同族会社のすべてが法人税において留保金課税となるわけではありません。留保金課税となる場合は特定同族会社である必要があります。では特定同族会社というのはどんな会社なのでしょうか?特定同族会社についてみていきましょう。

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なぜ留保金課税があるのか?

留保金課税とは法人が儲けたお金を株主に配当せずに会社に留保しておくというものです。同族会社では対象となる法人の上位株主3グループの株式保有割合が対象法人の発行株式数の50%を超える場合に、対象法人は同族会社になるというものでした。ということは上位3グループの配当金は、同族会社が配当する金額の50%を超えるものになるということです。

所得税では配当所得にも所得税がかかります。このようなことから、株主にあえて配当せずに儲けたお金を留保しておくことで株主の所得税を意図的に減らすということができます。租税回避にならないように留保したお金に特別税率で課税するのです。これが留保金課税される理由です

特定同族会社とは?

同族会社の中でとりわけ一定の条件を満たした法人は特定同族会社となり、留保金課税の対象とされます。特定同族会社であるために法人は資本金が1億円を超えていないといけません。

資本金が1億円以下の場合は、資本金5億円以上の法人に完全支配されていれば資本金1億円超えと同じとみなされ特定同族会社の対象会社としての条件を満たします。さらに、特定同族会社であるためには、被支配会社であることが必要になります。

関連記事:同族会社ってどんな会社?

被支配会社とは?

留保金課税対象となる特定同族会社となるための条件としての被支配会社とは一体どんな会社なのでしょうか?同族会社では上位3株主グループが保有する株式割合が対象法人が発行する発行済み株式総数の50%超であるということでした。

被支配会社とは、上位1グループが保有する株式が対象法人が発行する株式総数の50%超えである場合に、その対象会社は被支配会社だということになります。

特定同族会社であるためにはもう一つ条件がある

特定同族会社の条件をここまで満たしたなら、対象会社は特定同族会社だといいたいところです。ですがもう一つ条件があります。それは被支配会社でない株主を除いて判定したとします。

このときも対象法人が被支配会社であれば、その対象法人は特定同族会社になります。この条件は株主に対する条件であると考えます。今までは株主が発行している発行済み株式数でなく、対象法人が発行している株式数についてのみふれていました。株主法人が被支配会社かそうでないかを検証する必要がでてきたのです。

第一順位の株主法人が被支配会社でない場合

「対象法人から被支配会社でない法人を除いても、対象法人が被支配会社であるとき。」これが特定同族会社であるための最後の条件です。条件の中で被支配会社でない法人というのがでてきます。第一順位の株主法人が被支配会社ではない場合は、こうなります。もし第一順位の株主法人が被支配会社でない場合は、この法人を除いて、もう一度第一順位の株主グループを選定しなおします。

つまり、第一順位の株主法人が被支配会社でない場合は、本来は第二順位である株主法人が第一位の株主グループになります。第2位の株主グループを一位とみなして、対象法人が50%超の株式を保有されているか否かの検証を再度するということになります。このときこのような不都合がおこります。100%のうち50%を超える株式割合が被支配会社でない本来の株主グループに支配されていた。

だけど第一順位の株主グループは被支配会社でないため除外され、第2位順位の株主グループで再度検証することになった。第一順位の株主グループは100%のうち50%超を保有していたのだから、第二順位の株主グループは残りの株式の最大の数を保有していたとしても、決して50%超の株式を保有することはありません。

第一順位の株主グループが51%の株式を保有していたののなら、第二順位の株主グループは最大でも49%であり50%超えることはないからです。ですから第一順位の株主法人が被支配会社でない場合は、対象法人は新しい第一順位の株主グループ(本来の第2順位)に50%超の支配をうけることはないので、対象法人は特定同族会社ではないということになります。

第一順位の株主法人が被支配法人である場合

第一順位の株主法人が被支配法人であれば、そのまま第一順位として対象法人の株式を50%超保有する法人としてカウントされるので結果、対象法人は第一順位の法人に50%超支配される支配法人であることになるので、対象法人は特定同族会社ということになります。

個人が第一順位の株主グループであり対象法人の株式の50%超を保有する場合

個人は法人ではありません。ですから特定同族会社である条件である「①被支配会社であること(対象会社が)。②被支配法人を除いても被支配法人であること。」において、②は条件が法人なので、個人の株主は関係ありません。株主グループは法人でも個人でもどちらにもあてはまります。

ですから、対象法人は個人を第一位の株主グループとして考えることができるので、個人によって50%超の支配をうけていても被支配会社となります。よって①②のどちらの条件もあてはまるので、対象法人は特定同族会社として留保金課税の対象となります。

参考:特定同族会社の特別税率(国税局HP)

まとめ

留保金課税の対象となる法人は特定同族会社であり、その条件は、対象法人、株主の両方ともが被支配会社でないといけません。被支配会社というのは第一順位の株主グループによって、発行済み株式総数の50%超が支配されている場合、支配されている会社のことをいいます。

留保金課税の対象である特定同族会社とは、会社の配当金が一部の株主グループに沢山ゆきわたるという関係を持つ会社だといえそうです。

また、実際の特定同族会社判定は専門の税理士に相談することがおすすめです。