不祥事なのに株価が上がっている神戸製鋼所は空売りのチャンスなのか?

大規模なデータ改ざんが発覚した、神戸製鋼所(以下、神戸鋼)のニュースが連日新聞紙面やネットの経済サイトを賑わしています。アルミ・銅製品のみならず多くの分野に検査データの改ざんが広がり、影響は底なし沼の様相です。

そこで思い浮かぶのが、神戸鋼の株価下落局面を利用して空売りで利益をあげられないかということです。

グループを含めると500社以上にものぼる大規模な不正事件だけに、株価の低迷は長期化し、空売り投資には適した銘柄になりました。今回は、空売りのチャンスがあるとすればいつなのか? そのタイミングを分析します。



東芝株の再現か?神戸鋼は空売りのチャンス到来

ノーマルな投資であればとても買えない神戸鋼ですが、空売りならば話は別。

むしろ不祥事株の方が売りは仕掛けやすいといえます。なぜならば不祥事株はちょっとした新たな材料が出ても敏感に反応するからです。

神戸鋼と同じ超巨大企業の東芝株では、多くの投資家が空売りで利益をあげたと予想されます。神戸鋼も不祥事が長期間にわたりますので、今後空売りのチャンスは多く訪れるでしょう。東芝株の再現は十分可能です。

東芝のケースとどう違う? 補償問題の行方は?

では、神戸鋼と東芝はどのような点で相違があるのでしょうか。

東芝との違いは、現在まだ債務超過にはなっていないことです。なにしろグループ全体では500社以上の取引先に不正データを提供していますので、各企業別に調査を進めてのち、必要ならば部品の交換などの補償費用が発生します。全体像がはっきりするのには数か月かかると予想され、業績の悪化はこれからが本番といえます。

もっとも同じ不正事件でも東芝の場合は不正会計の問題よりも、米ウェスチングハウス社への巨額の投資が債務超過のおもな原因です。神戸鋼の方が問題の根は深いと考えることもできます。

追い打ちをかけるように、神戸鋼は10月26日、新たに機械事業部門でもデータの不正があったことを発表しました。まさに底なしの状況ですが、反面これまで出荷した525社中、437社分の製品の安全確認を終えたとしています。

そのためか、新たな不正が発覚したにもかかわらず翌27日の終値は5円高の900円となっています。安全性が確認されればリコールや部品の交換は発生しないとの楽観的な見通しを持つ投資家がいるのでしょう。

ただし、子会社コベルコマテリアル銅管秦野工場で製造された一部製品がJIS(日本工業規格)の認証を取り消されており、今後他の工場にも影響が広がる恐れがあります。

官公庁などの公共事業ではJIS認証が発注の条件になっていることもあり、今後受注減は避けられない見通しです。

空売りのタイミングはいつか

では、空売りのタイミングはどのあたりにあるのでしょうか。空売りに適した銘柄にはある特徴があります。

まず東芝のチャートをご覧ください。


▲6502 東芝チャート(出典:SBI証券、以下同)

株価には下落して上昇相場に転じた場合、直前の高値近辺まで戻ったところで下落に転じる習性があります。これは直前の高値付近で買って評価損を抱えた投資家が、やれやれ売りで売却するためです。

その売り物が一巡すると上昇に転じ、再び空売りのチャンスがやってくるというわけです。

上昇・下落のある程度の目安は、チャート緑色の5日移動平均線(短期線)の動きで判断できます。5日線が25日線(中期線)と50日線(長期線)を下回るとデッドクロスとなり下落が加速、逆に上回るとゴールデンクロスとなって上昇が加速していきます。

では、神戸鋼を上記のパターンに当てはめるとどうなるでしょうか。

▲5406 神戸製鋼所チャート

事件発覚直後は窓を開けての大暴落となりましたが、データの不正はあったものの、製品の強度には問題ないとの報道がなされ、当面は10月16日の安値774円が底になった可能性があります。

