法人税では法人を同族会社と非同族会社にわけれます。大企業の場合は使用人が会社の意思決定をすることは少ないですが、家族経営などの場合では使用人が役員となる場合があります。どんなときに使用人が役員となるのでしょうか?逆に職権上の地位をもちながら、実質は使用人と同じという場合もあります。どちらについてもみていきましょう。

1.職権上の地位を持つ人々

職権上の地位は沢山あります。社長、理事長、代表取締役、代表執行役、副社長、専務、常務、取締役、合名会社、合同会社,合資会社の執行役員、会長、相談役などの地位です。

2.役員と呼ばれる地位を持つ人は?

どの様な条件でも役員と呼ばれる人がいます。代表取締役です。この地位をもつ人は必ず役員となります。

3.役員と呼ぶための条件

法人税では役員という地位を得るためには、条件があります。①経営に参加していること ②意思決定権を持っていること このとき、意思決定権をもっていることというのは、株式または議決権の保有率で50%基準、10%基準、5%基準のすべてを満たす場合となります。

4.50%基準とは?

50%基準を満たすとはどういう意味なのでしょうか?同族会社では株主グループというものをつくります。株主グループは株主(個人または法人)と特別な関係にある個人または法人のことです。個人Aさんが法人Bの発行済み株式数の50%超えを支配しているなら、法人Bと個人Aさんは特別な関係にあるといいます。

そして個人では親族や事実婚など生計維持を個人Aさんによってされている人々ということになります。株主グループとされる人または法人が保有する株式または議決権の数が、同族会社または非同族会社が発行する株式数の50%超える部分について、上位3つの株主グループがいるとき、対象となる個人または法人がその上位3グループに入っていれば、50%を基準をみたしているといえます。

5.10%基準とは?

50%を基準をみたした株主グループに個人Aさんの株主グループが入っていたとします。このとき、個人Aさんの株主グループがもつ株式割合が全体の10%を超えていれば10%基準をみたしたということになります。上位3グループが保有する株式割合が、それぞれ、32%、10%、8%だったとします。個人Aさんの株主グループは第一位の株主グループの32%であれば10%基準を満たしたことになります。10%を保有している場合(第2位の株主グループ)では10%は10%超えとならないので10%基準を満たさないということになります。

6.5%基準とは?

個人Aさんの株主グループは50%基準、10%基準をみたしていたとします。このとき、5%基準というのは個人Aさん自身の株式保有割合が全体の5%超であれば、5%基準を満たしたということになります。もし個人Aさんが3%しか保有していなかったとします。このとき、配偶者も3%持っていれば二人で6%なので5%を超えて保有できたいたとなります。

7.使用人が役員となるとき

個人Aさんが会社の経営にかかわっていて、かつ50%、10%、5%基準を満たしていたのなら個人Aさんは使用人でありながら、会社の意思決定権も握っている人物だと捉えられます。このとき個人Aさんのことを、みなし役員といいます。会社設立時は使用人であった人が実権を握ったというニュアンスがあるのです。

8.みなし役員は使用人だけではない

みなし役員と呼ばれる人は使用人だけではありません。会長や相談役です。この人たちは職権上の理由で役員となっています。本来は経営には参加しません。ですが会長や相談役が経営に参加している場合は、みなし役員とみなされます。

9.取締役経理部長という取締役と使用人を兼務している人について

取締役でありながら、使用人としての仕事もしている人がいます。取締役経理部長のAさん。Aさんが働く会社が非同族会社か、同族会社かでAさんの地位は変わってきます。

9-1.非同族会社の場合

Aさんが非同族会社に所属している場合は、こうなります。取締役でありながら使用人の仕事もしている。この場合Aさんは使用人兼務役員という地位になります。

9-2.同族会社の場合

Aさんが同族会社に所属している場合は、Aさんに対して、50%基準、10%基準、5%基準を満たしているかどうかを判定します。満たしていればAさんはみなし役員となります。満たさない場合は、使用人兼務役員となります。

10.使用人兼務役員とは役員でありながら実権を握らない人

使用人兼務役員は役員でありながら、意思決定権がない人となり、名前だけの役員ということになります。これに対して、使用人だけど、株式や議決権保有条件を満たした人はみなし役員とみなされ、役員でないけれど実質的に権力を握る人だということになります。

11.みなし役員があるのは同族会社だけ

非同族会社の場合は、使用人で実権を握る人がいても、その人がみなし役員とみなされることはありません。みなし役員があるのは同族会社の場合だけになります。

いかがでしょうか?同じ役員でも実質的な意思決定権を握る人をみなし役員とみなして、特別に扱うのですね。みなし役員になると役員とみなされるので、会社はその人に給与を支給した場合、役員報酬と考える場面がでてくるようです。

https://www.nta.go.jp/taxanswer/hojin/5200.htm