うさぎは足や腰骨と同じく、歯も大事です。歯が異常な状態になると食事ができないため、わずか1日で死亡してしまうこともあるのです。
今回は、うさぎの病気の解説その①として、うさぎの口内の異常や考えうる病気についてご紹介します。
飼い主さんはこちらを参考に、うさぎの口内を定期的にチェックしてみてください。
うさぎの口から血が出る原因
ある日突然、ご飯を食べなくなったうさぎ。よく見ると口の周りがなんだか赤くなっていて、血が出ているみたい。そんな時に疑われるのは、次のような症状です。
- 不正咬合
- 歯が欠けている
可能性が高いのが、この2つです。
不正咬合になる原因
うさぎの口に関する病気の代表が不正咬合です。人間で言うと「ものすごく歯の噛みあわせが悪い」状態なのですが、怖いのは人間と違い、命に直接関わること。
人間の場合は噛みあわせの悪さで即座に死ぬことはありません(口臭の原因や体調不良にはなります)が、うさぎの場合は深刻です。歯の噛みあわせが悪いだけで、別の病気を生じさせたり、死亡することがあるのです。
うさぎの口から血が出ている場合、まず疑われるのは不正咬合です。生まれつきそうなる子もいれば、食生活が原因でなる子もいます。
食生活で起こる場合は、歯が好き勝手伸びるような食事をメインに与えていた場合です。たとえば、ペレットや野菜など、柔らかくて短い食べ物です。
うさぎの歯は一生伸びる性質なので、毎日食事によってちょうど良い状態になるよう、上下の歯や食べ物とこすりあって削っています。
一般的に、前歯部分だと1年に10~12cm、1週間で約2mm前後は伸びます。かなりのスピードです。
柔らかい食べ物ばかりだと歯が食べ物とこすり合っても大して歯を削ることにならず、伸びるスピードのほうが追い越して(歯が必要以上に伸びて)しまいます。
短い食べ物も同じです。仮に歯を削れたとしても、左右どちらか片方の歯で噛んでいるうちに食べきってしまうため、左右の歯のバランスが悪くなります。
このような理由で起こるのが、不正咬合です。不正咬合は酷い場合は左右の前歯が別々の方向に伸び、口から飛び出したり、そのまま口内から鼻や目に突き出したりすることもあります。歯に圧迫されて目が飛び出る子もいます。
うさぎは半日でも食事が満足にできないと、それだけで内臓にダメージが出て死亡してしまいます。不正咬合の疑いがある子は、すぐにでも病院へ連れて行き、診察を受けてください。
<不正咬合の対策>
牧草をきちんと与えましょう。不正咬合のリスクを上げるのは、ペレットや野菜ばかり食べさせる食生活です。
牧草を食べさせると歯と歯同士がこすれ合い、伸びすぎを防ぎます。適度に歯が伸びるようになるので、歯と歯のズレが起こりにくくなります。
牧草嫌いの子は、牧草を編んで作ったおもちゃを与える方法もあります。おもちゃで遊びながら牧草に慣れさせ、少しずつ牧草への興味を持たせてあげましょう。
また、牧草のタイプを変えたり複数ミックスしてみる手もあり。チモシー一番刈りを嫌がるなら、柔らかい3番刈りを混ぜたり、アルファルファ牧草を少し混ぜてみたり。
与えすぎは栄養過多になるアルファルファですが、ブレンドするくらいなら大丈夫です。気になる方はペレットの量を減らして牧草の割合を多くしてあげるなど、栄養やカロリーの調整をしてあげましょう。
牧草は長めのものを多く与えるのがベスト。長いと食べ終わるまでに右で噛み、左で噛み、と左右両方の歯を使おうとするからです。短いものだと片方だけで食べ終わってしまいがちなので、できれば長い牧草を与えましょう。
ちなみに、硬いかじり木やハードタイプペレットをあげれば歯は削れる!と思いがちですが、そんなことはありません。
歯を適度に削っているのは、対となる(擦りあう)歯の硬さであり、与えている木やペレットの硬さではないのです。
そもそも不正咬合は奥歯にも発症する病気ですが、かじり木は奥歯ではかじりませんよね。
また、ハードタイプのペレットをあげているから大丈夫と思っている方は、逆に不正咬合や歯の根の異常リスクをあげてしまっています。
ペレットのようにガリガリ噛むものは歯の根に圧力をかけるだけで、歯と歯を擦り合わせる咀嚼にはつながりません。
歯と歯を擦り合わせるような食べ方が重要なのです。ちょうど馬やヒツジの食事シーンを思い浮かべると分かりやすいかもしれません。顎をすごく左右に動かして食べてますよね!
