思います。
DMATの隊員になるにはまず災害拠点病院に勤務する、院内から選抜されるその次に日本DMAT隊員養成講習に参加して終了試験に合格して晴れて日本DMAT隊員になれるのです。
約4日間の養成講習はとてもタイトでハードなものでした。
場所は東京都立川市にある災害医療センターというところです。とても大きな病院でDMATのお膝元である病院でもあります。
Sponser Linkいよいよ始まり厳しい隊員養成講習
朝8時には受付を済ませて資料などを受けとりながらオリエンテーションもそこそこに一発目の講義が始まりました。
大きな講堂のようなところに集められ周りは見知らぬ人ばかりです。私たちの病院から参加したのは外傷消化器外科の医師が1名、救急科の医師が1名、救急科の看護師が2名、ロジスティックと呼ばれる業務調整員が1名の計5人の参加です。
研修はDMATとは何かという座学から始まり災害医療に関すること全般や実習などを交えて最終日にはテストがありそれに合格しないと隊員にはなれません。たったの約4日間ですがそれはとても濃密な日々でした。
CSCATTT?聞いたことのない専門用語が連発
講義では災害に特化した内容でした。専門用語もたくさん出てきます。その中で災害医療対策の原則とも言えるCSCATTTということを真っ先に覚えさせられます。
これは何でしょうか?
このことは最終テストにも出てくる基本体系なのです。当たり前の話ですが災害は突然発生します。それに対応するには個々がバラバラで対応しては力が分散してしまいます。それを統制するのがCSCATTTなのです。
簡単に説明すると
C:Command&Controlの略で指揮、統制を表します。
S:Safetyの略で安全を表します。
C:Communicationの略で情報伝達を表します。
A:Assessmenntoの略で評価を表します。
T:Triageの略でトリージを表します。
T:Treatmenntの略で治療を表します。
T:Transportの略で搬送を表します。
いかがでしょうか?
日常の看護の場面にはほとんど出てこない言葉ばかりですね。しかし隊員養成講習ではそれらの意味の一つ一つ理解しながら意味を勉強していくのです。そんなわけのわからないことばかりのことを習いながら講義はどんどん進んでいきます。
より専門的に
医師、看護師、業務調整員に分かれて職種ごとの講習や実技も行われます。看護師はトリアージでスタート法やPAT法という生理学的な評価の方法も学びます。
参加しているのは私たちの病院だけではなく日本全国の病院から参加している人たちがいます。その方たちともグループが一緒なのでチームダイナミックスで実習や机上訓練に参加します。
後に趣味にもなったトランシーバーの取り扱い訓練
私は今家にデジタル簡易無線というものを二台所有しています。5Wの出力があり総務省へ届け出て申請料と年間の電波利用料を支払えば免許などの特別な資格を有していなくても使用できるという無線機です。DMAT活動においても通信手段は非常に重要です。
その一端を担うのがトランシーバーや無線機などです。
現在勤務するERにもこの無線機が装備されています。東日本大震災では家庭電話、インターネット、電子メール、携帯電話、衛星電話などの通信手段がことごとく遮断されていたのを覚えている方も多いと思います。
でも唯一無線機やトランシーバーは通信が遮断されることなく使用できたと聞いています。DMATの研修ではそのトランシーバーの使い方や話し方、」設定の仕方までも勉強します。
例えば通話ボタンをすぐに押して会話を開始すると電波の特性上最初の言葉は途切れてしまうので通話ボタンを押してから一呼吸置いてから会話を始めるなどやはり独特なことはたくさんありこんな小さな箱一つに対して覚えることはたくさんあり最後はもちろん取り扱いのテストまで行われました。
その面白さが忘れられず某オークションで購入し災害で使用しない時は見知らぬ人との交信をして会話を楽しんでいます。
厳しい講習はまだまだ続く 講義、実技、試験
広域災害救急医療情報システムというものがあります。当時私はパソコンの取り扱いにはまだまだ不十分でこのシステムに必要な情報を入力するという講義や実技、テストがありました。
今でこそはMac使い?と言われるほどパソコンはそれなりに上達はしましたが、当時はこのテスト落ちてしまうのではと不安でした。でもなんとか合格でした。今の若い看護師さんは小さい時からパソコンやタブレットに使い慣れていると思うので多分そんなにこの場面では苦労はしないと思います。
最後の今まで学んできたことを総決算する実践訓練がありました。消防の救助隊も交えての実践的な訓練でした。
そのあとは最終テストです。不合格者に対してはインストラクターが待合室でそっと受講生に声をかけるからと言われましたが私たちのチームは全員が合格することができました。
この研修はとてもハードでした。しかしDMATの根幹的な目標である「防ぎ得た災害による外傷死を減らすこと」における活動を行うために非常に大切なことを学んだと思います。
平時でもいつでも災害が起きて出場することがあれば臆することなく行ってきます。少しでも多くの方々を助けるために。