私は現在舞台活動を中心に生活しているのですが、生活が安定するまではバイト三昧の日々でした。
しかしバイトばかりに時間を割くわけにもいかず、舞台活動と両立しながらできるものはないかと探していたところ、あるおいしいバイトを紹介してもらったのです。
・バイトの仕事内容
そのバイトとはホテルにある結婚式用の神殿の巫女をするものでした。
神官と違い巫女は資格がいらないので仕事内容さえちゃんとできればだれでもなれると言われました。1式あたり準備や片付けも含めて約30分。
それで1式あたり2500円~3000円でした。
・バイトの条件・待遇
ただし条件もありました。まずは未婚であること。そして黒髪であり、派手な化粧をしないということでした。
結婚式という一大イベントのため、万が一の時でも対応できるよう集合時間は式開始の1時間半前でした。
ですが、ホテル側から社員食堂の食券や神殿関係者専用の控室もあり、1時間半前に来てもご飯を食べに行ったり控室でのんびりできたりと、特に不満を感じることはなかったです。
ですがバイトに入る前に、結婚式が一生に一度のイベントであり取り返しのつかないものであることから、一度大きなミスをした時点でやめてもらうという説明を受けました。
初めていわれたときはとても緊張しましたが、式自体は15分でおわることと、巫女は常に二人一組で行動するので大きなミスは起こり得なかったです。
・バイト現場の地域
東京都23区内の神殿を所有するホテルでした。基本勤め先のホテルは決まっていますが、人手不足の系列ホテルに行くこともありました。
・どうやってそのバイトを見つけたのか
高校時代の友人に紹介してもらいました。その友人がそこをやめてしまうので代わりの人を探していたのと、私自身も新しいバイト先を探していたのでお互いの利益が合致しました。基本そのバイト先は人柄を重視するので公にはバイトの募集はせず、信頼している人からの直接の紹介で新しいバイトの人を探すというかたちをとっているようでした。
・バイトの思い出
実はそのバイト先の前のバイト先で、人間関係が泥沼化した様子を目撃してしまってから、新しい環境に飛び込むのが億劫になっていました。
紹介してくれた友人も「みんないい人だし、適度な距離感をもって接してくれてるから大丈夫だよ」と言ってくれましたが、いまいち信用できていませんでした。
しかし実際行ってみると本当に神殿関係者の全員がいい人ばかりで、それぞれが携帯をみたり本を読んでいたりと同じ部屋で別々の行動をしていても全く居心地の悪さを感じないほどでした。
その前のバイト先はチェーンのカフェだったのですが、会社の基本理念から店舗の基本理念(しかもA4の紙ぎっしりに書いてあるもの)をみっちり覚えさせられ、仕事中でも休憩中でも常に「お客様にとってはたったの1時間でも、居心地のいい空間を全力で提供できれば私たちにとっては一番の幸せなんだ」といった洗脳じみた教育を受けてきました。
故に職場のほとんどの人(特に社員)が病んでおり人間関係も空気も悪くなる一方で、3か月もたたずに辞めていく人が後をたちませんでした。
しかしそれに比べ、結婚式というのは一生に一度のことで仕事をする側だってもっと誇りや独自の教育法をもっていいはずなのに、そこに勤める人たちは自分たちのプライベートも大事にする人ばかりで、仕事と休憩のオンオフをしっかり切り替える人たちでした。
「結婚式をここであげてくださるご家族のためにも仕事をしっかりするのはもちろんだけれども、私たちだって自分のことがあるんだから、休憩中にまで結婚とは、私たちの仕事の重要性とは、など語る必要はない。
休むときはしっかり休んだ方が、貴重な一生に一度のイベントのお手伝いをしっかりできる」。
そういわれたとき、「ああ、仕事ができる人ってこういう人なんだな」と思いました。
もうこの式場では働いていないのですが、バイトとはいえここでの経験が私の人生の中での大きな糧になったと胸を張っていえます。
・どんな人におすすめしたいか
お金をもらう以上、誰だって仕事は真剣に取り組むと思います。ですがやはり「一生に一度」ということで責任感がとても求められる仕事ですので、プレッシャーに耐えられる人でないとできないと思います。
でもそれさえできれば、単価も高いし食事付きだしということで、これ以上おいしいバイトはないですよ。