昨今の景気回復を受けても依然として金利は安くなったままです。とは言うものの、中小企業が金融機関から融資を引き出すのは簡単ではありません。金融機関はどこでもお金を借りてくれるところを懸命に探しています。

それを見つけ出すことが銀行など金融機関にとっては最も大事な営業活動だからです。だからといって安易な融資はあり得ません。資金が必要とする会社から融資依頼がきても基本的な貸し付けセオリーは絶対崩すことはありません。

少なくとも内容の薄い事業計画書を提出して融資を得ることはないです。

中小企業が金融機関から融資を依頼する目的は主に4つです。

  1. 新規の設備投資資金、あるいは新店舗の開店資金、新たなサービスのための広告費用、新技術の開発資金、設備、建物などの改築増築増設資金など。
  2. 資金繰り上のつなぎ資金の導入。商売を行っていれば一時的に資金が不足する場合はよくあります。不動産業や建設・土木会社では入金までの日数、期間が長くなる傾向にあります。あるいは客先の支払いサイトの関係で現金が足りなく支払いができない場合があります。
  3. 商売をしていると資材や原材料が一時的に高騰して入手が困難になることが予め分かっている場合や、ある程度まとめて数か月分あるいは数年分をまとめて購入した方が安くなる場合があります。こんな時の融資です。
  4. 会社が赤字操業になっており、運転資金が不足している場合です。それが調達できないと会社の存続が難しくなる、という融資です。通常ならいくら長い取引のある金融機関でも難色を示すことでしょう。

新規設備投資あるいは新規サービスの展開に必要とする融資の場合

金融機関に融資を依頼する時は基本的に事業計画書(設備投資計画書、新サービスアクションプランなど)、決算書3期分、試算表、資金繰り表などが必要です。

事業計画書には必要とする資金の総額、必要とする時期、対象となる機械、設備、サービスなどの詳細、各項目の見積書、そしてこの投資によって得られる新規の利益、利益の額と利益が得られる時期、会社全体の事業計画、返済計画などが盛り込まれていなければなりません。

最も重要な資料は返済計画です、金融機関の担当者が納得できるような内容、整合性が必要です。無理があると思われるような返済計画では意味がありません。通常こうした融資は長期借入金です。長期に亘ってバランスシート上では負債となりますから長期に亘る利益計画と返済計画に整合性が要求されます。

つなぎ融資のケース

この資金導入が最も多い事例でしょう。季節要因や事業内容などにより売り上げ計上が偏っている場合です。

毎月一定額の売上、入金があるわけではなく、一方人件費や固定費、原材料、仕入れなどは毎月決まった日に支払はなくてはなりません。従ってこのための資金は会社運営上どうしても必要となります。

こうした資金を金融機関から調達するためには、資金繰り表が最も重要な資料となります。いつ、どの期間にいくら資金が不足するか、またいつ、どの期間にいくら売掛金の入金があるのか、支払いの内容、人件費、固定費原材料、仕入れの科目の内容が分かる資金繰り表でないといけません。当然きちんとした整合性が要求されます。

勿論前記の基本資料も要求されます。また場合によっては新たな担保や保証人が必要となる場合もあります。

資材などの一括仕入れにより安く大量に仕入れる場合の融資

製造業であってもサービス業であってもよくあるケースです。もちろんこうした時も条件によって金融機関は融資に応じてくれます。

事業計画書は必要とする資金の総額、時期、仕入れようとする資材名、スペック、数量、時期、仕入れ先、見積書などが明確になっていなくてはなりません。

そしてこの一括仕入れによるメリットがきちんと試算されていて、一括購入の優位性が明確になっていなければなりません。仕入れの量が数か月分なのか数年分なのかによって融資も短期又は長期となります。制度融資や公的機関からの融資も選択肢としてあるでしょう。

赤字操業の場合の運転資金融資

融資を依頼する時に試算表や資金繰り表、決算書を提出しますから、例え粉飾決算していてもすぐに分かります。

融資を依頼する以上、○○年○○月には黒字に戻ることが明確に分かる資料が必要です。

これは難しい条件です。不良資産や有休資産の処分、固定費、人件費の減額といった具体的な計画、及び赤字から黒字になる商品の開発と時期、原価の見直し、販売計画の見直し、利益計画の実現性のあるアクションプランなど多岐に亘る、実効性のある計画書の提出が必要です。

そしてもっとも重要なことは経営者の姿勢です。多少のリスクはありそうだがこの社長の会社再建の情熱をかって、融資を実行して見よう、ということになってもらわないといけません。地方の金融機関ではこの点を融資実行の第一条件にしているところもあります。

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