相続トラブル年間17万件以上

相続にトラブルがつきもの、遺産総額が少なくてもたくさんのトラブル事例があります。お金持ちならなおのことトラブルになり易い。

骨肉の争い、なんて嫌な言葉は相続の場面で使われる専用の言葉にも思えます。

仲の良かった兄弟が、相続を境に一気に仲違いして、やがてお付き合いも疎遠になっていくケースも決して少なくありません。

相続のトラブルの原因は、そのほとんどが被相続人の遺言書がない場合に起こります。裁判所で調停や裁判事例の中にも遺言書さえあれば、ここまで揉めなくてもいいのに、という事案が相当数含まれているそうです。

最高裁判所のデータによりますと、遺産相続の調停あるいは裁判事例では、全体の32%ほどが相続額1,000万円以下、43%以下が5,000万円以下、13%以下が1億円以下となっており、相続額5億円以下またはそれを超える人は8%くらいです。相続額5,000万円以下が75%も占めています。

この傾向は今後も益々顕著になるかもしれません。

今後も増える相続トラブルの事例

平成27年1月1日から相続税の基礎控除額が大幅に引き下げられました。以前の相続税基礎控除額は、5,000万円+1,000万円×相続人数、でした。これが3,000万円+600万円×相続人数、になりました。

相続人2人の場合ですと7,000万円まで相続税はかからなかったのですが、平成27年からは、これが4,200万円までとなり、相続税を払わなければならない人が、一気に増加する、と予想されています。

都市部で一戸建て住宅に2世帯で住んでいる人は、まともに該当する可能性があります。

これが、遺産分割で揉めるもとになります。例えば、被相続人と同居していた息子は、相続税とは縁遠い存在である、と思っていたのに、相続税課税範囲が一挙に下がって、被相続人から相続した不動産に課税される可能性があることが分かった。

そのため不動産の評価額を下げるべく、基礎控除や小規模宅地など控除されるものは何でも使い、税理士とも相談して評価額を下げる工夫を行った。

これに対して他の相続人から、評価を下げられたら自分の取り分が少なくなる、ということで猛烈に反発があり、遺産分割協議が揉めてトラブルになるケース。

あるいは、相続税の課税範囲が下がったことにより、相続税を払わなくてはならなくなり、相続人の中に相続税が払えない人が出てくるケースもあります。特に相続財産が不動産だけの場合、不動産の1部を持分だけ相続しても、現金を相続していないため、新たに相続税分の現金を用意しなくてはなりません。

これが、遺産分割協議に大きく影響することになります。

トラブルになり易い相続税と遺産分割手続き

上記の例は、相続税と遺産分割手続きをごちゃまぜにした解釈をしているために又は勘違いで起こるトラブルです。評価額を下げる各種の控除制度は、あくまでも相続税法の範疇であり、遺産分割とは全く関係ありません。

よくあるケースは相続人の長男の人が、財産の分割を独善的に行うケースで、それに対して他の相続人から不満が出て、調停に持ち込まれる場合です。調停になった場合は、財産の評価は裁判所の指示に基づいて行われます。

相続税の納付期限を盾にして、強引に遺産分割協議書に印を押させるトラブルもあります。相続税の納付期限と、遺産分割協議書の作成期限がごっちゃになっています。相続税の申告、納付期限は10ヶ月以内です。遺産分割協議書の作成期限は存在しません。

但し、基本的に相続税申告時に遺産分割協議書が必要ですが、分割協議が成立していないことを理由に、一旦法定相続のルールに従って納税して、後日分割協議が完了した時に修正申告する方法もあります(3年以内)。

まとめ 相続のトラブルが起きないために遺言書の作成を

相続のトラブルの範囲は相続人間の狭い範囲で起きます。それでも相続のトラブルの種類は、相続人が調停を依頼した件数だけあります。トラブルの内容が多岐にわたるということです。

傾向としては、遺産分割の不公平、相続人の中の例えば長男の人が有利になるような分割の仕方、あるいは、財産の隠匿、遺産が不動産だけの場合、寄与分の主張(被相続人の財産形成や維持に貢献した人に相続分を上乗せできる制度)、離婚した妻子の相続権の主張、などのトラブルが比較的に多いようです。

相続トラブルは正に人生の負の縮図のような感があります。誰でも将来起こりうるトラブルですから、それらを回避するような対策は当然考えておかねばなりません。

そういう面では遺言書の効力は大きく期待できます。正規の遺言書が多くのトラブルを未然に防ぎます。