小規模宅地の特例は、相続税の計算をする時、土地の項目で適用される法令です。
相続が開始されると速やかに相続財産を計算しなくてはなりません。被相続人が所有していた経済的価値のあるすべての遺産をリストアップします。ここから正味の相続財産を算出します。
正味の相続財産(遺産額)の計算
1、 現預金、株式(上場、非上場)、債権、貸付金、特許権、著作権、自動車、宝石、書画骨董品、ゴルフ会員権、など。
2、 土地:居住用宅地(330㎡以内)など一定の要件に該当する土地の場合は小規模宅地の特例が受けられます。特例で減額された後の金額をここに計上します。
3、 建物
4、 生命保険金:被保険者が受取人となっている場合に限る。生命保険の相続は特例があります。控除額=500万円×法定相続人の数
受け取った生命保険金が全部相続財産になるわけではありません。法定相続人の数に500万円を乗じた数値が受取保険金総額から減額され、残った額が相続財産として計算されます。
5、 被相続人から3年以内に贈与された財産
6、 相続時精算課税の適用を受ける贈与財産
1から6の合計額が相続財産の総額です。
ここから被相続人の負の財産(借入金、未払金など)及び葬儀費用を総額から差し引いて正味の相続財産を算出します。
これら一連の相続財産計算の項目の中に上記のように土地(2項)の項目があり、小規模宅地の特例は、この項目に関わってきます。
この土地の評価額を算出する時に、この特例が重要な役割をするわけです。
小規模宅地の特例とは
国税庁平成28年4月1被現在の法令として
相続した事業の用や居住の用の宅地等の特例
特例の概要
個人が、相続又は遺贈により取得した財産のうち、その相続の開始の直前において被相続人等の事業の用に供されていた宅地等又は被相続人等の居住の用に供されていた宅地等のうち、一定の選択をしたもので限度面積までの部分(小規模宅地等)については、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、一定の割合で減額します。
(No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例))
この特例を小規模宅地等についての相続税の課税価額の計算の特例といいます。
なお、相続開始前3年以内に贈与により取得した宅地等や相続時精算課税の係わる贈与により取得した宅地等についてはこの制度の適用を受けることはできません。(以上、国税庁HPより抜粋)
要約すれば、被相続人名義の宅地の評価額を一定の条件さえクリアーすれば50~80%減額されるという制度です。
被相続人が亡くなった後も、遺族(親族)が、そのままそこに居住すると多額な税金を納めなくてはならなくたって、たちまち残された家族の生活が困窮することになります。こうしたことを防ぐ目的で制度化されたものです。
特に地価の高い都市部に居住する遺族にとっては救世主のような制度です。
もう少し詳しく見ていきましょう
この制度の特徴は、小規模宅地等の特例によって相続財産額が大幅に減額されることです。場合によっては基礎控除額の範囲にまで計算値が下がり、相続税を収める必要がなくなる可能性もあります。
条件を見ていきましょう。
- 宅地の面積が200~400㎡の範囲であること。
- 宅地の用途が居住用又は事業用として使用していたか。
- 相続人と被相続人との親族関係が配偶者又は親族であること。
- 相続人が宅地に同居していたか。同居していない場合はさらに条件が加わります。
- 申告期限までに遺産分割が完了していること。
などです。
次に小規模宅地等の特例を適用できる宅地の種類が4種類あります。
その4種類と宅地の限度面積及び減額割合を見ていきます。
限度面積㎡ | 減額割合% | |
特定居住用宅地等 | 330 | 80 |
特定事業用宅地等 | 400 | 80 |
特定同族会社事業用宅地等 | 400 | 80 |
貸付事業用宅地等 | 200 | 50 |
ほとんどの人が該当するのは特定居住用宅地です。限度面積330㎡(100坪)以内であれば、その宅地の評価額は80%減額され、残りの20%が正味の相続財産の土地の項目で算入されます。
適用を受けるほとんどの事例が特定居住用宅地等ですので、事業用宅地については今回は割愛します。
特定居住用宅地等とは、相続開始の直前において、被相続人が居住していた宅地のことです。
2種類あります。
① 被相続人が居住していた宅地
② 被相続人と生計を共にしていた被相続人の親族が居住していた宅地
① の場合で、配偶者が取得する場合は特に問題はありません。
同居していた親族が取得する場合(もっとも多い事例)は、相続開始時から10ヶ月後の申告期限まで、その宅地の家屋に居住し、その宅地等を申告期限まで所有していること。となっています。(単身赴任で一時的に別な場所に居ても適用されます)
同居していない親族が取得する場合は条件が厳しくなります。
次の全ての条件を満たしていなくてはなりません。
- 被相続人に配偶者がいないこと
- 被相続人と同居していた相続人がいないこと
- 相続開始前3年以内に、国内にある自分の家屋又は配偶者の所有する家屋に居住したことがないこと
- その宅地等を申告期限まで所有していること
② の場合の被相続人と生計を共にしていた親族が居住していた宅地(一緒に住まなくても被相続人に生活費や療養費の仕送りをしていれば適用されます)
・ 配偶者が取得する場合は特に問題ありません。
・ 生計を共にしていた親族が取得する場合は、相続開始時から10ヶ月後の申告期限まで、その宅地の家屋に居住し、その宅地等を申告期限まで所有していること。となっています。
参考サイト:二世帯住宅や老人ホームの場合でも小規模宅地等の特例は適用できます
まとめ
事業用宅地については詳細を割愛しましたが、特定事業用宅地等の要件については、ほぼ特定居住用宅地等の要件と同じです。申告期限までその宅地を所有している部分が、所有ではなく、所有&事業の継続という言葉になり、商店ならば、その商店の事業を継承していることが条件となります。
いずれにしましても、小規模宅地の特例を受けると、相続の宅地の評価額が実際の評価額が8割(一部5割)も減額されるという大きな特典があります。
従って、被相続人と共に生計を立てていたごく普通の一般家庭ではほとんど問題なく、この特例の適用を受けることができます。
相続人が被相続人と長い事別居していたり、他に自宅があったり、あるいは業務用であったりする場合は、適用条件が非常に厳しくなります。
評価額が高額になる宅地に住んでいる親族の人は、早めに相続専門の税理士に相談をかけてください。間違いないの相続を行いましょう。
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