歯が欠けている場合の原因
他にも、歯が欠けて口内を傷つけている可能性があります。実際、我が家の2羽目の子だったチビが、この症状で治療を受けました。
原因はさまざまですが、硬いものを好んで噛む子や、ケージをかじるクセのある子は注意が必要です。我が家のチビも人が前を通ると「出してー遊ぼー!」とケージを噛んでおねだりする子でした。
そのため、歯が欠けてとがり、口内に刺さってしまったのです。
この場合の治療法は欠けた歯のとがった先端部分をカットし、自然に傷が癒えて歯が伸びるのを待ちます。処置は動物病院で行ってもらえますが、口内を触られるのはうさぎにとって大きなストレスなので、暴れることが多いです。
暴れてしまうと骨折などの事故につながるため、できるかぎり治療を受けずに済むよう、歯を欠けさせないよう注意してあげてください。
<歯が欠けないための予防>
ペレットが硬すぎないかチェック。硬すぎる場合は、もう少し柔らかめのものに変えましょう。
牧草と野菜をバランス良く与えればペレットを与えなくても健康に問題は出ません。心配な場合はサプリメントを併用しましょう。
ケージを噛むクセのある子は直しましょう。これはけっこう苦労します。まずケージを噛んで「出して!」アピールをしてきても無視すること。ケージを噛まなかった時だけ、褒めてあげ、出してあげるようにします。
こうすることで段々と「噛んだら出してもらえなくなる」と学習します。うさぎは頭の良い生き物なので、しっかりと続ければ覚えてくれます。時間はかかりますが、根気良くしつけてください。
うさぎの不正咬合を放置するとどんな病気になるか
うさぎの不正咬合は、多い病気のうちのひとつです。それでも飼育本の普及や勉強熱心な飼い主さんが増えたことで、昔にくらべて大分数は減ったと言う獣医さんもいます。
ただ、すべての飼い主さんがそうとは言い切れません。やはり間違った飼育方法で不正咬合を起こすことになる人はいますし、うさぎ自身が遺伝など何らかの理由で不正咬合になりやすい子であるケースもあります。
不正咬合を放置していると、たとえば次のような病気や異常につながりやすくなります。
- よだれが垂れる
- 食欲不振
- 下痢
- 血が出る
- 鼻涙管閉塞や炎症
- 目の突出
- 膿
歯が伸びすぎるとうまく口を閉じることもできないため、よだれが垂れやすくなります。口が閉じにくいだけならまだしも、中には伸びた歯が刺さって痛くなるため、あえて口を開けっ放しにしている子もいます。
このような理由から食事もとりにくく、次第に食欲不振になっていきます。ただ、うさぎは極限まで体調不良を悟らせようとしないため、食欲不振が出る頃には重症となっている可能性が高いです。毎日きちんと様子を見てあげてください。
満足に口も閉じられない、食事もできない。このようなストレスと、不十分な栄養摂取により、下痢を起こす子もいます。また、不正咬合で歯がとがるような変形を起こしていると、口から血が出る場合もあります。
このような症状がなくても、顔に近い部分で異常が起こっているのであれば、不正咬合など歯の異常が関係していることも珍しくありません。その代表例が、鼻涙管の閉塞や炎症です。
鼻先から口の真上を通り、目の端に続いている鼻涙管は、目に溜まった汚れを洗い流した涙が排出される管で、とても細いものです。不正咬合などで口内に炎症が起こると、簡単に圧迫されて閉塞してしまうほどです。
歯の異常が原因で鼻涙管が閉塞される場合もあれば、伸びすぎた歯が上あごに刺さり、その傷から鼻涙管へ入り込んだ細菌が直接、鼻涙管を炎症させるケースもあり、どちらにせよ早めの対処が必要です。
鼻涙管が閉塞や炎症を起こした場合はうさぎの目の排出できなかった涙がたまり、まるで泣いているような状態になります。もしうさぎが「泣いている」のを見たら、動物病院で口の中も確認してもらってください。不正咬合になっているかもしれません。
また、どことなく目が飛び出てきたように感じる人もいるのではないでしょうか。これも鼻涙管と同じく、伸びた歯が内側から目を圧迫したり、目の周りに炎症を起こす細菌を送り込んでしまったために起こります。
最初のうちは判断つきにくいかもしれませんが、涙を流すようになったり、なんとなく目の縁が充血していたりと異常を感じた場合は、早めに動物病院へ連れて行ってください。放置すると目を失う可能性が高くなってしまいます。
そして最後に、うっかり見逃しがちなのが、膿が溜まる症状です。鼻涙管や目の下で炎症を起こし、膿が溜まった場合は目周辺の異常で分かりやすいのですが、口内や顎で膿が溜まっている場合は気付きにくいです。
