M&Aは事業継承の1つの方法ですが、近年、中小企業経営者の後継者不在が顕在化して多くの経営者がM&Aを選択する場合が増加しています。

M&A(Merger & Acquisition)とは合併と買収を意味します。中小企業経営者が後継者不在や高齢化、病気などの理由で会社を譲渡する場合の方法です。

中小企業では一般的にオーナーが所有する株式を売却する株式譲渡や事業の1部を売却する事業譲渡、会社分割などが多いです。

中小企業経営者の後継者問題

中小企業の経営者が誰でも経験することになる後継者問題。いつかは決断しなければならない重要な問題です。既にご子息や妻、子供の配偶者、あるいは親族などで後継者がいる企業においてはさほど問題ではありませんが、後継者が不在の場合は企業内役員からの登用、社外から適任者を連れてくる、あるいは上場、M&A、解散、倒産などから選択しなければなりません。

倒産は論外としても日本では年間廃業する企業が30万社もあることから、解散よりも数々のメリットのあるM&Aを選択するよう国の根本的な対策が待たれます。

実際には年間2,000件くらいのM&Aが企業間で行われています。廃業を選ぶ企業と比べたら微々たる数字です。

M&Aの形態とニーズ

M&Aには様々な形態があります。大きく分けて合併(吸収合併、新設合併)と買取りです。買取りには株式取得と事業譲渡があり、中小企業においての事例はほとんどが株式取得の株式譲渡です。

他にも提携という、共同事業、JV、販売提携など様々な提携方法があります。通常経営者がM&Aを選択する理由は概ね次のようになります。

  • 譲渡企業
  • 後継者がいない
  • 事業を整理したい
  • 信用力のあり販売力のある企業の傘下に入りたい
  • 会社を譲渡したい
  • 譲り受け企業
  • 事業や規模を大きくしたい
  • 新規部門を立ち上げたい
  • 自社にない技術、ノウハウ、などを獲得したい
  • 優秀な人材がほしい
  • 内製化率を上げたい

などがあり、両社の思惑が合致したときにM&Aが成立します。

M&Aの実務

M&Aの実務はかなりの時間が必要です。できるだけ決断と実行は早い方が有利です。

  1. 譲渡企業、被譲渡企業ともにスタートは地域の商工会議所や金融機関、民間のM&Aコンサルタント会社への申し込み、依頼から始まります。
  2. 商工会議所、金融機関、M&Aコンサルタント会社から全国の企業情報が提示される。そして選択する。
  3. 秘密保持契約の締結を行った上で、双方の会社名、企業の概要、及び決算書を交換して検討に入る。
  4. 商工会議所、金融機関、M&Aコンサルタント会社と契約。
  5. 双方の会社訪問、トップ会談を行う。
  6. 譲渡会社の評価を行う。株式譲渡の場合、通常は、被譲渡会社の株価=時価純資産+営業権です。(貸借対照表の純資産総額と。損益計算書の営業利益を営業権として合算したものが評価額となります。純資産は内容を精査してすべて時価に換算します。営業権は倍率があり、現在、将来の収益力、負債資本倍率によって変化します。なお譲渡企業、被譲渡企業がM&Aコンサルタントと契約した場合は手数料が必要です。通常評価総額(譲渡価格)の約5%かかります。(契約の仕方によって異なります)
  7. 合意書の締結し、交渉開始、諸条件のすり合わせを行う。
  8. 最終契約書の締結、実施。現金と株式の交換。同時に従業員の引き渡し、取引先の紹介などを行います。

M&Aの実務に必要な書類(参考)

会社案内、謄本、定款、株主名簿、決算書、税務申告書、固定資産台帳、不動産登記簿謄本、カタログ、製品別客先別売上実績、工場、店舗など概略図、労働組合と協定書類、組織図、従業員名簿、給与台帳、就業規則、各種契約書、各種届書、他

M&Aのより具体的な手順については以下の記事をご参照ください。
中小企業がM&Aのより具体的な手順【どこに頼めばいい?どうすればいい?】