法人は特別償却準備金というものを資本の部に積み立てておき、これを法人税法上で損金算入に全額したのち、毎年一定額を益金算入で相殺していくことで減価償却の繰延ベができるというシステムがあります。

収益が多い年度は損金を多くして節税をしたい場合の年度におすすめな方法です。

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1.特別償却準備金と特別償却

法人は特別償却をする場合はある一定の資産であること等のある条件があります。この条件を満たしている場合はもちろん特別償却準備金ということも選択として利用できます。

ですが特別償却対象資産でなくても、特別償却準備金をつみたてて、その年度の減価償却費を増大させて資産取得初年度は節税し、翌年度から前年に大きく損金算入した額を益金化して、大きく損金算入した額分の法人税を取り戻すということができます。

これを特別償却準備金を使って、資産取得年度の減価償却費を増大させて節税するための減価償却費の繰延べといいます。減価償却では同じ種類の資産はグルーピングといって減価償却超過額の計算をまとめてすることができます。このとき、特別償却をしてしまうと、昨年度購入した同じ資産があったとしても、特別償却分だけその資産が多く損金算入されることになるので、減価償却超過額のグルーピングが出来ないという事態が起こります。

これに対して、特別償却準備金は資産の取得価額を費用化することはなく、資本の部に計上した額を計上年度に損金化することになるだけなので、BS上の資産そのものの額は何ら変化しないということになります。

ですから特別に資産の取得価額から本来の普通償却分だけの費用分が減額されるだけなので、他の前期以前に購入した同じ性質の資産とグルーピングができるということになります。

2.特別償却準備金を損金算入するとは?

特別償却は資産取得年度において、普通減価償却額に+して減価償却費を損金として計上できるものでした。特別償却準備金は計上するのは資本の部であり、繰越利益剰余金を捻出して計上します。

そして税務上では資本の部に計上した特別償却準備金の全額を特別償却準備金積立という勘定科目で減算・留保とします。この時の額は会社がBSに計上した特別償却準備金の額をそのまま法人税法上も損金算入させます。つまり一旦会計上で費用化した特別償却準備金の額をそのまま法人税上でも損金化しているということになります。

2-1.法人税上で損金算入できるのは取得価額の30%だけ

法人税上では対象資産について特別償却できる額は取得価額の30%と決まっていました。この額が特別償却限度額ということになり、会計上で資本の部に計上した特別償却準備金の額(一旦この額は法人税法上の損金にも算入しています。)との差額を特別償却準備金積立超過額という新しい科目を別表4に計上し、加算・留保とします。

一旦計上した会計上の損金(別表4で計上している特別償却準備金積立勘定の額)と差額の加算・留保した額(別表4で計上している特別償却準備金積立超過額勘定の額)の差額が、本来法人税で損金計上が認められている特別償却額(取得価額の30%)となっています。

3.特別償却準備金積立年度の次年度から益金化して法人税をとりもどすこと

資産取得年度に収益が大きくてこれを節税するために、特別償却準備金を積み立てたとします。この場合、本来の減価償却費よりも損金化された特別償却準備金の額だけ減価償却費が本来よりも多く計上されていると考えます。特別償却対象資産であれば、益金化して相殺する必要はありませんが、そうでない資産の場合は、本来の減価償却費以上の金額を損金化することはできません。

ですから、翌年度から普通償却をするとともに、特別償却準備金で損金化した金額を、翌年度から均等に益金化して最終的に+-0円にしていかないといけません。このとき益金化することを、特別償却準備金の取り崩しといいます。

資産の耐用年数が10年以上のものは7年間に益金する額を分割して益金化していきます。耐用年数が9年から5年の場合は5年で益金の均等計上をしていきます。耐用年数が4年→4年で均等計上、3年→3年で均等計上・・・となっていきます。このときの各耐用年数での1年あたりの益金計上額のころを、1年あたり計上必要な法人税法上の益金計上額といい、必要な取り崩し額といいます。

4.会社が計上した取り崩し額(収益)が法人税法上で必要な益金算入額に満たない場合

法人税法上の必要な取り崩し額に、会社が取り崩した収益額という取り崩し額が満たない場合は、会社は法人税法上の必要な取り崩し額まで取り崩して収益計上する必要があります。このときの勘定科目は特別償却準備金取り崩し不足額といい、別表4では加算・留保になります。

4-2.会社計上の取り崩し額が、法人税上の必要な取り崩し額を超えている場合

会社の方が取り崩して収益化した額が多かった場合です。この場合は、前年の別表4で最初に積み立てて損金化した特別償却準備金について、会社が多く費用化してしまった分についての過大額、つまり別表4で特別償却準備金積立超過額(加算・留保)がなかったかどうかを把握します。

この額があるなら、今会社が多く計上している取り崩し額(収益化している額)と比較して、いづれか少ない方の額分だけ、今会社が多く計上している特別償却準備金の取り崩し額(収益)と、資産取得年度に会社が過大計上した費用化の額とを相殺することができます。

ただし、相殺をする場所は別表4の上でです。ですから別表4の科目は特別償却準備金超過額認容(減算・留保)とします。この意味は、前期に計上した過大分(加算・留保)を相殺するという意味で減算・留保とし、科目からはあたかも新規で前期に修正のために加算・留保の科目である特別償却準備金超過額によって相殺された過大に多く会社が計上してしまった費用の額が再度出現したというような科目名になっています。

つまり、前年度に費用化しすぎた額の修正のための別表4の科目を相殺した結果、元の費用化が再度出現したということになります。これを認容といっています。もともとあったものが相殺で消滅したが、相殺した科目を相殺したのでもともとあったものが再現されたという意味があります。

参考:中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除【国税局HP】

まとめ

いかがでしょうか?資産を取得して、その年度の損金を増加させて節税するには特別償却準備金はおすすめなアイテムなようです。

このように税は知っているか知らないか、どちらを選択するか等で大きく納付金額が変わってきます。できるだけ税金を減らしたいのであれば、やはり税のプロの税理士に相談するのがおすすめです。

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