相続税を扱ったことがない税理士がいます。

税理士の国家試験受験科目を見ますと、基本中に基本の簿記論と財務諸表論は必須科目。

法人税法と所得税法はどちらか、相続税と国税徴収法、消費税又は酒税法の中から1科目、住民税又は事業税と固定資産税から1科目、計5科目となっています。

つまり相続税は選択科目です。

相続税について勉強していなければ、知らないのは当然です。おまけに相続税は受験科目の中では、最も難しく勉強しなければならない範囲が広く、他の科目の2倍近くあります。先のことは考えないで、とにかく資格が欲しい人はまず選択しません。

税理士なら税務のことを何でも知っているか、と言えばそれはNoです。このように根本的に勉強してなければ、分かるわけがありません

しかし、将来のことを考えている1部の受験生は、相続税をとっておけば、独立開業した時に有利だということを知っています。

相続税を扱う税理士の所得が高いこと、開業した時の強力なセールスポイントになること、本当の相続税専門税理士が少ないこと、などを知っているわけです。

あえて、難しい科目に挑戦する受験生が増加しているのは、需要が増えてきているからです。

税理士の仕事は

税理士のほとんどが、法人税や所得税に関する税務のコンサルティングです。一般企業の経理代行から、財務諸表の作成、指導、節税対策、確定申告書の作成、申告代行、給与計算、年末調整、そしてさらに、資金繰り対策指導、融資援助、経営指導など広範な守備範囲となっています。

中には高度な企業統合や合併、合弁会社設立などを専門にする税理士もいます。

ほとんどの税理士は、個人、法人と言わず、このような業務の全て又は1部を担当して、毎日忙殺されているのです。

中には、助成金申請手続きに特化したり、新規開業や会社設立、事業承継などを専門に扱う税理士もいます。

ここに、相続税の分野が加わります。

相続税の扱いは、以上の税理士の主な業務とは別格に考えている税理士も多いようです。

これらの仕事を何でも引き受ける税理士もいます。税理士の主な仕事は法人税や所得税、相続税、消費税などの申告代行です。法人税もやります、相続税もやりますでは、両方とも、表面的な業務しかできない恐れがあります。

相続税専門税理士の仕事

法人税や所得税の申告、財務諸表の作成、経営コンサルタントなどの業務とは大きく異なります。全然分野が違うと考えてもいいのでしょう。

相続が発生して、相続税を申告するまでには、数々の複雑な手続きがあります。そして、相続税に関する法律も多岐にわたっています。相続税で最も重要な節税対策は、各種の特例が完全に理解していないとその特典が生かせません。

相続税は専門の税理士に依頼すべきです。相続税の手続の流れを見るだけでそれが理解できると思われます。
主な相続税手続きの流れ

  • 相続人からの手続依頼による、聞き取り調査
  • 被相続人の戸籍の取り寄せ、各金融機関の残高確認
  • 相続関係図の作成
  • 財産目録の作成
  • 財産評価:土地、建物などの評価で最も難しく、税理士によって評価が異なる。特に広大土地の評価。他にも非上場会社の株式や美術品、骨董品などの評価もある。
  • 節税対策:生前対策と相続発生後対策とある。アパートを建てる、生命保険、養子縁組、信託制度、110万円の基礎控除、配偶者への贈与、相続税生産課税制度、住宅取得資金贈与、教育資金の贈与、小規模宅地の控除など非常に多くの対策がある。
  • 遺産分割協議書の作成
  • 相続税申告書の作成、申告代行
  • 各種財産の名義変更に必要な書類の準備
  • 相続税調査の立会
  • 相続税追徴金と還付手続き

これらを相続人1人で行う人も中にはいます。法定相続人が少なく、遺産分割協議書も必要なく同意書くらいで済む人、相続税がそもそもかからない基礎控除額以内(遺産分割協議書は必要)の人は、長期間手続きにかかりきりになりますが、やってやれないことはありません。

通常は上記のような流れで相続手続きが行われていきます。専門の税理士でないと、とても大変な仕事です。

まとめ

被相続人に多くの財産がある人の相続対策は本当に大変なことです。これがもし遺言書がない場合は、相続税専門の税理士がかかりきりで担当してもいい加減です。遺産分割協議で相続人同士の争いになった場合は最悪です。

当然税理士では対応できませんから、弁護士の出番となります。相続税専門の税理士は弁護士との連携も必須です。不動産の評価の段階では、不動産鑑定士の応援を求めることもあり、名義変更などは司法書士に依頼することになります。

相続専門の税理士は、この独特な相続税手続きのスキルを持つと同時に、弁護士や不動産鑑定士、司法書士などと連携していくグループ業務のノウハウを持つことも重要です。

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