事業承継は経営者にとって最後の大仕事です。今まで築いてきた技術やノウハウを無駄にしないためにも、従業員の雇用を維持するためにも、後継者にスムーズに事業を引き継ぎたいものです。

しかし、実際は後継者の選定に始まり、自社株の移転、アフターフォローなど一つ一つ解決していかなければならないことがあり、計画的に実施していかないと、事業承継を断念するケースも多いのが現状

です。

事業承継の株式移転対策

事業承継において、後継者への株式の移転をどうするかが重要な問題になってきます。株式を過半数所有していないと、株主が経営に口出しをして、経営に支障が出てしまう場合があります。

経営権の移転として、後継者に株式を移転することが重要です。

その際、移転方法をどのようにするかを考えなくてはなりません。承継するまでにある程度期間がある場合は、贈与税の非課税枠の範囲内で少しずつ株式を贈与し、後継者の役員報酬については、過大役員報酬にならない範囲で、適切な報酬を支給し、承継するための資金対策をとります。

そして、承継するときに、前経営者の退職金を支給することで株価を低くできるため、残りの株式を一括で移転する方法をとる場合が多いです。移転方法としては、後継者の資金や納税負担を考慮し、譲渡・贈与・相続のいずれかを選択します。

承継までに時間がない場合は、株価が高いと、退職金の支給などの株価対策をとっても限界があるため、株式を過半数取得するための後継者の資金負担・納税負担が大きくなってしまいます。

事業承継税制とは

通常の譲渡・贈与・相続をすると、後継者の資金負担・納税負担が多い場合、一定の要件を満たせば、事業承継税制を使うことができます。

事業承継税制とは、中小企業の事業承継を円滑にするために作られた制度で、中小企業の後継者が、現経営者から株式を承継する際の贈与税・相続税を猶予・免除する制度です。

承継前から保有していた分も含めて、発行済み株式数の2/3までが対象となります。例えば、前経営者が100%の90株を所有していたものを、後継者に60株贈与し、事業承継制度を利用すると、贈与税は100%免除されます。

そして、前経営者が死亡した時に、贈与税は免除されます。しかし、贈与税の納税猶予の対象株式は相続したものとみなされ、贈与時の価格によって、相続税額が計算されます。

この時に一定の要件を満たせば、その税額の80%の相続税の納税猶予を受けることができ、税額を100万円とすると、20万円の納税で済みます。後継者が死亡した時に、猶予されていた80万円の相続税は免除されます。

事業承継税制のメリット・デメリット

事業承継税制を利用するメリットは、納税が一部免除され、資金面での負担が少なくて済むことと承継の時期を自由に選ぶことができることです。

デメリットとしては、制度を適用してから5年間の経営承継期間に、平均して雇用の8割を維持するなどのしばりがあること、要件を満たさなくなった場合に猶予されていた税金を納付する義務が発生すること、適用を受けるための手続きや報告義務に手間がかかることです。

確かに、一定の要件があり、猶予されていた税金を納付しなければならなくなるリスクはありますが、後継者に資金的な余裕がない時には有効な手段です。

実際、2015年の利用件数は350件を超える見通しです。事業承継の株式の移転対策として、十分検討する価値はありそうです。

「事業承継の株式移転対策に事業承継税制を」の参考URL

◆国税庁ホームページ
非上場株式等についての相続税及び贈与税の納税猶予及び免除の特例のあらまし(平成27年1月1日施行)

◆ニュースイッチ 日刊工業新聞
中小企業の「事業承継税制」利用急増のなぜ

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