知られていない雇用調整助成金
一時より景気がよくなってきたと実感できる昨今です。
とは言え中小企業や小企業で下請けに甘んじている企業は、親会社からの原価引き下げのあおりを食って、厳しい経営を続けているところは多いでしょう。
産業構造が大きく複雑に変化する経済環境の中で、中小企業は翻弄されています。
人手不足が顕在化して、人材確保もままならないのが中小企業、そんな時に急に売上高が急減する事態が発生し、人件費の圧縮が急務になって従業員に退職を促すような対策を行わなければならない場合、事業主にとっては極めて厳しい苦痛を味わうことになります。
企業の継続のためにはあってはならないことです。こんな時、雇用調整助成金制度が大きな役割を果たします。かけがえのない従業員を手放さなくてもいいのです。
意外と知られていない、厚生労働省の助成金制度です。いざと言う時のために事業主の方は頭の隅においておきましょう。
目次
雇用調整助成金とは
景気の変動、産業構造の変化、その他経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、一時的な雇用調整(休業、教育訓練、出向)を実施することで従業員の雇用を維持した場合に助成される。
出典:厚生労働省
つまり、売上が減少して事業を縮小しなくてはならなくなった時、従業員を一時的に休業させ、あるいは教育訓練や関連会社に出向させることなどを実施した事業主が受給できるということです。
経営状態の悪化によって解雇を検討している事業主は、この雇用調整助成金を使用して従業員の雇用を守るということです。
雇用調整助成金の申請方法
国の法律による助成制度ですから、多少面倒な申請手続きがあります。
しかし、それほど難しい申請手続きではありませんから、後ずさりするほどではありません。
1. 休業等実施計画書の提出
都道府県労働局又はハローワークへ休業等実施計画書を提出します。
初めての場合は、雇用調整実施事業所の事業活動の状況に関する申立書及び、雇用調整実施事業所の雇用指標の状況に関する申立書、と共に雇用調整を開始する日の2週間前を目途に提出してください。
2回目以降については雇用調整を開始する日の前日までに提出してください。提出する書類はこれだけですが、記入方法については後記する雇用調整助成金ガイドブックを参照ください
提出書類はこちらからダウンロードできます。
2.休業又は教育訓練
休業又は教育訓練を提出した計画書に沿って実施してください。計画書の記載事項に変更があった場合は実施日前に変更届を提出してください。
3.都道府県労働局又はハローワークへ支給申請書を提出
休業または、教育訓練の実施後、判定基礎期間ごとに、その末日の翌日から2ヶ月以内に、休業または教育訓練が協定に定められたとおりに行われたものであることの確認を労働組合(又は従業員代表)から得て、支給申請を提出してください。助成金は申請してから約1ヶ月から3ヶ月以内に支払いされます。
受給額と受給条件
休業、教育訓練の場合、その初日から1年の間でMAX200日分、3年の間にMAX150日分受給できます。出向の場合は最長1年です。
休業を実施した場合の休業手当は賃金相当額の2/3です。(中小企業の場合)
出向を実施した場合は出向元事業主の負担額に対する助成金2/3+1,200円(1日あたり)。
但し、1日あたりの上限額は8,250円です。
次は受給条件です。
雇用保険の適用事業所であること。
売上高、生産高などの最近の3ヶ月間の平均値が前年同期と比べて10%以上減少していること。雇用保険被保険者及び派遣労働者数が最近の3ヶ月間の平均値が前年同期と比べて、中小企業の場合は10%もしくは4人以上増加していないこと。
その他、休業、教育訓練、出向に関する条件が個々にありますので、ガイドブックをご覧ください。
助成金申請は税理士、社労士に依頼するのがおすすめです
雇用調整助成金の申請、手続きは専門家である税理士、社労士に依頼するのがおすすめです。
助成金申請は手続きと時間がかかります。
提出書類等に不備があると、助成金を受け取ることができません。
費用はかかりますが、専門家である税理士、もしくは社労士に依頼するのが確実です。
補助金・助成金につい良い税理士は「税理士ドットコム」で無料相談できます。
社労士は「シェアーズ|就業規則作成・見直しの相談 」等のサイトで無料相談が可能です。
助成金申請に必要な就業規則の作成等、必要に応じて見積もりをしてもらうのが良いでしょう。
シェアーズでは「助成金診断」も可能ですので、その他の助成金についても無料で診断してもらいましょう。
まとめ
売上高や生産高がいつでも右肩上がりとはいかないのが企業経営の難しさです。売上高や生産高の変動のたびに従業員を増やしたり減らしたりすることも簡単なことではありません。
そんなことをされたら働く人はたまりませんし、労使の信頼関係の構築は不可能です。
こんなとき、従業員を退職をさせることなく、人件費の負担を助成と言う形で行ってもらえば、それはありがたいことです。
ただ銀行のようにスピーディーに査定や決済、支払いができないので、今一つ使い勝手がよくないのです。とは言え、中小企業にとって重宝な制度ですから積極的に使用されることをおすすめします。