社会保険料控除というのは所得を減らす要素となる部分です。介護保険料も社会保険料控除の対象となる保険料です。今回は社会保険料控除についての諸々について、みていきましょう。

1.特別徴収とはどんなものなのか?

普通徴収は保険料を納税者に直接に、納税通知書などで請求するというものでした。特別徴収というのは、保険料を納税者本人から徴収するのではなく、納税者が受け取ることになるであろう厚生年金や給与から、本人が納めないといけない保険料の額を引いた残りの額を、その人の厚生年金や給与額とするというものです。

つまり、10,000円の返済義務があるとします。ですが一週間後におこづかい30,000をもらう予定だったとします。返済しないといけない10,000を差し引いた残りの20,000円がおこづかいとなるというのと同じ考え方となります。支払うお金はないけれど、受け取るお金が減りますよということです。

2.特別控除が対象とされている税金や保険料はどんなものがあるのか?

特別控除が対象とされている税金や保険料はどんなものがあるのか、みていきましょう。

2‐1特別徴収の対象

①配当所得
②利子所得
③退職所得

これらについては、本来確定申告の際に所得税の計算をして支払うべきところを、その所得にかかわる所得税をその所得の額から控除し、その結果減った所得を受け取るという源泉徴収ということが行われています。

先ほどの特別徴収では保険料は介護保険料、減らす収入は厚生年金でしたが、今回の場合は、所得税、収入ともに同じ取引(利子という収入を得るための取引、配当という収入を得るための取引)であるということが所得税の場合の特別徴収です。

2‐2保険料ではどのような保険料が特別徴収されているのか

①介護保険料:介護保険料は厚生年金から特別控除ができます。この場合、妻の介護保険料を夫の厚生年金から控除した場合はどうなるのでしょうか?支払ったのは夫なので、当然夫の社会保険料控除の額となるはずだと思いませんか?ですがこの場合は、妻の社会保険料控除の対象となることになり、夫の社会保険料控除とすることはできません。

これは妻の介護保険料というものを夫の厚生年金保険料の減少よりも重要視したことになります。妻は介護保険料を支払った。誰に支払ってもらったかは問わないということです。ですから妻の社会保険料控除の額となるのです。

②国民健康保険料
この保険料も公的年金である国民年金や厚生年金から特別徴収されることができます。この場合も受け取る厚生年金の額が減った夫ではなく、国民健康保険料を夫のおかげで納付することができた妻の社会保険料控除額となります。

③後期高齢者医療保険料
後期高齢者医療保険料は75歳以上の後期高齢者と、前期高齢者である65歳から74歳までの方が老後の医療を受けるための保険料です。この額も年金額が18万以上の方は特別徴収となります。年金から後期高齢者医療保険料を控除した残額を年金として受け取ることになります。後期高齢者医療保険料は口座振替でも支払えます。

このとき妻の後期高齢者医療保険料を夫の口座から払っている場合は、夫の社会保険料控除の対象額となります。これは高齢者である夫が妻の分を負担したということから、夫が税金を支払う力が乏しくなっていることからの配慮ということになります。

3.10月に向こう1年分の社会保険料を前納した場合の考え方

向こう1年分の前納するということは一度に納付するということになります。ですが、全額が今年に支払った社会保険料とはなりません。今年に支払った分だけを抽出する必要があります。その際に、その保険料の総支払回数に当期に支払った保険料の回数が占める割合を使って、一括納付した保険料総額を按分するということになります。

金額ではなく、支払回数で按分するということに注意です。10月に一括で前納したということは、10月、11月、12月の3か月分を、支払回数の総回数は12月の12なので、4分の1という割合で一括の前納額総額を按分した額が、当期の社会保険料控除額となる額ということになります。

いかがでしょうか?厚生年金をもらっている人は、妻の社会保険料を特別徴収にし、ご本人の厚生年金から控除することで、厚生年金収入を減らすことで、税金が減るという節税につながります。また、前払の社会保険料も当年度支払った分も社会保険料控除に計上し、節税ができるということになります。

<国税庁>https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1130_qa.htm