DMAT看護師のヨッシーのブログ

ER看護師でDMAT隊員副隊長を務めているヨッシーのブログです。DMATに関する情報、日々のDMATの業務、看護の技術について等、DMAT看護師に興味を持っている方に役立つ情報を発信していきます。

DMATが取り扱うことが多い疾患【エコノミー症候群の症状と対策】

   

いまだに熊本の大震災では多くの方々が避難生活を余儀なくされています。余震も多く発生してしまいその規模も大きく建物の倒壊を恐れて屋外や車の中で避難生活を送っていらっしゃる方もいます。

しかし震災後に震災関連で亡くなる方も出てきます。その一つとしてテレビなどで取り上げられてきたエコノミー症候群というものです。

エコノミー症候群をご存知でしょうか?

病院などで働いていると発熱もなくレントゲン写真を撮影しても特に呼吸苦の所見がない。さらに詳しい精密検査をするとエコノミー症候群ということが分かる時があります。

この病気は恐ろしいことに命を奪ってしまう病気なのです。飛行機などで長時間同じ姿勢でいて飛行機から降りて歩き始めた途端に急にショックや呼吸困難を起こしてしまい処置が遅ければ死をもたらしてしまう恐ろしい病気なのです。

以前からこの病気の認知度も高く治療方法も確立しています。

この病気は簡単に説明すると血栓が血管を詰まらせてしまう病気なのです。

飛行機のエコノミークラスで旅行すると長い時間同じ姿勢で強いられてしまいますね。そうなってしまうと足の血流が悪くなってしまいます。足に静脈に血栓「血のかたまり」ができてしまいます。この血栓が立ったり歩いた時に血管からはがれて血流にのって肺の動脈を閉塞してしまいます。

この病気はエコノミークラスの乗客だけではなくファーストクラスの乗客や車の長時間の運転手などにも発症しているので旅行者血栓症、ロングフライト症候群とも呼ばれています。怖い病気として1980年から1990年に認知度が高くなりました。

今回の熊本の震災で認知度がさらに高くなりました。残念ながらこのエコノミー症候群で亡くなってしまった方まで出てしまいました。また入院した方もいらっしゃいます。

この地震は規模が大きく建物の倒壊による圧死を免れようと多くの被災者の方々が屋外で車の中で過ごしているのが原因といわれています。車の中だとどうしても同じ姿勢で長時間過ごしてしまいます。そしてこのエコノミー症候群をはっしょうしてしまうのです。

エコノミー症候群の症状とは?

症状は血栓の大きさによって異なります。血栓が小さければ無症状のことも多いです。

しかしある程度大きい血栓が肺動脈を閉塞してしまうといきなり呼吸困難が生じます。酸素を取り入れて二酸化炭素を体の外に排出するという役割を肺は担っています。

その機能が血栓によって肺動脈が閉塞されてしまうと呼吸によって酸素を取り入れていたのに肺の奥に酸素が取り入られなくなり呼吸をしていても窒息している状態となってきます。

大きな血栓が肺動脈を閉塞してしまうといきなりショック状態や失神をおこしてしまい処置が遅ければ命を奪われてしまいます。

多く見られる症状は突然の呼吸困難です。一回だけ現れる場合もありますが数回現れる場合もあります。また胸が痛いという心臓病である心筋梗塞などを疑わせる症状も多くみられます。

その他の症状として不安感、動悸、冷汗、全身倦怠感などもあります。

エコノミー症候群の診断方法

まず胸部のレントゲン写真を撮影します。そのあと血液検査や心電図の検査をします。それでも症状が続いて有用なデーターが得られなかった場合は血液検査で腎機能が悪くなかったら造影剤というお薬を使ってCTの検査をする場合があります。

血液検査などでは凝固系といわれる検査の一つでディーダイマーという項目の血液検査で新鮮な血栓ができた場合このディーダイマーが高値を示すのでエコノミー症候群をうたがうことができます。心電図変化では右心室や右心房に明らかに負担がかかっている変化がみられるのでそこでも診断ができます。

血液ガスの検査でも血液中の酸素の量と二酸化炭素の量を測定してその結果でエコノミー症候群と判断ができます。

エコノミー症候群の治療方法

とにかく入院です。一刻も早く医療の管理下に置くことが第一です。非侵襲的な治療が第一選択となる血栓溶解療法が即座に行われます。すなわち血栓を溶かすお薬を投与して血栓を溶かす治療方法です。

わたくしが知っている中ではよく使われるお薬がヘパリンというお薬です。血栓がまだ新鮮な場合は原液で静脈から注射したり生理食塩水などで薄めて持続的に投与して治療します。

大変有効な方法ですがこのお薬を使う場合出血傾向になるので禁忌を十分に確認しなければなりません。合併症として脳内出血があげられます。慎重に投与しなければなりません。できたらICUなどで管理するのがいいと思います。呼吸が苦しければもちろん酸素の投与も行います。

エコノミー症候群の予防はどうすればよいか?

まずは長時間同じ姿勢でいないことです。時々は足を動かしたり立ったり歩いたりしたほうが良いでしょう。また水分の摂取が血栓の予防につながります。脱水を招くお酒やコーヒーも避けるようにしましょう。

飛行機などではできたら通路側の席が良いでしょう。なぜなら長時間座っていると動くのが面倒になりトイレに行くのも面倒になってきます。通路側ならまだそのようなことを回避できるからです。

私たちDMATも超急性期だけではなく時としてこのような被災関連疾病と戦わなければなりません。

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