個人、法人を問わず、飲食業は税務署に狙われやすい業種のようです。

何故か?それは他の理髪店や美容院、小売店のように現金商売だからです。

現金商売ですと、店主が意識的に売り上げを抜いて売上台帳に記載しない場合が多い、という事実があり、税務署は要注意業種の筆頭に挙げているからです。

まじめにちゃんと申告して税金を納めているお店にとっては迷惑千万な話ですが、こうした脱法行為が相変わらず減っていないため、ますます強化されています。

飲食業の税務調査は予告なしの場合が多い

通常、法人の税務調査は、調査に伺いますからよろしくお願いいたします。と予告が入ります。大体1週間前で、会社側で都合が悪ければ、話し合いでいくらでも変更できます。

飲食店に調査が入るということは、そのお店が調査の対象となる何らかの理由があるということです。やみくもに入るということはまずありません。

しかし飲食店の場合は、予告なしで突然税務調査官がやってきます。

法律でお店側は拒否出来ないことになっています。店主はびっくりするでしょうね。特に初めて経験する店主は気が動転して右往左往することになるかもしれません。

何故予告なしに突然来るかと言いますと、飲食店は現金商売が主です。現金で飲食代が精算されます。

その受け取った現金を売上として記帳しないで、誰かが抜いてしまっても分からないからです。

飲食店は、こうした事例が多く見られるために、事前予告なしに調査に入る場合が多いです。事前に予告しますと、不正の修復がされ、調査員でもその不正が分からなくなります。

予告なしにお店に訪問して、現金を隠しているかどうか、仕入れた商品を自家用に使っていないかどうかが、調査目的で、全ての現金売上が帳簿に計上されているかどうか、レジシート、売上伝票、日報、現金出納帳、元帳などで照合します。突然行きますから、レジの現金と現金出納帳の残高の照合をすれば、すぐに分かります。

調査が入ってもびくびくすることはない

事業を行うということは、税務署は切っても切れない関係だということは分かっていましたか。

税務署は警察ではありませんから、突然来店されて何か重大な脱税行為の確証を掴まれて逮捕されて取り調べられる。そんなことはありません。

事業をやっておれば遅かれ早かれ税務調査は必ず来ます。何もびくびくする必要はありません。基本的な税務調査対策は、恐れず騒がず、堂々としておればよろしい。

税務調査は、税務署では指導と呼んでいます。税務申告が正しく行われるよう間違っている事業所には間違っている部分を指摘して修正申告を促すことです。

修正項目が指摘されて、店主がもし納得すれば、税務調査官の指導により、その通りにすればよいだけの話です。納得がいかなければ税理士から話をしてもらう手もありますし、直接調査官と折衝することも可能です。

税務調査官から何を聞かれるか?

では税務調査が入ったときに調査官からどんなことを聞かれるでしょうか。これは知っておいた方がいいです。

もし入られたときにバタバタしないで済みます。それをお話ししましょう。

ただ税務署の調査官は調査のプロということです。言葉巧みに話題を作り、店主と話しやすい雰囲気を作って、じわりと本題に入ってきます。聞き方も極めて巧妙です。

これをまず頭に置いておきましょう。間違っても調子に乗って余計なことを話さないようにしましょう。

税務調査が入ると大体2日間ぐらい行われます。最初は世間話のような会話がしばらく続く場合が多いですが、実はなにげない話や質問にも調査官の周到な作戦が隠されています。

例えば、ほとんどの調査官は店主に対して、店主の経歴を聞いてきます。このお店の前は何をしていましたか?これは店主の過去の事業収入の元を調べているわけです。本人が正規に得た収入なのか、違法な方法で贈与がされたかもしれない。こんな疑いを持ちながら質問をしています。世間話であっても必ず調査官の意図が隠れていることを肝に銘じていてください。

何を聞かれるか、ですが、最初は最近のこの地域の飲食店に人が入っているかどうかなど一般的な景気から訊ねてくるでしょう。そして、今従業員は何人か、パートはいますか、どんなメニューがよく売れて、売れていないメニューはありますか、仕入れは順調ですか、何か仕入れし難い食材はありますか、など聞かれ、そして本題に入っていきます。

