当社は大型ダンプで、土・砂利・火山礫等の販売やその他運送、冬季は市と契約し、除排雪業務を行っている会社です。

年商は1億5,000万円~2億円程で、役員2名と事務員1名で運営し、利益が出る事業年度があっても大きくはなく、利益が出たとしても繰越欠損金の範囲内ですので、税金の心配は特に必要ない、という中小企業です。

そんな当社に税務調査が入った時の体験のお話と、この先同じ経験をされるであろう法人と事業主の方への助言をまとめました。

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税務調査の通知が来た

当社は継続的に顧問契約をしている税理士がいますので、まず税務署から会計事務所へ「税務調査をしたい」との連絡が入りました。

当社は3月決算で5月申告です。

その後会計事務所から当社へと連絡が入り、会計事務所の税理士が間に立って日程の調整がされました。

税務調査は8月の末に通知が来て、9月の14日と15日が調査日になりました。

税務調査は基本的には抜き打ちでやらないそうです。

無通知で来るケースは、残念ながら「税務署が既に脱税の尻尾をつかんでいる」場合や、悪質な脱税を行った法人のその関係先・取引先・相手としてピックアップされた場合に限られると税理士の先生が教えてくれました。

ある日突然抜き打ちで来られた時には、それはつまり、税務署が「絶対に勝てる」と分かりきっている相手に対して行動起こしている、という意味になるようです。

税務調査の当日までどんな準備をしたか?

日程が決まった後は、税理士との打ち合わせを行います。

ひとつお伝えしたいのが

「もし会社にやましい事や、隠し事があるのなら、すぐに税理士に話して下さい」という事です。

担当の税理士にさえ秘密にしている事がある、という会社は意外と多いのではないでしょうか?

当社は正直に打ち明けた点がありました。空の領収書を切ったというものでしたが、事前打ち合わせで税理士に告白して正解でした。

結論を言うと、税理士は会社を守るために税務署と戦ってくれる存在だからです。

税理士が助言をくれ、当日税務調査官へどういった答弁をするのが適切か、というアドバイスを基に打ち合わせを行いました。

税務調査当日と、その内容について

当日は税理士立会いの下、午前中の時間を使い、昼まで3時間、税務調査官と話をしました。

内容は

  • どういった事業を行っているのか
  • どのような従業員構成か
  • 会社が所有している資産の状況
  • 現金は誰が管理しているのか
  • 帳面はどのように管理しているか
  • どこまで会社で書類をまとめ、どの段階で会計事務所へ渡しているのか
  • 会社のこれまでの概要や歴代の役員や代表の話まで。

特に緊張感を感じない程度の内容で、来客者と世間話をしているような様子で進みました。

調査官も時おり笑顔を見せ、雰囲気としては明るいものだったと思います。

後に税理士から聞いた所によると、そんな何気ないリラックスした会話から、税務調査官はあらゆる情報を漏らさず聞き、その後の調査への下地を完璧に築き上げるものだという事です。

午後から本格的な調査が始まり、最初に確認を始められたのが「売上」です。

会社がつけている帳面と請求書。そして入金の記録。

会計事務所が作成している決算書・決算申告書と矛盾がないか、売上の計上漏れが無いかを時間をかけて徹底的に調べていました。

その後は経費に関しての突合せ(架空経費を特に疑っていたようです)、役員借入金に関して妙な動きが無いか、キャッシュ(現金と預金)に関して変な動きは無かったのか、といった事、人件費についての確認、年末調整の源泉徴収簿を基に、それに誤りが無いのか、等を調べていました。

税務調査官は特に威圧感を出したりせず、何か気になる点があれば、それを質問して、その答えを疑っているような様子は見せませんでした。

調査の間特にする事が無かった税理士は、常に世間話をし、税務調査官を巻き込んでの会話を続けていました。

相手の集中力を欠くため、との事です。若い新人の調査官などはこの手の税理士の妨害に参ってしまう事がよくあるそうです。

調査の2日目は世間話の時間を設けず、午前中から調査が始められました。

規模の大きな中小企業だと3日以上の調査期間が設けられるそうですが、当社は売上規模や人員等が大きな会社ではないので、2日間の調査でした。

2日目になると、調査官も当社について熟知した人となっていますので、質問事項は減り、「明確な調査目標とされた何か」を黙々と調べ、記録していました。

税務調査の結果について

合計2日間の調査でしたが、当社が問題を指摘されたのは最終日の終わる直前でした。

既に気付いて頭でまとめていたが、最後にそれを一度に指摘したようでした。

指摘を受けた点は、心配していた架空の領収書ではなく、経費の二重計上(悪意の無い物で、調査官もそれを認めていました)と、源泉所得税の徴収漏れでした。

経費の二重計上は事務員の誤りから発生し、会計事務所も金額が大きくないので、その不明な経費を役員勘定で処理してしまっていた為に起こった次第です。

もう1点、源泉所得税の徴収漏れは、当社がアルバイトで手伝いを受けている近所の方たち複数名に関してでした。

役員と従業員に関してはきちんと源泉所得税を徴収・納付していましたが、1回数万円のお手伝いアルバイトの方の分を徴収していませんでした。

結果は、経費の二重計上に関しては決算を訂正する、訂正申告をする事に。

源泉徴収税に関しては、口頭での注意で済みました。今後気をつけるという約束をしました。もし次回の調査で改善されていなければ、次は注意では済まないだろうと税理士に言われました。

税務調査が心配な方、これから受ける方へ

最後に、誰しもそうですが、税務調査が心配だという方や、これから税務調査を受ける方へ、当社が経た経験から末筆ながら助言を。

まず、税務調査は会社を潰す目的では行ってはいない、という事。

彼らのスタンスは「正しく申告して欲しい」という物であり、「会社にダメージを与えたい」ではありません。

管轄内の会社が潰れてしまえば、税務署の仕事先が減ってしまうのですから。

会社に都合の悪い何かが発覚した時でも、そこには交渉も人情も差し挟まれる余地があります。基本的にウソをつかない、相手を敵視しない、そんな対応を薦めます。

もう1つは冒頭で述べた事

「調査が決まってしまったのなら、秘密を全て税理士に話してしまおう」

という事です。

税理士は無条件に会社の味方であって、こちらの側に立って戦ってくれる存在です。どこを守って欲しいのか(どんなやましい事があるのか)を先に税理士に伝えてしまいましょう。一緒に悩んでくれる筈です。

当社は素直に告白し、税理士の協力の下、空の領収書の発覚を防げました。

最後になりますが、最良の道があるとするなら、そもそも不正と分かっているならそれはしない。という事です。

本当に悪気の無いうっかりや不注意なら、その旨を話す時に「ウソ」をつかなくて済みますから。

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