被災地での救援者ストレス
2016/05/15
被災者の方々のためにたくさんの関係者が活動しています。消防、警察、自衛隊の救助隊、医療機関、行政、医療班、ボランティアの方々そして私たちDMATです。
被災地のため被災者のため全力で活動にあたります。身体も精神も非常に疲れますしストレスも感じます。災害救援活動に参加するすべての方々もストレスにさらされやすく災害救援活動を行う救援者は二次被災者とも呼ばれます。
「救援者がそんなことで被災者のために働けるのか?」という声が聞こえそうですが災害救援活動者はすべて自分を押し殺して怖いものを怖いと言わず恐怖や疲れから今すぐにでも撤退したい逃げ出したいという心の葛藤と戦い活動しています。その闇は被災者の方々と同じくらい奥深いものです。
今回はDMATだけではなく災害救援者すべての方々に言える災害活動時に感じるストレスを最小限にするためにまた自己のストレス症状を知り対策を立案する必要があることから救援者ストレスについてお伝えしたいと思います。
災害救援者が受けるストレス
災害現場はいうまでもなく悲惨な現場が多いです。それは被災者の方々と一緒です。被災地ではライフラインの途絶が突然起こってしまい不便な被災生活が始まってしまいます。劣悪な環境ということですね。
それはDMATをはじめとする災害救援者も同じことが言えます。地震なら余震やさらに再度本震くるかもしれないという恐怖、トイレや入浴電気のない生活、そのような環境下の中での活動となってしまいます。
次に実際の活動時のストレスですが私たちDMATは医療活動をします。普段の臨床でも出血がひどかったり骨折で変形があったり人間の体の損傷をよく見ることがあります。
被災現場での傷病者の状態は見るに無残です。普段では見ることのない損傷の激しい遺体(首がない、胴が切断されている、四肢がない、火災で黒焦げになっているなど)を目にすることがあります。
私は看護師になって初めて患者さんが亡くなった時にその魂が抜けてしまったご遺体を目の前にした時衝撃を受けてしばらくは動くことができずに先輩看護師に抱えられながらナースステーション連れて行かれたのをよく覚えています。
いかがでしょうか?それ以上の状態になった人間の体を見た時に人間なら平常心でいられることは少ないと思います。
被災地で活動する際にその被災地内で肉親や友人がいる場合も大きなストレスになってしまいます。無事でいるだろうか?無傷でいてくれればいいけどもし最悪な結果になっていたらどうすればいいのだろうか?そんな心配がとても大きなストレスとなります。
DMATの隊員で死者が出たという話は私はまだ聞いたことはありません。もし一緒にDMATとして活動していた仲間が死亡してしまった場合どうなるでしょうか?深い悲しみに暮れてしまい自責の念にかられてしまうと思います。
被災地で災害救援者は一生懸命救援活動や医療活動を行います。しかし一部の心無い方々に活動を批判されてしまうことがあります。自分たちは頑張っているのになぜ?その疑問とストレスがとても大きくなってしまいます。
ストレス対策の目標とは
まずDMAT隊員個人としてのストレス対策としては任務の内容を十分に理解しておくことです。また災害現場は非常に大きなストレスを感じる環境ということも理解しておくことです。
またストレスチェック表などを用いて自分がどのくらいのストレスを耐えられるのか把握しておくことも重要です。そして平時から自己の健康管理と同時に精神的なコントロールができるように鍛錬も必要になってきます。もし現地でストレスがMAXになった場合の解決方法も事前に確認することも重要になってきます。
ストレス処理の対策の方法
DMATを含めて災害救援者全員に言える救援者の陥りやす3つの危険というものがあります。
- あなたはスーパーマンではありません
- 自分の背中は見えません
- 救援者は隠れた被災者です
このような意識付けが大切です。また災害救援者のストレス反応は抑うつの症状や不安症状だけではなくウキウキ感や自分が何でもできる英雄感も一見して好ましいと思われることも注意したい症状の一つなのです。
ストレスに対する自己管理法というのがあります。
- プラス思考による対応が効果的
- 周囲の制約を認識し自分に無理をしない
- 焦点を絞って考えたり合理的に考えたりする
- 自分の好ましい姿をイメージする
- 励ましの言葉を自分自身にかける
- ストレスの症状に対して備えをする
- ストレス反応は人それぞれなのを知る
- 問題の感情的な部分を除いて処理をする
などこのような自己管理法が必要と言われています。
またストレスの予防方法としては
- スーパービジョン
- チームで救援を行うこと
- 災害時のストレスに理解する
- 環境整備
- 適度な睡眠や休養を取れるようにする
- デブリーフィーングを行う
などがありますがなかなか厳しい環境下におかれているため難しいができるだけ実施するようにすることが大切と言われているのです。
私たちDMATを含めて災害救援者は様々なストレスとも戦いながら被災地でたくさんの被災者の皆さんのために活動を行っているのです。