売上の締め日、入金日、売上計上はどの段階ですか、現金以外の掛け売り上げはありますか、従業員の給料の締め日、支払日、支払方法は、従業員との懇親会はありますか。

次にいよいよ帳簿類の調査に入ります。

売上計上の時期ズレ、交際費、仕入れ在庫、人件費などにモレがあったり、不明瞭な部分があると、それを指摘され質問されます。

この時に注意することは、調子に乗ってべらべら話さない。分からないことは分からない。生半可な答えしかできないと思ったら調査して解答します。とはっきりいう姿勢が大事です。あいまいな返事が一番いけません。かえって逆効果でより調査が厳しくなる傾向があります。

飲食店ができる税務調査対策とは

税務調査が初めての人は、毅然とした態度で応対しろと言われても。気が動転して矢継ぎ早に質問される項目に対してしどろもどろの答えしかできないかもしれません。

ですから前記しましたように、商売をやっている以上、必ず税務調査はありますから、最低限の準備は必ず普段から行っておこましょう。

総勘定元帳や売上台帳、仕入れ台帳、労働者名簿、給与台帳、試算表などは、常に正しく記帳してすぐに出せるように準備しておきましょう。これが基本です。

間違いが起きやすい項目は、売り上げ時期のズレ(本来の売り上げ時期を翌月にしてしまった)、売り上げの計上モレ(売り上げであるにも関わらず計上しなかった)、仕入れの計上モレや逆に過大評価、交際費の流用などが、よく指摘を受けます。

そして、これらの科目は、店主が意志的に数字をいじる場合があり、これが脱税行為と認定されると重加算税の対象となり、かなり重いペナルティが課せられることになるわけです。これは決してやってはいけないことです。

従って、常日頃から、現金残高と帳簿残高が合っているか、売上の計上モレはないか、時期ズレはないか、食材などの在庫は正しく管理され適正に帳簿に記載されているか、従業員の人為的な操作はないか、評価方法は正しく行われているか、借入金があった場合は、その内容を聞かれたときに正しく答えられるか、などがチェックポイントです。

そうしたポイントを中心に帳簿をチェックして、間違いがあれば、調査を受ける前に修正しておきましょう。申告後であれば、自発的な修正申告(税務調査前)を行うことにより追徴課税が軽減されます。

飲食店の事前調査

税務調査の場合は、事前調査という隠密調査が行われている場合があります。調査官が飲食店お客になりすまして、お店に入り一般のお客さんのように普通に料理を注文して食べて帰っていきます。

この過程の中で、お客の出入りの状況、多いのか少ないのか、メニュの価格表やレジ周りの現金の出し入れの状況などをつぶさに見ています。精算時にレシートを必ず持って帰るでしょう。

税務調査の時に、これらの調査内容がすべて反映されるようになっていますから、例えば、もらったレシートに対応する売り上げが、正しく売上台帳に記載されているかどうか、記載されていなければ当然指摘されますし、より厳しい調査となります。

まとめ

飲食店の税務調査は何を聞かれるか、お分かりになったでしょうか。

税務調査員をなめては絶対いけません。全国の524の税務署にはKSK(国税総合管理)という全国一元管理されている情報システムがあり、そのコンピュータ端末機がそれぞれに設置されています。国税事務の効率化、申告モレ対策、脱税摘発、滞納などにその力を発揮しています。

飲食店の名前を端末で入力すれば、そのお店の過去の申告情報や、そのお店の経営者の個人情報やタレコミ情報などなんでも情報として蓄積されています。

調査官はこのシステムを十二分に駆逐して調査対象を調べ、どんな問題点を持っているか、調査すべき案件は何かなどを下調べをしてお店の情報をチェックしたうえでお店にやってきます。

従って安易な受けごたえは決してしないようにすべきです。特に現金売上の正し計上と記帳に関しては必ず聞かれますから正確に答えましょう。

税務調査対策としてできることは、店主として、最も大事なことは、できることはきちんと話す。できないことはできないと言う。

調査を要する質問項目に対しては、調査して後日回答する。というようにあいまいな返事はしないことです。そして帳簿類は正しく記帳し、いつでも見られるようにしておくことです。

特に会計帳簿は、常に正しく記帳されているか、間違いはないか等をチェックするとともに、質問があってもすぐに答えられるように熟知しておくことが重要です。故意の脱税行為を指摘されて重加算税が課せられたら、その汚点は簡単には消えません。

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