気付く頃にはコブのように大きくなっていることが多く、大掛かりな手術で取り除くのですが、取り除いてもまた膿が溜まるため、完治が難しくなります。
顎に炎症が広がれば、流動食しか食べられなくなり、ますます命が危険にさらされます。
流動食でも長く生きる子はいますが、ほぼ毎週動物病院に通ったり定期的に手術で膿を抜いたり、毎日流動食を流し込んだり介護したりと、時間やお金がかかります。
四六時中ずっとついてあげられる人でなければお世話は難しいのが現実です。
人間に言い換えるとただ「ものすごく歯の噛み合わせが悪い」だけですが、うさぎが一度ものすごく噛み合せの悪い状態になると、こんなにも病気や異常のリスクが高まるのを、知っておいてください。
また、2番目にご紹介した「歯が欠けている」原因もケージなど硬いものを噛んだことだけではなく、不正咬合による噛み合せの影響で起こることもあります。
うさぎの不正咬合を予防する飼育方法のコツとまとめ
うさぎは口内環境に気をつけなくてはなりません。不正咬合も歯が欠ける原因も、飼い主さんが注意しあげるだけで予防できます。
予防方法はとっても簡単。うさぎの飼育の基本を守るだけです。
- ペレットは体重の10%未満に抑える
- 牧草はたくさん与える
- 野菜はあげすぎない
- しつけをきちんとする
これだけです。
うさぎを初めて購入する時は、必ずペットショップの店員さんに「牧草を多めに与えてください」と言われるはずです。初心者さんはよくペレットさえ与えれば良いと考えがちですが、大事なのはむしろ牧草の方。
ペレットはあくまでおかずや、おやつです。牧草を材料にしていることから、「栄養的にはペレットだけで十分では?」と思われがちですが、牧草はその形状や硬さに意味があります。
長い牧草を左右の顎で交代に噛み、歯をこすり合わせることで伸びた歯を調節します。たしかに栄養も大事なのですが、牧草でなければならない理由は、この歯の長さを調節できる部分にあるのです。
牧草の繊維質が腸のはたらきを活発化する効果もあるので、歯の問題抜きにしても牧草の存在は重要です。
野菜も長く切ると同じように左右の顎で食べてくれますが、柔らかいので歯の長さを調節するには物足りません。
しかも種類によってはカルシウムが多く、尿結石の原因となるリスクがあります。ペレットを与えている場合は、野菜もおやつ程度に考えてください。
そしてしつけも大事。うさぎはある程度の習慣づけは可能です。ケージを噛まない、トイレを噛まないと根気よくしつけてください。中には不正咬合の結果、歯がとがる症状もありますが、少なくても歯が欠ける原因の予防にはなります。
☆おすすめの予防グッズ☆
- 栄養価も高い『一番刈りの牧草(チモシー)』
- 牧草嫌いな子の牧草慣れに『わらっこ倶楽部 うさぎの座ぶとん』
- 丸洗いできて衛生的な『牧草入れ』
- 細菌感染を予防する『消臭殺菌スプレー』
すべて購入する必要はありませんが、うさぎぱんおすすめです。とくにわらっこ倶楽部は牧草嫌いの子が牧草に興味を持つきっかけには最適です。我が家も座布団タイプを使っていましたが、暑さ寒さ対策にも一役買ってくれます。
柔らかいので、金網タイプの床のケージを使っている場合は足裏のダメージ軽減にもなります。安いので、汚れても気兼ねなく買い替えやすい点も良かったです。
牧草入れは、なくても良いのですが、あると掃除が楽になります(笑)うさぎ専門店でおすすめされたのは、陶器製のものでした。ケージに固定できるタイプもありますし、丸洗いできるので、中でおしっこしちゃう子にも安心して使えます。
そして、消臭殺菌スプレー。実は鼻涙管が閉塞したり炎症するのは、歯だけが原因ではないのです。ケージ内の細菌が目や鼻から入り込んで炎症を起こした場合も、同じように涙が溢れる現象に。
うさぎの死に至る病気で有名なスナッフル(うっ滞)の原因となるパスツレラ菌も、鼻涙管の炎症を起こす菌のひとつです。日ごろからきちんと殺菌しておけば、異常が起こった時にすぐ「菌以外が原因かも」と疑えます。
そのためにも、うさぎさんのケージは衛生的に保ってあげてください。うさぎでも安心して使えるペット用消臭スプレーは殺菌力もあるものばかりなので、ひとつ持っておくと掃除の時にも便利です。
この他にもうさぎ用のグッズをいろいろ試してみて、うさぎにとって健康な毎日を送れる環境を作ってあげてください。
※うさぎを長生きさせるコツと共通している部分があるので、そちらもあわせて参考にしてみてください。→→『うさぎを長生きさせる方法・秘訣について』へ
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