前回の記事「2019年消費税率10%に増税、今から準備しなければならない経理課の仕事とは?」から動きがありました。

2018年10月15日の閣議で安倍首相は、2019年10月1日の消費税10%への引き上げについて予定通り行うことを明言しました。

過去2回も延期された経緯があり、余程の経済的な環境の変化がない限り3回目の延期はあり得ないとしています。

来年10月の実施に向かって梶が切られたように見えますが、本当に実施されるのか、再再延期の可能性も0ではない、という人もいます。

その理由は今後の政治スケジュールにあります。安倍首相が再選されてから、これから、臨時国会を皮切りに、2019年4月統一地方選挙、5月の改元(陛下の譲位)、7月の参議院議員選挙、10月の消費税増税?と続きます。

そしてここに憲法改正の賛否を問う国民投票が入ってきます。

国民投票は今臨時国会で原案を提出し、衆参両院本会議で2/3の賛成を経て、改定案を発議、そして2,3か月後に国民投票という手順となります。国民投票は賛成50%で憲法改正が成立します。

消費税増税と国民投票

憲法改正は安倍内閣の看板政策です。時期到来とみてどうしても通したい法案です。

これが消費税10%増税実施日の前に来ます。国民投票で50%以上の賛成を得るためには、消費税増税は大きな足かせとなっており、これを再再延期するという首相の決断が不可欠、という意見も根強くあります。

今回の消費税増税は、増税によって5.6兆円ほど税収が増加します。当初は増収分のほとんどが借金の返済財源と社会保障の充実のために使われる予定でしたが、それが変更されて、借金返済が大幅に減額されそこに育児世代への投資が入りました。

社会保障の充実はそのままです。税収分の使い道が変更になったわけです。これが来年度の参議院選挙で民意が問われることになると思われます。国民としてはこの方が有難いのですが、そのためには増税に賛成しなくてはならない。

消費増税のスケジュールの中にこのように国民生活に直結する重要法案が入っており、それらが複雑にからみ相互に関係し合っています。

消費税10%増税、憲法改正、国民投票、国民生活などがそれぞれ影響し合いながら、どれかに決定していくことになります。

消費税10%増税への道は簡単ではなく、再再延長もあり得る話です。

消費税増税によってどんな影響があるか?

消費税の現行分8%にプラス2%、2%が確実に上がるわけですが、既にあらゆるものが値上げラッシュになっており、そこにブラス2%ですから、どこの家庭の経済は大変なことになります。

素直に賛成するわけがありません。

家庭経済を守るため防衛策として、クレジットカードや電子マネーの使い方チェックや、外食回数を減らす、激安商品のまとめ買いや、安いもの情報の調査、電気、ガス、水道の節約手段の徹底など、こまめな対策を実施して対応しなくてはなりません。家庭経済への影響は大ありです。

数字で消費税増税の影響をみていきましょう

年間の消費税額は、その人の消費の支出額によります。収入の多い人の方が買い物に使う金額も大きくなり、消費税負担額も多くなります。

一方、年間の給与が少ない人であっても食料品や生活物資の消費は必要ですから、収入の割合で見ると収入の少ない人の方が増税の影響を受けやすくなります。

これは1つの試算ですが、年収200-300万円の人で消費税8%の時、年間13.1万円、消費税が10%になると17万円で負担額は3.9万円増加します。これが年収1,000万円の人の場合は8%で25.3万円、10%になると32.4万円、負担増は7.1万円です。

3万円も高所得者の方が多く負担しています。

しかし、年収の占める消費税負担割合で見ると、年収200-300万円の人は年収に対する消費税支出の割合は8.9%で、ほとんど消費税率10%に匹敵します。年収1,000万円の人は3.4%です。

収入の低い人ほど年収に占める割合が高くなります。これを消費税の逆進性といいます。所得の低いひとほど負担する割合が大きくなることを逆進性といいます。

(出典:消費税10%増税でいくらの負担増になる?年収別まとめ

この逆進性も含めて税の不公平感をどこまで除去できるかも今の為政者に求められます。

ではどんな準備が必要か

消費税10%増税に合わせて軽減税率の制度も施行されます。軽減税率8%に適応されるのは主に飲食料品です。

外食は軽減税率の対象ではありませんがテイクアウトは適用されます。つまりお店によっては消費税率8%と10%の二通りになりますから会計事務関係のハードヤソフト、システムなどの変更準備をしえおかなければなりません。

また政府の増税後、小売店においてはクレジットカード、電子マネー、コード決済(QRコード、バーコード決済)といったキャッスレス決済をした場合に限り、一定期間に消費税増税分に相当する2%をポイントにて還元する、と言っています。

これで実質的に10%になってもポイント2%還元で8%で買い物ができる、という制度も盛り込む予定です。

しかしこれも小売店側では会計システムの変更を必要とするので、いつから準備段階に入れるか心配しているわけです。

その他、増税前にできれば行いたいこととして、高額商品の購入(車や高級家具など)、高額日用品、金地金、そして不動産があいますが、新築建物は政策的な配慮があると思われます。

※軽減税率については
軽減税率をわかりやすく解説【新聞がなぜ対象?本当に市民のためになるのか?】

最後にこれで経済はよくなるのでしょうか

消費税2%の増税は、消費者の実質的な収入が増えない限り2%の消費量減少という形で現れるでしょう。

これは既に前回の消費税5%から8%に増税された時に実証されています。経済成長が伴わなければ消費を維持すことは難しい。今回も同じ轍を踏むことになるのでしょうか。

今回も期待を持って景気の浮揚が現実的になるとは思われない、という民意が多いと思われます。

消費税10%の実施は色々な意見があり、百花繚乱です。残念ながら今ここで確定的な論を述べることはできません。どうなるのか分からないというのが正しいのかもしれません。

政府は非常に難しいかじ取りをしなくてはならない段階に追い込まれています。

まとめ

ガソリン代が異常に値上がりしています。生鮮食料品も季節要因があるとしても相場が上がっています。しかし所得は増えていません。庶民感覚では、この上増税なんてとんでもない、と思っている人が大部分と思われます。

政府の視点では国の財政は破綻寸前、社会保障は少子高齢化が益々進み政府の台所事情もまた待ったなしの状況に追い込まれています。根本的には消費税10%では全く追い付かず、早々に20%に持っていきたい姿勢が見え隠れしています。

これから先の財政の流れは、いずれにしても増税が基本的な路線でしょう。なるべく早く消費税25%まで増税すべき、という考え方もあるくらいです。増税と生活経費の値上がり、実質所得がこれに追い付かない以上、国民の不満は益々ボルテージが上がっていきます。

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