雇用調整助成金の対象者は日本人に限定していません

景気の悪化や経済環境の変化により、売上高が減少したため、雇用の維持が難しくなった時、雇用調整助成金を申請すれば、雇用調整(解雇)を免れることができる場合があります。

企業の一時的な雇用調整(休業、教育訓練、出向)を実施することにより、従業員を解雇することなく雇用の維持をした場合、助成される制度です。

雇用調整助成金の申請は事業主が行い、助成金は事業主に支払われ、従業員に対して支払われるものではありません。

雇用調整助成金は外国人従業員であっても日本人従業員と同等に扱われます。外国人従業員であっても日本の労働基準法が適用され、社会保険や国民年金への加入が義務となっています。

全国都道府県で運用されている最低賃金法も当然遵守しなければなりません。決められた最低賃金以下で雇用すると罰せられます。

傾向として、全国的な景気回復基調にあって、労働者不足が深刻になってきました。

そのため外国人を雇用する企業が増えています。こうした中にあって、最低賃金で外国人を雇用することは可能ですが、最低賃金ではなく1時間1,000円に近づけるよう努力して欲しい、という要望が気運として高まっています。

雇用調整助成金と中小企業緊急雇用安定助成金

雇用調整助成金を申請する場合は企業規模に応じて上記助成制度を選択します。

上記2つの助成金制度が並行して運用されています。

主旨、目的は同じ内容ですが雇用調整助成金は大企業向けで、中小企業緊急雇用安定助成金は中小企業向けです。

違いは助成率が大きく異なり、中小企業緊急雇用安定助成金の方の助成率が優遇されています。支給要件や対象労働者はほぼ同じです。

雇用調整助成金の助成率は、休業、教育訓練、出向の場合、手当などの1/2、教育訓練費は1人1日1,200円。これに対して中小企業緊急雇用安定助成金は、それぞれ4/5、1人1日6,000円となっています。

ちなみに、支給要件は、最近3ヶ月の生産量がその直前の3ヶ月又は前年同期より5%以上減少していること。

これは中小企業緊急雇用安定助成金と同じで中小企業緊急雇用安定助成金の方は、前期決算等の経常利益が赤字であること(生産量が5%以上減少している場合は不要)、が加わっています。

対象労働者は、雇用保険被保険者であること、週の所定労働時間が20時間以上かつ、6ヶ月以上雇用されている被保険者以外の人。(中小企業緊急雇用安定助成金と同じ)

出典:厚生労働省HP

申請する場合、外国人従業員の在留資格を確認しましょう。

外国人が日本に在留することができる在留資格(ビザ)は現在27あります。

この内日本で就労できる在留資格は18種類です。事業主は雇用調整助成金を申請しようとする時は、事前に外国人従業員が適正な在留資格を得て、就労しているかどうか確認が必要です。

事業主が確認すべき確認項目は、パスポートに記載してある在留資格(就労ビザ)の内容が適法であるかどうか、在留期間が超過していないかどうか。そして入国管理局発行の在留カード(長期滞在のための滞在許可証)を保持しているかどうか、この2点は必須条件です。外国人従業員は常にこの2点は携帯していなければなりません。

雇用調整助成金申請時には必ず確認を行ってください。

不法就労が分かると、事業主及び本人が刑法(不法労働助長罪―3年以下の懲役、300万円以内の罰金)により罰せられます。

出典:外国人の不法就労とは

ハローワークへの届け出

雇用調整助成金の申請、変更、問合せは全て所轄のハローワーク(労働局)です。

又、外国人の雇用状況の届出(事業主の義務)もハローワークです。外国人の雇用状況の届出を怠ると30万円以下の罰金刑が課せられるので要注意です。雇用状況の変更、離職なども必ず届出を行いましょう。

まとめ

雇用調整助成金は対象とする従業員が外国人であっても全く関係ありません。従って事業主は雇用調整助成金を申請する時に、外国人だからといって除外する必要はありません。

ただし、その外国人が日本の法律の基づいた適正な在留資格及び在留カードを保持しているかどうかは必ず事前に確認しておかなければなりません。外国人従業員本人も知らずに在留期間が過ぎていたり、当初得た在留資格とは違った職種に就労している場合があります。

こうした場合は速やかに監理団体(商工会議所、商工会、中小企業団体、公益社団法人)及び入国管理局、ハローワークに届出して指示を仰ぐことになります。不法就労の罪に問われないようにしましょう。

⇒雇用調整助成金の申請方法(中小企業におすすめ)