現在反騰相場に入っていますので、東芝株の例にならえば暴落前の水準である1,300円近辺まで戻る可能性が濃くなってきました。5日線と50日線の間にはまだ開きがありますが、抜いてゴールデンクロスを形成するようであれば1,300円までの戻りが視野に入ってきます。

したがって、空売りを仕掛けるとすれば1,300円の少し手前あたりが妥当な水準となるでしょう。

神戸鋼空売りのシミュレーション(100株の例)

1,290円×100株=129,000円で空売り
1,010円×100株=101,000円で買い戻し
129,000円-101,000円=28,000円の利益

利用する証券会社としては、信用取引の委託手数料が無料のSMBC日興証券がおすすめです。

参考:

同社では3.3倍のレバレッジを掛けることができるため、それを利用した場合は以下のように利益が拡大します。

1,290円×330株=425,700円で空売り
1,010円×330株=333,300円で買い戻し
425,700円-333,300円=9,2400円の利益

ここから貸株料が差し引かれますが、SMBC日興証券の場合年利1.15%なので、60日間保有の場合、427,500円×1.15%÷365×60=809円の貸株料となります。

このほかに買いよりも売りの申し込みが多い場合は、逆日歩というコストが発生します。逆日歩という名の通り、年利ではなく1日ごとに金利が発生するやっかいな仕組みです。買いと売りの比率を貸借倍率と呼びますが、1倍を切ると逆日歩となります。

上記投資例で、330株に1株1円の逆日歩が付いた場合は、10日間掛かったとして

330株×1円×10日=3,300円のコスト負担となります。期間が長くなれば費用は雪だるま式に増えていきます。

2017年11月2日現在の神戸鋼の数値は、売りが27,932,200株、買いが13,935,500株で貸借倍率は0.5倍でかなり高い逆日歩が発生しています。

2800万株近い膨大な売り残があり、あの大暴落時にいかに多くの空売りが仕掛けられたかがわかります。これがコスト負担に耐え切れなくなった売り方の買い戻しを呼び、ここ数日の神戸鋼の急騰に繋がっているのでしょう。

したがって貸株料よりも逆日歩の方がはるかに負担コストが大きいので、空売りを仕掛ける場合は貸借倍率(取り組みとも呼ばれる)を確認してから注文するようにすることが必須です。

9月中間決算発表!今後の見通しは?

10月30日、注目の2018年3月期の中間決算が発表されました。純利益は393億4,900万円で、前期の赤字から黒字転換。

しかしながら、配当については今後の補償問題の行方が不透明なことから中間配の実施は見送りとなりました。

通期予想は経常利益500億円としながらも、純利益の予想は未定としています。

この結果を受けた10月31日の終値は950円と3.26%の上昇を記録しました。これは主力銀行団が神戸鋼の経営不安を和らげるため、500億円の融資を発表したため買い安心感が台頭したことによるものでしょう。

この流れから11月1日の終値も47円高の997円と続伸。ザラ場(取引の途中)で1,000円大台を回復しました。

2017年11月2日現在の株価は1,084円。

川崎重工業が費用請求の方針、他社にも広がるかが注目!

懸念される費用の補償問題では、機械大手の川崎重工業が「部品の交換が発生すれば、当然費用は請求する」との方針を発表。今後他社にも広がれば五月雨的に費用の請求が発生する可能性もあります。

ただ、記者会見で経営陣も認めている通り、データの改ざんは組織ぐるみで行なっていたため、製品の強度に問題がないことを認識していた可能性があります。そうなれば部品の交換やリコールには至らないという見方も成り立つので、一時よりは事態の深刻さが薄らいでいるのも事実です。

今後の注目点としては、信用失墜による顧客離れで受注減がどこまで進むのか、2018年3月の本決算の数字にどう影響が出るかです。

東芝に続く超巨大企業の不祥事の行方と、株価の動きにしばらく目が離せない状況が続きそうです。

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